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 ・労働契約法の施行と考え方について

 ・就業規則変更による労働条件引き下げと不利益変更

 ・不利益変更の合理性の判断基準(判例より)

 ・労働条件の不利益変更の際の従業員への同意の取り方

 ・“評価に基づく降格制度の導入”と不利益変更

 ・成果主義制度導入と不利益変更

 ・定期昇給の廃止と不利益変更

 ・歩合給の導入と不利益変更

 ・定年後再雇用に伴う給与減額措置と不利益変更

 ・皆勤手当、精勤手当の廃止・減額と不利益変更

 ・賞与の減額規定と不利益変更

 ・地域手当、単身赴任手当の減額と不利益変更

 ・退職金と不利益変更

 ・福利厚生と不利益変更

 ・競業避止規定と不利益変更

 

 詳細なご説明は、各項目の記事に譲るとして、労働契約法が施行後は、就業規則の変更、改訂に伴い、従業員の労働条件が低下する可能性があるのであれば、慎重に行う必要が出てきました。経営者の方にしてみれば頭の痛い問題でしょう。

 就業規則の変更、改訂に伴う、問題点のご相談は解決に導く抜群の引き出しの数を持つ当事務所に是非お任せ下さい。

 

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このページでは平成20年3月から施行させました労働契約法と労働条件の不利益変更の考え方、及び就業規則の変更・改訂の留意事項いう点に関して見ていきたいと思います。

昨今の経済情勢の悪化により、大企業でも、ワークシェアリングの導入等各々の従業員の労働条件を見直した上で、この難局を乗り切ろうとされているという報道をよく聞きますが、このような労働条件の変更が労働法的に考えた場合はどのようになるのか?ということをこの章ではみていきたいと思います。

まず、その障りとして、平成20年3月に施行された労働契約法の概要に関してご説明していきたいと思います。

基本的に労働契約というのは、事業主と労働者が交わす個別の契約です。
ですから、労働条件等に関しては、個別の合意により“契約自由の原則”が成り立ちます。

但し、労働時間や賃金等のメインとなる労働条件に関しては、労働基準法や最低賃金法等の強制法規を下回る契約はできないことになっています。

逆に言うと基準法や最低賃金法を下回らない限りは基本的には、契約は当事者間の自由ということになります。

しかし、いくら自由といっても、事業主側が労働基準法や最低賃金法を下回らない限り、現状の労働契約を一方的に労働者にとって不利となるように引き下げていいものでは、もちろんありません。

そこで、平成20年3月から“労働契約法”という法律を定めて、労働契約の運用に関して明文化しました。

ただし、そもそも契約自由の原則という大原則がある、契約の部分ですので、もちろん、刑事処罰の対象になるような強制法規ではありませんし、条文自体も非常に漠然としており、“じゃあ、具体的にどうすればいいの?”というような内容になっています。

漠然とした内容ながら、要点だけまとめると
・労働契約を(労働者にとって不利益に)変更する際は、事業主はその労働者の合意を取らねばならない。(労働契約法8条)

・事業主が就業規則を変更することによって、一方的にその事業所での労働条件を労働者にとって不利益に変更することはできない。(同9条)

・事業主が就業規則を変更することによって、一方的にその事業所での労働条件を労働者にとって不利益に変更するには、合理的な理由が必要となる。
 その合理性の判断基準としては
  1)労働者が受ける不利益の限度
  2)労働条件変更の必要性
  3)変更後の就業規則の内容の相当性
  4)労働組合との交渉の状況

                 ( 同10条)

という形になっており、やはり合理性の部分で、具体的にどうすればよいのか?
が不明確な内容になっております。

“とにかく、就業規則の効力は個々の労働契約よりは上であるので、就業規則を変更すれば、その事業所を包括する労働者との労働契約が全て変更できるんだ”という考え方はダメなんですよ!!ということをわざわざ条文化したということなのでしょう。

 

このページの以後の記事では、その不利益変更の合理性に関して、個別具体的に見ていき、就業規則の変更、改訂により“不利益変更だ!!”と従業員に指摘されないような基本的なスタンスやエッセンスをお伝えしていきたいと思っております。

まず、就業規則の定義、考え方についてなのですが、使用者は、雇用契約を通じ従業員を一定の組織の元に位置づけ、業務を運営しなければなりません。

ある一定人数以上の従業員が存在する事業所になると、業務を組織的かつ効率的に運営するためには、従業員の労働条件を集合的、画一的に決定することが必要になってきます。

使用者がこのような、集合的かつ画一的な労務管理を達成するために、“就業規則”により労働条件を決定するわけです。


ところで、雇用契約というものは、労使のどちらか一方が解約を申しいれない限りは継続的関係であるために、企業の経済的あるいは、運営的な要因、(例えば、景気減退やダンピング競争による利益減少、経営失敗、等)によりやむを得ずに、従業員の労働条件を低下させざるを得なくなる場合が生じることがありえるわけです。

この場合、従業員を自由に解雇できるのであれば、低下させた労働条件に応じない労働条件に応じない従業員を解雇し、低下後の労働条件を受け入れる従業員との雇用契約を継続することで、全体の人件費の削減が可能になります。

