懲戒処分の基本的な考え方

職場における懲戒処分とは?

  −その基本的な考え方ー

 

 国家は刑法という法律によって罪と罰を明確にして、国の秩序を守っています。都道府県等の地方自治体も独自に条例を交付して、秩序維持の努力をします。企業(会社)も自治行為が認められた、自治体の一つです。会社の経営権として、その会社の秩序を維持する権限を持っていると考えられます。

 大勢の者が従事する会社という組織が一つの自治体として、会社に従事するものに一定の規律を定め、それを破ったものに一定の制裁を与えることによって、自治体としての秩序を維持する。

 この考え方が懲戒処分です。

 

 最高裁判例でも、

 “使用者は、企業秩序を維持し、企業の円滑な運営を図るために、雇用する労働者の違反行為を理由として、その労働者に対し、ある種の制裁罰である、懲戒を課すことができる(関西電力事件 昭和59.9.8判決)”

  と、企業側の従業員に対する懲戒権を認めた内容となっています。

 

 ただ、“懲戒を課す”といっても、会社のルールブックである就業規則に、どのような行為がどのような懲戒の対象になるのかという定義付けが必要であり(これを罪刑法定主義といいます。⇒詳細はこちら)、そういったことを踏まえると就業規則のない会社では、理論上従業員に懲戒処分はできないということになりますので、法的に就業規則作成義務のない、規模の小さな会社では注意が必要です。

 

 ここでは、企業にとって、日常起こりうる、“懲戒を検討しなければならない事案”になった際の留意しなければならないポイントや、非違行為(不祥事)発生から懲戒処分までのもって行き方のポイントを解説していきたいと思います。

 

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一般的な懲戒処分の種類

企業はどのような懲戒行為を従業員に課すことができるのか

ここでは、一般的に就業規則に定められる懲戒の種類についてご説明をしていきます。

実は従業員の不祥事に対してどういった罰を与えれるのか、つまり懲戒の種類については、労働法上何の定めもありません。何の定めがないといっても、もちろん従業員に対して身体的に加虐を加えるような体罰的なものはNGであることは言うまでもありません。

 

 

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 一般的によく就業規則に記載される、懲戒の種類としては、1.戒告、けん責、2.減給、3.出勤停止、4.降格・降職、5.諭旨退職、6.懲戒解雇(処分が軽⇒重の順に記載)という段階に考えられます。

 

それぞれについて解説していきたいと思います。

1.戒告、けん責

 どちらも不祥事を起こした従業員に反省を促し、将来を戒めるものです。一般的には、戒告は口頭による注意のみ、けん責は口頭注意に加えて始末書の提出を伴う処分というように言われます。(法的な定義付けがされているわけではありません)

 始末書というのは、従業員が行った不祥事(非違的行為)を認め、反省し、将来に同様の不祥事を行わないということを書面により約束させるものです。

 けん責の時に限らず、戒告の際も、書面により不祥事に対する注意を書面により行い(イエローカードの提示)記録を残しておくほうが将来、同様のことが起こり、その従業員に対して厳罰で臨まなければならない事態になった場合、会社に有利に働くでしょう。要は記録の積み重ねですね。

 なお、けん責により会社が始末書の提出を求めても、従業員が提出に応じない場合は、始末書の提出に応じないことに対して何らかの懲罰が課せるのかどうかということが問題になる場合があります。

 判例での見解は分かれますが、会社側は始末書の提出は強要できないという考え方が一般的です。

 

 2.減給

  不祥事に対する懲罰的な意味合いで、本来受け取れる賃金の額からいくばくか減額するという制裁方法です。ただしこの減給の制裁には、減給できる額は一定の制限が課せられており注意が必要です。(労働基準法91条)。つまり、一回の不祥事に対しては、平均賃金(おおまかにいうと1日分の日額賃金相当額)の半額まで、不祥事が複数回に及ぶ場合は一賃金支払期(月給制なら月給額)の賃金総額の10%以内までしか減額できないということになります。

 

 例)

  ・月給額が30万円    *平均賃金が10,000円となる場合

             *厳密に計算すると、こんなきっちりの数字になることはまれですが、あくまで1例として

  ・“遅刻”という不祥事を制裁の対象としているケース

 

 この例のケースでは、従業員が1回遅刻した場合の減給の制裁の限度額は、平均賃金=10,000円の半額であるところの、5,000円までしか引けないということになってきます。

 これが、同じ賃金支払期(月給制なら、1ヵ月間)に複数回遅刻するとどうなるでしょうか。

 例えば、賃金計算期間の1か月の間に、同じ従業員が7回遅刻したとしましょう。

 この場合は、1事案につき、平均賃金の半額、つまり5,000円までは制裁的に減給することが認められますので、単純に5,000円×7回=35,000円までは減給できると考えがちですがこれは誤りです。

