そもそも賞与というものは、会社や個人の業績等によって支給額が可変するため、就業規則上も支給に関しての計算に関しては不明瞭な書き方をしているケースも多く、“会社の業績が悪い場合は支給しない”旨を記載し、万が一に備えて、担保としているケースが大半だと思われます。

賞与の性格として、査定期間中の功労報酬的なもの、及び、生活補填的なもの、将来のモチベーション向上的なものと3つに大別できるといえるでしょう。

賞与の場合は上記のような、支給条件に関しては、明確にせずに担保しておく、というのであれば、基本的に労基法24条の不払い等の法に抵触する問題はないと思われますが、算定基準や支給額計算等が明確に規定されている場合は、就業規則の定めに従い、賞与の請求権が発生すると考えられます。(もちろん、規定上支給要件をクリアしている場合に限られますが…。)

この場合、よく問題になるのは、退職予定者に対して、通常の労働者に比し、賞与額を減額するという規定を設ける場合の合理性の問題がよく議論されるところです。

よく、賞与の場合は“支給日に在籍していること”という在籍要件というものを規定されている企業さんが多いと思います。

これに関しては最高裁判決でも合理性があり有効との判例があります。

こういった、判例から考えるに、退職予定者に関しても、一定の範囲内であれば、減額支給を設けることは、不合理とまではいえないと考えます。

上に記載した、退職金の性質上“将来のモチベーション向上的なもの”に関しては考慮する必要がないわけですからね。

この事案に関しては地裁判例で、退職労働者に対して賞与額の減額が認められた判例があります。

この判例でも、将来的なモチベーション向上部分の減額の部分と、退職労働者の賞与の減額が退職の自由を制約するものかどうかという点が争われ、裁判所は労基法、民法ともに照らし合わせても合法的であるという見解を出しました。

ただし、減額の額に関しては、将来の期待額が全体の2割程度であるから、それ以上の減額は公序良俗に反し、無効とされています。

よって、結論としては、以下の3点に気をつけて、賞与規定を変更すれば、特に問題にはならないのではないかと考えます。

1)減額する割合ー将来の期待額部分に限定する。(裁判例では上限2割まで)
2)退職に対する足止め策とみられないように制約を受ける期間を限定する。
3)事前通知する。少なくとも賞与支給日直前にこのような制度を導入し、直近の賞与支給日から適用するようなやり方であれば、合理性は得られないだろうと思われます。


やはり、こういった場合も慎重に行う必要があるでしょう。

 

ご覧の通り、賞与を含む賃金制度を見直す場合であたっても、労働契約法が施行後は、常に不利益変更の問題は避けて通れなくなっています。

新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。

 

不利益変更のリスクを最小限に抑えたやり方で、原資の範囲から頑張った社員に公正公平に優遇して賞与を支給するシステムを、当事務所の『人を育てる人事制度』にて構築しませんか?

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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