ただし、日本の法律では解雇権濫用法理という考え方が明文化され、確立しており、(労働契約法16条)むやみに解雇権を振り回すことはできないとされております。

よって、雇用関係の合理的な維持を図り、集団的、統一的に労働条件を変更するという考え方の元、就業規則の不利益変更の法的考え方を知る必要があるわけです。

この就業規則を変更することにより、労働条件を低下させた有名な判例として、“秋北バス事件(最高裁大法廷昭43、12、25)”があります。

この裁判での最高裁の考え方は『新たな就業規則の作成もしくは変更によって、労働者の既得権を奪い、不利益な労働条件を一方的に課すことは許されないが、労働条件の統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、変更された箇所、条文が合理的なものである限り、
不利益変更は有効である。』と判示されました。

変更の合理性として、その後裁判所は“大曲農協事件”(最高裁三小 昭63、2,16)において、『変更された規則の条項が合理的かどうかは、その就業規則の変更が“必要に迫られていること”と、“内容がどの程度の変更なのか”の両面から判断し、変更された条項の法的な規範性を是認できるだけの合意性を有するかどうかである。』
とし、特に賃金、退職金等の重要な労働条件に関しては“高度の必要性に基づいた合理的な内容”であることと、判示されました。

以後この考え方は“就業規則の不利益変更法理”として、その後の判決にも引用され、労働契約法の9条、10条にも明文化されています。

では、何が、具体的に高度の必要性で、何が合理的なのか?

ということが疑問になってくると思います。

新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと、“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。

当事務所では、様々なケースを想定して就業規則の変更のコンサルティングを行っております。

就業規則のご変更の際は、是非、ご相談下さい。

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就業規則変更により、労働条件を引き下げるに際して、どうのようなやり方が合理性があって、どのようなやり方が合理性がないのか?
どのように事を運べば合理性ありと判定させるのか?という部分に関しては、玉虫色で、これといった模範解答があるわけではありません。


よって、判例により、ヒントを探っていくしかないということになります。


そこで、この“就業規則での不利益変更”の合理性の有無で争った、第4銀行事件の最高裁の判断を少し見てみます。

就業規則の変更による
1)労働者が被る不利益の程度
2)使用者側の変更の必要性
3)変更後の就業規則の内容の相当性
4)代償措置や他の労働条件の改善状況
5)過半数労働組合との交渉の経緯
6)他の組合や組合員以外の従業員に対する対応
7)同業他社の国内における一般的状況

この1)から7)までの項目を“総合判断”するという内容になっております。

とはいっても、この項目のなかでもどの部分を重視すべきかということになると、5)、6)の部分ということになってくると思われます。

と言いますのは、就業規則の不利益変更の問題は、労使間の労働条件をどのあたりに落ち着ける(合意する)という利益紛争であり、権利義務の紛争ではないために、本当は労使間の協議によって解決することが望ましいという考え方があるからです。

よって、この合意に基づき就業規則を変更するときは、変更後の就業規則は労使間の利益調整があったものとして、合理性ありと推定されるでしょう。

前記の第四銀行事件での判例でもこのように判示されています。

ただし、その合意が過半数組合とだけのものなのであれば、他の労働組合員や非組合員に対しての効力が及ぶか?ということが議論になってきます。

また、“被る不利益の程度の内容”があまりに大きいということで、『労組の同意を大きな考慮要素と評価することが相当でない』と判示された判例もあります。

ただし、この事案は高齢者が極めて不利益を被る事案であったこと。また、不利益を受ける高齢者の多くが、同意をした組合とは別組合に属していたことにより、高齢者の意思が充分に反映されていなかった例外的な事案であると言えるでしょう。

もう一つ、“合理性あり”と判断される判断要素があります。

それは、“経過的措置”を設けているかどうかということです。

『一方的に不利益を受ける労働者について不利益を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ図るべきである。』

との最高裁判例(みちのく銀行事件)での判例でもあるように、経過措置あるいは緩和措置は合理性の判断を見る上で重要な要素となっており、これは最高裁以外での下級裁判例においての判例でもこの点は重視された判断材料となっているようです。

 

新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。

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そもそも労働契約というものは労使当事者間の合意によって成立します。
(労働契約法6条)

よって、契約の中身である労働条件も合意によって定められるわけです。

これは契約を変更する場合も同じ考え方で、労働条件を不利益に変更するには労使間の合意が必要になってくるわけです。(同法8条)

基本的に就業規則には“最低基準効”といって、就業規則に定められている労働条件を下回る、労働契約を労使の合意で締結したとしても、その条件は就業規則の条件まで引き上げられるという概念があり、これは労働契約法の条文の中にも盛り込まれています。(同法12条)

よって、就業規則に定められえている労働条件を労使間の合意によって、就業規則を下回る労働条件を不利益に変更したとしても、それだけでは、不利益変更の効力は生じないことになり、結局は就業規則の基準に戻ってしまうということになります。

したがって、労使間の合意によって労働条件を不利益に変更するには、当事者の合意だけではなく、事前に就業規則(もしくは労働協約)もその条件に合わせて変更しておく必要があるわけです。

また、労働者の合意の取り方の考え方についてお話します。

前記の通り、労使間の合意(契約法8条)とそれに合わせた就業規則の事前の変更により、労働条件の不利益変更は効力を生じますが、その前提として、労働者の同意は、自由意志に基づくことであるということが必要になってきます。

つまり、強制、脅迫、錯誤等で合意したように見せかけても、後々それが、判れば無効となってしまうということです。

特に、賃金の減額といった、労働条件の中でもとりわけ重要なものに関しての、同意は明確であることが求められるわけです。

(昭48・1・19 最高裁判例)

よって、不利益に変更する必要性、理由、内容について充分に説明した上で、労働者側の同意を取るということが、不利益変更の際の必須事項といえるでしょう。

 

上記からも判るとおり、従業員への合意の取り方等、手続き一つ間違うと労使間悪化の原因となります。

新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性すらあるのです。!!