 なぜなら、この減給制裁には、一賃金支払期の支給額(月給制ならその月の月給額)の10%を上回ってはいけませんので、35,000円を引いてしまうと、10%の上限を超えることになります。

 この場合は30万円の10%、つまり30,000円が制裁の限度額ということになります。

 

 3.出勤停止

  これは、不祥事(非違的行為)を起こした従業員に一定期間就労を禁止することを言います。

 出勤停止は懲戒処分として従業員に課す以上は、不就労部分に対しては、会社は賃金の支払い義務は発生しませんし、労働基準法26条の休業手当(会社都合の休業の際の60%保障)の支払い義務もないというのが一般的な考え方です。

 出勤停止期間に関しては特に、法令で制限はありませんが、従業員側にとってあまりに理不尽なほどの長期に渡る出勤停止は、公序良俗に反して無効と判断される可能性があるので注意が必要です。

 また、具体的な懲戒処分を下す前段階、つまり、会社側が従業員に不正があったどうか等を調査をするようなケースで従業員を出勤停止(自宅待機)にする場合は、懲戒処分としての出勤停止の場合とは異なった考え方をするので注意が必要です。

 この場合は、会社都合での休業と受け取られる可能性が高く、労働基準法26条の休業手当が必要となるケースも出てこようかと考えられます。

 

 4.降格・降職

  これは、懲戒処分として、職位や等級、資格といった企業内での格付けを引き下げることを言います。

 職位等が引き下げられた結果、それに伴い賃金も低下することが予想できますが、この場合の賃金低下は前述2.の減給の処分とは別に考えます。

 ただし、この降格・降職はあくまで、職位、等級、資格等の引き下げに限定すべきであり、例えば、正社員を有期雇用に引き下げるであるとか、時給制のパート社員に引き上げるとなると、これは降格・降職ではなく、従来の労働契約を一旦強引に終了させて、新たに別の労働契約をするという概念になりますので、こういった懲戒処分は許されないとされた判例があるので注意が必要です。

 

 5.諭旨退職

  懲戒解雇の事案に該当する非違的行為があったが、情状酌量し、会社側が一定期限内に辞表の提出を求め、自己退職を勧告することをいいます。書籍や文献によっては、“諭旨解雇”との文言になっているものも見受けられますが、事業主側からの一方的な労働契約の解除という解雇という概念では、従業員からの“辞表の提出”ということはあり得ませんので、ここでは“諭旨退職”としておきます。

 従業員側からの退職届、辞表の提出が伴うものは合意退職と解され、法律上、解雇とは一線を引きます。

 この場合は、会社は不祥事(非違行為)を行った従業員に対し、一定期間の猶予を与え、その期間中に退職届の提出を求めます。もし、その期間内に退職届の提出がない場合は懲戒解雇に処するという手順となります。

 懲戒解雇との違いは、諭旨退職の場合は、自己都合退職扱いとして退職金の支給が受けられるということがあげられるでしょう。(ただし、就業規則によっては諭旨退職でも、退職金を全額支給しないルールにしているケースも見受けられます。)

 

 6.懲戒解雇

 懲戒処分の中で最も思い処分がこの懲戒解雇といえます。いわば、企業における死刑判決に等しいものと言って過言ではないでしょう。

 この懲戒解雇ですが、“懲戒解雇の場合は30日前の解雇予告は不要で即日解雇が可能”と誤解されている方が結構おられるようです。懲戒解雇の場合であっても労働基準法20条の“30日前予告または30日分の解雇予告手当を支払った上での即日解雇”という法律上の原則が適用となってしまいます。 

 解雇予告手当の支払いなしで、即日解雇しようとすれば、“労働者の責めに帰すべき事由”ということを“労働基準監督署長の認定を得た”場合に限られます。(いわゆる“解雇予告除外認定”と呼ばれるものですね。)つまり、労働者が解雇されてもやむを得ないような不祥事をしでかしたということの“お墨付き”を行政官庁から取らなければならないということになります。

  ただ、この“労働者の責めに帰すべき事由”の考え方が、会社の懲戒解雇基準と労基署の認定基準とは必ずしもイコールとは限りませんので、従業員の不祥事に対して、この“解雇予告の除外認定”の申請を検討する場合は注意が必要です。

 申請が却下された場合は改めて、30日の解雇予告(もしくは予告手当の支払い)をやり直さなければならないことになります。

 懲戒解雇の際は、就業規則等で“退職金の全部または一部を不支給とする”規定が設けられていることが多いです。

 

 

 ここで説明した“懲戒の種類”は罪と罰のうち、“罰”の部分になります。不祥事に対して、従業員を処罰しようとすれば、会社のルールブック(就業規則)に“罪と罰”やそれに伴う手続きをしっかりと記載しなければなりません。(この考え方を罪刑法定主義と言います。)

