もし、就業規則に今まで無かった、“評価に基づいた降格制度”の導入を導入すると、それは不利益変更になるのでしょうか?

そもそも、いわゆる“降格”という考え方には2通りあって、職制上の地位を下げる、“降職”という制度と、職能資格制度上の資格を下げる“降格”という制度の2通りに分かれます。

わかりやすく野球に例えると、降職と言うのは、今マウンドに上がっているピッチャーが集中連打を浴びて、ノックアウトさせてマウンドから引きずり降ろされること。

降格というのは、1軍登録されて、1軍マウンドで登板機会の可能性のあるピッチャーを2軍に落とすことで、1軍の資格を降格させるということで、登板の可能性すら奪ってしまうことです。

従業員の中から、一定の資格に達している従業員の中の誰かから管理者を任命する(1軍登録されているピッチャーの誰かから、先発ピッチャーを任命する。)“昇進”や、その地位にあったものを業績不振等の理由により更迭する“降職”は企業の人事権の一部であると解釈されております。

よって、企業の裁量により、就業規則の根拠なしに、会社が従業員の能力、経験、実績、指導力等により、その役職を付したり、外したりすることは、可能なわけです。

しかし、今回問題にしたいのは、職能資格制度上の資格を下げる、いわゆる降格です。

この降格自体は会社側の裁量だけではなく、就業規則の明確な根拠と相当な理由が必要との裁判例があります。

某証券会社第1次仮処分事件(東京地裁、平成8.12.11)では

『就業規則等による職能資格制度の定めにおいて、資格等級の見直しによる、降格、降給の可能性が予定され、使用者にその権限が根拠付けられていることが必要である。』

との見解を裁判所が出しました。

よって、“降格処分”であれば、就業規則での根拠付けがないとできないという解釈が成り立ちます。

この降格制度自体を導入し、就業規則を変更することが、いわゆる不利益変更となるのでしょうか?

結論から言うと、不利益変更の問題は生じる可能性はあります。

多くの裁判例から判断するに、評価に基づく降格制度を導入することは評価の如何によって降格と言う不利益の危険性がある以上は、不利益性を認め、合理性の判断の中で不利益変更となるかどうかを結論付けています。

この合理性の判断基準とは、就業規則の変更の不利益の合理性の判断基準と同じ考え方、つまり、変更の必要性の程度、内容、どのくらいの不利益があるかという程度、代償措置、労使の協議の状況に基づき総合的に判断するという解釈となります。

ただ、会社の制度上の問題ですので、会社側としての主張は“公正な制度を導入しただけで不利益な変更ではない。”ということになり、そこが争点になってくると思われます。

何をもって“公正な制度”なのかということは、労使以外の外部の人間は非常に判断しづらいと思います。

よって、上記の合理性の判断基準のなかでも、とりわけ、労使の協議の過程や合意の有無がより重要になってくるのではないかと推測できます。

あとは、経過的措置の有無や代償措置の有無も合理性の判断においては重要な要素となってくるでしょう。

上記からも判るように、会社の新たな制度の導入に関しても、不利益変更の問題はどうしても付いてきてしまいます。

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新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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