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もし、就業規則に今まで無かった、“評価に基づいた降格制度”の導入を導入すると、それは不利益変更になるのでしょうか?

そもそも、いわゆる“降格”という考え方には2通りあって、職制上の地位を下げる、“降職”という制度と、職能資格制度上の資格を下げる“降格”という制度の2通りに分かれます。

わかりやすく野球に例えると、降職と言うのは、今マウンドに上がっているピッチャーが集中連打を浴びて、ノックアウトさせてマウンドから引きずり降ろされること。

降格というのは、1軍登録されて、1軍マウンドで登板機会の可能性のあるピッチャーを2軍に落とすことで、1軍の資格を降格させるということで、登板の可能性すら奪ってしまうことです。

従業員の中から、一定の資格に達している従業員の中の誰かから管理者を任命する(1軍登録されているピッチャーの誰かから、先発ピッチャーを任命する。)“昇進”や、その地位にあったものを業績不振等の理由により更迭する“降職”は企業の人事権の一部であると解釈されております。

よって、企業の裁量により、就業規則の根拠なしに、会社が従業員の能力、経験、実績、指導力等により、その役職を付したり、外したりすることは、可能なわけです。

しかし、今回問題にしたいのは、職能資格制度上の資格を下げる、いわゆる降格です。

この降格自体は会社側の裁量だけではなく、就業規則の明確な根拠と相当な理由が必要との裁判例があります。

某証券会社第1次仮処分事件(東京地裁、平成8.12.11)では

『就業規則等による職能資格制度の定めにおいて、資格等級の見直しによる、降格、降給の可能性が予定され、使用者にその権限が根拠付けられていることが必要である。』

との見解を裁判所が出しました。

よって、“降格処分”であれば、就業規則での根拠付けがないとできないという解釈が成り立ちます。

この降格制度自体を導入し、就業規則を変更することが、いわゆる不利益変更となるのでしょうか?

結論から言うと、不利益変更の問題は生じる可能性はあります。

多くの裁判例から判断するに、評価に基づく降格制度を導入することは評価の如何によって降格と言う不利益の危険性がある以上は、不利益性を認め、合理性の判断の中で不利益変更となるかどうかを結論付けています。

この合理性の判断基準とは、就業規則の変更の不利益の合理性の判断基準と同じ考え方、つまり、変更の必要性の程度、内容、どのくらいの不利益があるかという程度、代償措置、労使の協議の状況に基づき総合的に判断するという解釈となります。

ただ、会社の制度上の問題ですので、会社側としての主張は“公正な制度を導入しただけで不利益な変更ではない。”ということになり、そこが争点になってくると思われます。

何をもって“公正な制度”なのかということは、労使以外の外部の人間は非常に判断しづらいと思います。

よって、上記の合理性の判断基準のなかでも、とりわけ、労使の協議の過程や合意の有無がより重要になってくるのではないかと推測できます。

あとは、経過的措置の有無や代償措置の有無も合理性の判断においては重要な要素となってくるでしょう。

上記からも判るように、会社の新たな制度の導入に関しても、不利益変更の問題はどうしても付いてきてしまいます。

 当事務所の『人事(評価)制度導入サービス』 はそういった不利益変更のリスクを最小限に抑え、かつ、従業員の皆さんのやる気がアップするような設計手法をコンサルティングさせて頂いております。

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昨今では、従来の日本企業の一つの特徴でありますところの“年功序列制”を廃止して、実力主義、成果主義等を導入している企業さんが増えてきております。

賃金も在籍年数で自動的に昇給していく年功制賃金から、一定期間の成績を基準として、昇給や降給を決定するような制度へとシフトされているわけです。

このような制度を設けた場合、制度そのものを改定するだけでは、あくまで、“降給の可能性がある”というだけで、直ちに降給になるわけでもなく、逆に昇給される可能性もあるので、制度の導入そのものが、不利益変更と言えるかどうかが争点となってきます。

しかし、判例では賃金制度の改定により、評価の結果、降給等の不利益な結果になる可能性があるのであれば、不利益変更にあたるとされています。


賃金制度の変更が不利益変更にあたるという見解なのであれば、その不利益変更が合理性があるかどうかということを検討しなければなりません。

“高度の必要性”と“経過的措置”からの検証ということになってきます。

ただし、成果主義賃金制度の導入は、企業の賃金に対する方針であり、“降格制度の導入”等の制度の変更により労働者に具体的な不利益が確実に発生する事案とは、一線を引いて考えられます。

つまり、成績によっては昇給もありえるわけですから、“高度の必要性”の考え方のハードルが若干下がるということになってくるわけです。

裁判例でも年功制から成果主義制に変更した結果、賃金が減額された事案について、
『どの従業員も人事評価の結果次第で昇格も降格もあり得るのであって、自己研鑽による職務遂行能力等の向上により、昇格し、昇給することができるという平等な機会が与えられているということができるから…(中略)…人事考課査定に関する制度が合理的なものであるということができる
のであれば、この賃金制度の変更内容もまた、合理的である』

 という結論付けをして、人事評価制度も最低限必要なものは備わっているとして、合理的であるとしました。


また、経過的措置に関しても、“高度の合理性”と同様に一方的に引き下げる前提の不利益変更よりは、若干ハードルが下がっているようで、それほど厳格に求める必要がないようです。

上記から判るように、成果主義賃金制度導入に当たっては、個々の労働者に対する、制度の適用の結果の不利益の合理性で判断するのではなく、あくまでも制度の内容の合理性を検証すべきであるということになります。

 蛇足ですが、“成果主義”の賃金制度、人事制度は決して悪い制度ではありませんが、『チーム主義より個人主義化』『人が育たない』『離職率の上昇』等、中小企業には非常に弊害が多い制度であるといわれています。

   関連記事:こんな人事制度は失敗する“成果主義の功罪”

 当事務所では、ともすれば『脅しの人事』とも受け取れる成果主義の人事制度よりも、人材の育成を目的とした、『人を育てる人事制度』の導入を推奨しております。

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上記からも判るように、会社の新たな制度の導入に関しても、不利益変更の問題はどうしても付いてきてしまいます。

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昨今の不景気による人件費対策で、毎年一定時期に行われている定期昇給を廃止したいという相談が後を絶ちません。

制度としての定期昇給を廃止するということは、労働条件の不利益変更にあたるとされるのでしょうか?

一般的にある一定時期(多くの企業では毎年4月1日となっている)に定期昇給をさせる旨の就業規則上の規定が定められているとするならば、“使用者が法的に一定額以上の昇給義務を負う”という解釈になってしまいます。

こういった場合に就業規則を変更することによって、定昇を廃止することが不利益変更になるのかどうかと言うことが、議論の対象になってきます。

判例では、現実に不利益を被るか否かよりも、就業規則の変更により、不利益を被る可能性があるだけで、不利益変更に当たるとされております。

よって、定昇の廃止という変更によって昇給がなくなるという不利益を被る可能性がある以上は不利益変更と解釈せざるをえないという結論になってしまいます。

不利益変更に当たるということになれば、今度はその不利益変更が“合理性に基づいた内容”で受容できるのかどうかということを検証していかなくてはなりません。

この合理性の判断基準というのは、“成果主義賃金制度の導入”と同様のレベルで検討していきます。

つまり、合理性は必要であるが、“高度の合理性”までは必要性を求めないという解釈が一般的です。

確かに定期昇給は賃金に付随するもので、重要な労働条件ではありますが、会社が成果主義賃金制度を導入するという条件で、定昇を廃止したとしても、その従業員のがんばりは成果次第では賃金が上昇する可能性がある以上はその廃止自体は不合理とは言えないとの裁判例もございます。

ただ、結果的に定昇の廃止により、賃金が下がってしまう従業員に対しては、経過的措置を設ける等の配慮が必要でしょう。

裁判例では定昇の廃止、成果主義的賃金制度への変更に伴い、月給が15%低下した従業員に対して、何の経過的措置、緩和措置のない変更は不合理とされた例もあります。

逆に、2年間の経過的措置を講じて、賃金の減額分を調整手当等で補ったケースでは、合理性ありとの判例もあります。

また、労働組合との合意による場合は合理性が労使間で調整できたという、最高裁判例もあるようです。

よって、前回の成果主義賃金の導入、及び、今回の定昇の廃止という観点から見た、キーワードとしては、“経過的措置の導入”と“組合や従業員との協議”ということになってくるでしょうか。

上記からも判るとおり、制度変更を伴う、賃金制度や就業規則の改定は不利益変更の問題を避けて通ることはできません。 

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歩合給は営業担当者やタクシー運転手等、単に労働時間で仕事の成果が出るわけではなく、売り上げ等で評価されるべき仕事である場合にその導入が検討されるべきもの、あるいは導入されるものと考えます。

これにより、賃金が上がる人もいれば、当然下がる人も出てくるということになります。

そもそも、歩合給自体を導入すること自体が不利益変更になるのでしょうか?

裁判所の見解は“歩合給を導入したことにより、従業員の平均賃金がほぼ同一であったとしても、同じ売り上げ水準で成績を上げていたとしても、賃金低下の可能性がある以上は不利益変更にあたる”としました。

不利益変更に当たるとの判断が出た以上は次に合理性の判断をしていかなければなりません。

これも成果主義賃金の導入定昇の廃止と同様の考え方で、
“導入にあたっての合理性は求めるが、高度の合理性までは求めない”

というのが一般的な考え方のようです。

と言いますのは、そもそも歩合給というのは、労働者の出来高に応じて賃金を配分するという考え方になりますので、業種(例えばタクシー運転手や営業担当者)などに関しては、労働生産性という観点から見ると、単に労働時間で成果を測る方法よりは公平で合理性があると考えられるわけです。

またそれ以上に従業員の勤労意欲を向上させる等の副次的な効果も考えられます。

よって、歩合給の導入の結果、賃金不利益が出る従業員に対する、経過的な救済措置や、労働組合や従業員との交渉をしっかり行う等、一定の手順を踏んで行うのであれば、変更自体は合理性があり、有効であるとの見解になる可能性が高いと考えます。

気をつけなければならないのは、例え合理性があり有効であったとしても、完全歩合の導入を検討する際には、労働基準法の27条(出来高払制の保障給)に抵触しない設計が必要となります。保障給をどのように、どれくらいのバランスで設計していくのかの検討は不可欠です。

歩合給を導入するにしても、一定の基本給は保障しなければならないということです。

後もう一つは、どの業界にも適合する賃金制度ではないということです。

この賃金制度を導入するときは、果たして歩合給という考え方が自分の業界にあっているのか?
ということを検証しなければならないでしょう。

上記裁判例で合理性があり有効と認められたのは、主にタクシー運転手の判例です。

 

ご覧の通り、賃金制度を見直す場合であたっても、労働契約法が施行後は、常に不利益変更の問題は避けて通れなくなっています。

 

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平成18年の4月より、“高年齢者等の雇用の安定等に関する法律”が改正され、原則事業主には、労働者の65歳までの雇用の確保をしなければならないとされました。

どのような形で雇用を確保するかというと
①定年を65歳以上まで引き上げる。
②定年を60歳のままとするが、労働者が希望すれば、定年後も65歳まで再雇用する。
③定年制そのものを廃止する。

という3つの方法のどれかを講じなければならなくなったわけです。

ただし、すぐに対応することも現実的には難しいでしょうから、一定の経過的措置が設けられ、平成25年3月末日までには65歳までの雇用を確保してください、というようになっております。
(平成22年3月の現時点では63歳までの確保。平成22年4月からは、64歳までの雇用をとりあえずは、確保してください。というようになってます。)

再雇用制度というのは、②の方法の時ですね。

再雇用をした場合に、定年前の給与から額を引き下げるというのは、不利益変更にあたるのでしょうか?

これは、不利益変更にはあたらないと解釈されています。

これはそもそも、60歳の定年後の労働契約はそもそも存在しないため、不利益かどうかを比べる基準が存在していないんだ、というように考えられるためです。

**平成28年5月に定年後の再雇用時に給与を引き下げることは、同一労働、同一賃金の原則に反する行為として、違法という地裁判決が出ました。当サイトではこの判決がまだ現時点では地裁レベルである点等を踏まえ、当記事を作成時の平成22年の状態のままの表現内容にしています。情報の取り扱いに関してはあくまでも自己責任にてお願いいたします。


よって、定年時点で一旦労働契約を切った上で、新たな雇用契約を巻き、その雇用契約上で新たな賃金を設定するということになってくるので、不利益変更にはあたらないということになるのですね!!

(但し、有給休暇の継続雇用としては、例え、定年で一旦雇用契約が切れたとしても、断続期間がない限りは雇用期間は通算するというようになってます。)


しかしながら、会社が継続雇用を導入し、65歳までの雇用の確保を計る代わりに、その交換条件として、55歳から60歳の原則の定年時までの約5年間の給与の減額をしたとすればどうなるでしょう。

これは不利益変更となってしまいます。

よって、変更に関して“高度の合理性および必要性”が不可欠となってくるのです。

しかしながら、一方としては60歳から65歳までの雇用の機会が確保される労働者側の利益の部分も裁判所は判定材料にするようです。

裁判例では、福利厚生制度の適用延長や特別融資制度の新設など、不利益を緩和する措置も取られた上の変更で過半数組合(9割が組合員)との合意があるケースでは、合理性、必要性が認められた変更として、有効とされました。

要は、60歳以降の雇用の確保の労働者側のメリットと、給与の下げ幅のせめぎ合いに最終的にはなるでしょう。

継続雇用制度そのものは、労使協定で会社側が再雇用する従業員の基準を設けることができるわけですから、全従業員がその60歳以降の雇用継続の恩恵にありつけるわけではないので、55歳以降の賃金の減額幅があまりにも大きい場合は、長い目で見た場合に不利益になることも考えられるわけです。

例えば、55歳からの給与減額となり、65歳まで再雇用されたとして、ようやく、減額以前の60歳到達時の賃金に追いつけるような賃金設計をするのであれば、その変更自体が無効と判断される可能性も高いのではないかと思われます。

よって、減額幅を含めて、経過的措置、代替措置、不利益緩和措置を充分に考えた上で、労働組合や従業員代表との協議と充分行えていないと、不利益部分が無効と判断されかねません。

くれぐれも慎重に行う必要があるでしょう。

 

上記からも判るとおり、制度変更を伴う、就業規則の改定は不利益変更の問題を避けて通ることはできません。 

新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。

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そもそも、皆勤手当、精勤手当とは、従業員の出勤奨励を目的として、会社が決めた出勤成績を満たしている場合に支払われる手当です。

そもそも、労働契約自体が双務契約で、労働者は労働日には、労務を提供しなければならないという形になっているので、本来出勤日は有給取得を除いては、労働する義務が課せられているわけです。

よって、当然全出勤日に出勤しなければならないにも関わらず、出勤成績によって、精皆勤手当を支給することが、そもそもおかしいのではないかという考え方もあり、従来型の日本企業的なこの精皆勤手当をなくしてしまおうという、傾向が昨今強くなっております。

この精皆勤手当ですが、労働基準法では、支給条件や支給基準が明確に規定されている限りは、労働の対価として賃金に該当します。

よって、このような精皆勤手当を廃止または減額することは、不利益変更の問題が避けて通れないこととなり、やはり“高度の必要性に基づいた合理的な内容”であることが必要とされます。

この精皆勤手当の廃止、減額の合理性の考え方を判例等から紐解いていきたいと思います。

精皆勤手当を廃止するとしたとしても、その廃止が賃金制度の改定と関連して行われ、総支給額的にみれば、この手当が廃止されたとしても、結果的に賃金を減額していないケースであれば、廃止自体は賃金制度の改定により付いてくるもので、合理性を持つと考えることもできます。

ただし、賃金制度改定をするわけではなく、ただ単に、手当だけを廃止するというのであれば、これにより結果的に総支給額が減額されるのであれば、“高度の合理性”というところの抗弁が求められます。

会社が経営状態が芳しくなく、人件費削減の一環として、精皆勤手当を廃止する場合はどのような点に気をつけるべきでしょうか?

精皆勤手当というのは一般的に全体の給与額の中ではそれほど大きなウェイトを占めるわけではありません。

よって、会社経営上の人件費抑制が必要なケースでの廃止であれば、例えば、出勤成績を賞与査定に反映させ、出勤成績がよい従業員に対しては、賞与上で反映してあげる等の代替措置、経過的措置等を講じておくべきでしょう。

もちろん、その当たりを労働組合や従業員等と事前に協議をしたうえで、理解を得ておくことも、合理性を抗弁する上で不可欠なことはいうまでもありません。

ご覧の通り、手当の減額、廃止は当然のこと、複数の手当を一本化するにあたっても、労働契約法が施行後は、常に不利益変更の問題は避けて通れなくなっています。

新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。

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そもそも賞与というものは、会社や個人の業績等によって支給額が可変するため、就業規則上も支給に関しての計算に関しては不明瞭な書き方をしているケースも多く、“会社の業績が悪い場合は支給しない”旨を記載し、万が一に備えて、担保としているケースが大半だと思われます。

賞与の性格として、査定期間中の功労報酬的なもの、及び、生活補填的なもの、将来のモチベーション向上的なものと3つに大別できるといえるでしょう。

賞与の場合は上記のような、支給条件に関しては、明確にせずに担保しておく、というのであれば、基本的に労基法24条の不払い等の法に抵触する問題はないと思われますが、算定基準や支給額計算等が明確に規定されている場合は、就業規則の定めに従い、賞与の請求権が発生すると考えられます。(もちろん、規定上支給要件をクリアしている場合に限られますが…。)

この場合、よく問題になるのは、退職予定者に対して、通常の労働者に比し、賞与額を減額するという規定を設ける場合の合理性の問題がよく議論されるところです。

よく、賞与の場合は“支給日に在籍していること”という在籍要件というものを規定されている企業さんが多いと思います。

これに関しては最高裁判決でも合理性があり有効との判例があります。

こういった、判例から考えるに、退職予定者に関しても、一定の範囲内であれば、減額支給を設けることは、不合理とまではいえないと考えます。

上に記載した、退職金の性質上“将来のモチベーション向上的なもの”に関しては考慮する必要がないわけですからね。

この事案に関しては地裁判例で、退職労働者に対して賞与額の減額が認められた判例があります。

この判例でも、将来的なモチベーション向上部分の減額の部分と、退職労働者の賞与の減額が退職の自由を制約するものかどうかという点が争われ、裁判所は労基法、民法ともに照らし合わせても合法的であるという見解を出しました。

ただし、減額の額に関しては、将来の期待額が全体の2割程度であるから、それ以上の減額は公序良俗に反し、無効とされています。

よって、結論としては、以下の3点に気をつけて、賞与規定を変更すれば、特に問題にはならないのではないかと考えます。

1)減額する割合ー将来の期待額部分に限定する。(裁判例では上限2割まで)
2)退職に対する足止め策とみられないように制約を受ける期間を限定する。
3)事前通知する。少なくとも賞与支給日直前にこのような制度を導入し、直近の賞与支給日から適用するようなやり方であれば、合理性は得られないだろうと思われます。


やはり、こういった場合も慎重に行う必要があるでしょう。

 

ご覧の通り、賞与を含む賃金制度を見直す場合であたっても、労働契約法が施行後は、常に不利益変更の問題は避けて通れなくなっています。

新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。

 

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地域手当とは、会社によっては都市手当や勤務地手当などという名称で呼ぶ場合もありますが、勤務地によって生じる、地域間の物価の格差を埋める手当です。

単身赴任手当とは、転勤に伴い、家族と離れて暮らさざるを得ない従業員に対して支給される手当のことを言います。

これらの手当は直接は労働の対価とは言えず、いわば、福利厚生的な手当となりますが、就業規則等に支給要件が明記されている限りは、労働基準法上の“賃金”であると解釈されてしまうわけです。

これらの手当は地域手当はもちろん、単身赴任手当でさえも、勤務地の物価差を埋めて、各々の従業員の実質的な賃金額の均等をはかるためのものという趣旨も含まれていると考えられます。

しかしながら、100%地域の物価の格差で決められているのか?と問われれば、やはり別の要因で額が決定されている部分もあるでしょう。

よって物価水準の変動によって、どれだけ減額できるのかということは一概には言えないと考えられます。“ドサクサに紛れて減額しやがった!!”と言われてしまう可能性もあるわけですからね。

これらの要因から考えると、こういった地域手当、単身赴任手当等を減額することも、不利益変更にあたり、減額に際しては“高度の必要性”及び“合理性”を検証しなければならないということになってしまうわけです。

この地域手当や単身赴任手当の減額ということでの、不利益変更で争われた大きな判例というのは、私の調べた限りでは見当らないようです。
(もしかすると簡易裁判所や地裁レベルではあるかもしれませんが…。)

よって、以下に述べることはあくまで推測という前提での話になります。

そもそも、地域手当、単身赴任手当というのは、地域の物価格差を考慮し実質賃金の公平化を図ろうという目的なわけですから、物価水準の変動の範囲内で地域手当、単身赴任手当を減額することは、“高度の必要性”まで求めることまでは必要あるのかということが問題になってきます。

しかしながら、別の色々な福利厚生的な手当の減額や廃止に伴う判例を見ていると裁判所は“高度の必要性”を企業側に課しているケースが多いように見受けられます。

例えば、日帰り出張手当、外出時食事補助、時間外労働の食事補助等であっても、就業規則等で支給基準が明確である以上は、労働基準法の賃金であると解釈され、それらの手当の廃止に関しても、“高度の必要性”まで要求しています。

よって、こういった裁判所の判断基準の傾向から見ても、例え、どちらかといえば福利厚生的な地域手当等を減額するに際しても、必要性や減額の程度、経過措置、代替措置、組合もしくは労働者側との交渉の経緯等が総合的に判断されることとなります。

地域手当、単身赴任手当の減額に際しても、慎重に行うことが不可欠なわけです。

 

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退職金の減額を変更する際によく問題になるのは、変更によって、現時点で退職したと仮定したときに、得られるであろう額(いわゆる既得権ですね。)を超えて、引き下げれるのかということです。

例えば、勤続3年以上から退職金の支給要件を満たす退職金規定がある企業で、勤続5年目で退職金規定を廃止されたとしても、5年間勤続分で得られていた既得権の部分に関しては、労働者側に請求権が残るわけです。

労働者側の既得権がある場合の、既得権部分に関しては、例え退職金規定を減額変更をしても、遡及して効力は発生しないわけです。

よって、既得権部分は当然に残したままで、例えば、10年後、15年後退職した際に受け取る金額を減額変更していくという考え方が、不利益変更となるのかという部分を見ていきたいと思います。

 

 『長年勤めた社員の退職金を支払う際、その金額のあまりの大きさに焦った!!』 

 『今の制度では、退職金の額が大きくなりすぎて、今後、経営に影響が出てしまう。。。』

 現行の退職金制度を変更したいけど、何かよいスキームはないだろうか…??

 

 裁判所の考え方は、退職金も他の定期賃金同様に、退職金規定を変更し、支給額を減額することは不利益変更にあたると判断しています。


退職金という、不確定な期限に発生するものであっても、労働者の期待的利益として、法律上も保護の対象となるという考え方になります。

よって、このケースでも“高度の必要性”に基づいた“合理的内容”を求めています。

では、どういった場合が“高度の必要性”に基づいた“合理的内容”なのかというと…

合理性が認められた判例としては
1)会社更生法摘要の下で、退職金額を15%以上減額し、15年間の分割払いとしたケース

2)会社更生法の摘要下で退職金額を変更前の2割とし、退職日から3ヶ月以内にその半額を、その後6ヶ月以内に残金を払い、退職金原資のできたときに加算支給するケース
 (加算支給の結果、従来の75%程度までは支給されている。)

3)会社の合併に当たり、労働条件を統合するために、退職金支給率を引き下げたが、給与規定全体を見直し、定期賃金や手当を増額し、蓋を開けてみた結果、賃金全体としてはさほど不利益にはならなかったケース

一方で合理性が認められなかった判例としては
 1)経営悪化という理由により、退職金の20%削減及び、支給率の減額改定されたが、客観的に経営悪化とまではいえなかったケース

 2)出向先との調整のため、退職金を従来の額よりも3分の2から2分の1の範囲で引き下げたケース。


 高度の必要性というのは、経営的に逼迫しているということが、客観的に証明できること。
合理性というのは、定期賃金や手当を含む賃金規定全体としての見直しをした上で、もしくは定年延長等の制度を設ける等の代替措置でもって、不利益を被る労働者に対する救済措置が講じられているか。

判例を見る限り、そういった基準で裁判所は判断しているのかな。と感じます。

 

ご覧の通り、労働契約法が施行後は、退職金規定の変更も慎重に行う必要が出てきました。

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企業の福利厚生とは、“労働の対価”の賃金とは一線を引いた形で考えられます。

つまり、労働の対価とは関係なく、事業主側が恩恵的、配慮的に従業員のために支給する利益又は費用のことを言います。

例えば、社内住宅ローンの貸付制度であるとか、借り上げ住宅であるとか、フィットネスクラブの法人契約などなど、企業によって従業員に提供する利益は様々です。

企業としては“よい人材に来て欲しい”ということで、福利厚生の充実を計ってきており、就職活動をする側もその受けれる恩恵を会社を選ぶ際の重要なファクターと考えるケースも多いでしょう。

また、入社した後も従業員はこの恩恵的な“福利厚生”をあてにして、入社後の生活設計をすることがあり得るでしょう。

よってこれら福利厚生を会社側からの恩恵的なものだからと割り切って、一方的に廃止してしまうと従業員側からしてみれば、生活設計等を不当に損なうこともあり得るわけです。

福利厚生の一方的な廃止は“賃金”や他の核となる労働条件ほどには厳格ではないにしろ、不利益変更の問題になりえるケースはあるといえます。

また、このような福利厚生は“当該事業場の労働者のすべてに適用される定め”ということになるのであれば、就業規則の絶対的記載事項となり、記載が必要な項目となるわけです。
よってこういった福利厚生を設ける場合は就業規則によって制度化させているケースが大半であるということを考えると、その部分も労働契約の項目の1つであるとの解釈になってしまいます。

よって、就業規則を変更することにより、福利構成部分の労働条件を引き下げる、あるいは廃止するということは、不利益変更となり、その有効性は、やはり合理性及び必要性で持って判断されるということになってきます。

ただ、福利厚生は先ほども述べたように、労働条件の核となるべき、それが直接労働の対価と考えられる賃金や退職金に比べて不利益部分が少ないと考えられるため、合理性や必要性も比較的緩やかに見られる傾向はあるようです。

ただ、従業員の生活設計として組み込まれているような、社内の住宅ローン制度等は廃止したりすることによって、不利益の度合いは少なくないと思われますので、やはり、いくら、恩恵的な部分であるといっても、慎重に吟味し、制度変更をしていく必要はあるでしょう。

 

ご覧の通り、労働契約法施行後は、一見会社の裁量と思われるようなちょっとした制度の変更ですら、慎重に行わなければならなくなってきております。

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“就業規則に退職後の同業他社との転職や、同業の事業の開業の一定の制限の設定”と不利益変更の関係についてみていきます。

このような制限を設定することは、いわゆる競業避止規定という言い方をしますが、そもそもそのような、規定を設定することが、憲法22条の職業選択の自由に抵触しないのかという問題がありますが、裁判所はある一定の限度を設けて、その有効性を認めています。

いくら、就業規則に記載しているからといって、何から何まで、競業を禁止してしまうと、それは職業選択の自由との兼ね合いがありますので、退職者の権利を不当に侵害してしまう可能性がありますが、

1)営業秘密や企業秘密等の使用者の正当な利益を守る目的
2)労働者の退職前の地位、職務内容
   (会社にとって漏洩すると困るような、機密情報を扱っている業務若しくは職位かどうか)
3)期間や地域等の競合が制限される範囲
4)代償措置の有無

の4つのポイントあるいは制限を設けることにより、有効とした判例もあります。

また、こういった、競業避止規定を設けている場合に、この規定に違反した場合は、退職金を減額又は支給しない旨の規定とリンクさせている場合が多いわけですが、退職金制度を設ける設けないであるとか、どのような制度にするのかどうかということは基本的に事業主側の裁量であることや、退職金という性格上、在職期間中の功労的な意味もありますので、減額したり不支給にしたりすることも可能であると考えられます。

しかしながら、退職金の別の性質として、賃金の後払い的な意味もあるとの理由で、減額、不支給に関しては合理的な理由が必要との見解があります。

裁判例等を見ていると、よほどの背任性が高いような同業他社への転職でない限りは全額不支給にすることは難しいのではないかと考えます。

また、半額に減額する規定に関しても、退職後1年以内の勤務地もしくは隣接した都道府県内での競合に限定された、競業避止規定についてのみ有効とされています。

次に、この競業避止規定、及びそれに伴う退職金の不支給規定を新たに就業規則に追加する場合は、労働者の将来に対しての退職金取得の期待部分を損なう可能性があるため、不利益変更であるとされています。

こういった追加条項を設ける際、どういった点で合理性や有効性を判断するかというと、判例では以下の点を考慮し、合理性ありと判断したものがあります。

1)変更内容
 ①管理職や機密情報を扱う職種の従業員に限定して競業の制約を課していること
 ②期間を1年以内と限定していること 
 ③会社の承諾を得れば、競業避止規定の問題が生じないようにしていること
 ④退職金不支給も絶対条件ではないこと
2)変更の必要性
 会社の存続を左右しかねない要職の従業員の競業や、大多数の従業員のライバル会社の転籍等、今後の会社経営に重大な影響を及ぼすと考えられること

3)代替措置
 功労支給金制度等の導入
4)変更の手続きが適性に行われていること
 組合との協議や従業員の合意


やはり繰り返しですが、こういった手続きは慎重に手続きを踏んで行うべきでしょう。

 

ご覧の通り、労働契約法施行後は、一見会社の裁量と思われるようなちょっとした制度の変更ですら、慎重に行わなければならなくなってきております。

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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