 この罪刑法定主義の考え方から行くと、ルールブック(就業規則)上に、どういったことを行えば罪となり、どのような罰が待ちかまているのかという明示を行っていなければ、従業員を処罰することは理論上できないわけです。

 

 この“罪刑法定主義”の考え方と、就業規則の中での懲戒規定の存在意義はリンクするわけです。

 “就業規則がない”あるいは“就業規則はあるが、懲戒規定の部分に穴がある”となると、不祥事を起こした従業員を適正に処罰できないことになってしまいます。

 

 この機会に就業規則、特に懲戒規定を注視して穴がないかどうかご確認されてみてはいかがでしょうか?

 

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従業員のどのような行為を処罰できるのか

懲戒規程は従業員のどのような不祥事に対して処罰をできるのか。

              −罪と罰の“罪”の部分ー

 

 1つ前の記事では、従業員が不祥事を起こした際に、どのような制裁ができるのかということを記載してきました。いわば罪と罰における、“罰”の部分ですね。

 こちらの記事では従業員がどのような不祥事を起こした場合に会社が処罰をすべきなのかということを解説していきたいと思います。こちらのほうは、罪と罰の“罪”の方のご説明になります。

 “罪”の範囲や決め方は各企業さんの裁量ということで、特に法的な規制が及ぶことはございませんが、それでもあまりにも常識外れなことを、“罪”にして処分等をしてしまうと、無効とされてしまう可能性は高いので、公序良俗に反しない程度に罪の範囲を設定すべきでしょう。

 

 企業の秩序を守るという観点から、これだけは処罰の対象としておいたほうが良いものを1−4に挙げてみました。

 1.職務怠慢、懈怠

   職務専念義務違反つまり、労働契約上、義務のある労務の提供をしっかりと行わないこと。無断欠勤や無断早退、無断退席、勤務時間中の私語や怠業がこれにあたります。

 2.業務命令違反

   残業や休日労働命令、転勤を含んだ配置転換の命令、健康診断の受診命令等の業務上の命令に従わない場合がこれにあたります。

 3.職務規律違反

  会社施設内における、ビラ、チラシの配布等の会社の施設管理権を侵害するような行為や、セクシャルハラスメントに該当する行為、酒気を帯びて勤務する、職場でばくちを行う等、職場の規律を乱す行為がこれにあたります。

 4.私生活上の不祥事

  プライベートでの飲酒運転に伴う交通違反、事故や刑法に触れるような行為を行った場合がこれにあたります。

 通常会社は従業員を管理下においている労働時間、就業時間中の不祥事に対して何らかの処分を行うことができると考えられているのですが、こういった管理下においていない私生活、プライベート上の不祥事にまで処分の権利が及ぶのかという論争はありますが、例え、プライベート上の不祥事であっても、報道等により、会社の名誉や社会的信用を傷つけたり、会社の世の中からの評価に悪影響を及ぼすような不祥事は会社側の懲戒権が及ぶとされた最高裁判例はあります。(日本鋼管事件 昭和49年 3.15)

 

 こういった罪と罰の“罪”の部分に関しても、就業規則上の記載がなければ、いざ従業員が不祥事を起こしても、何も処分ができないという事態となってしまいます。しっかりと記載しておきたいところですね。

 

 

 

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懲戒処分ー行う前に知っておくべきこと

懲戒処分は刑罰と同様に考えなければならない!!

 

 懲戒処分という行為は、企業が秩序を維持するために行うものです。企業の自治権により、秩序を乱したものに対して制裁をする行為になります。それゆえに懲戒処分を行う際は、犯罪や条例違反等による、刑事罰と同様のやり方でもって臨まなければならないということになってきます。

 

 以下に刑事罰と同様に考えるべき点を挙げてご説明していきます。

 

 1.罪刑法定主義

 人を処罰するには、一般社会であれ、企業の中であれ、いずれにせよルール(一般社会であれば、刑法や地方自治体の条例、企業であれば就業規則)の中でどのような罪を犯せは、どのような処罰が下るのかという部分をはっきり明記しなければ、そもそも処罰はできないということです。よって例えば、従業員が売上金を横領したとしても、その企業さんに就業規則が存在しなければ、理論上はその横領した従業員に対して何の処罰もできないということになってしまいます。ルールがないのに社長の判断、サジ加減でなんらかの処分を行うことはNGなわけです。

 

 “罪と罰”の決め事ももちろんですが、処分の手続きに関しても就業規則の決め事に拘束されることになります。例えば、懲戒処分の前に、懲罰委員会等の諮問機関を経て処分の程度を決定するという決め事が就業規則上に記載がある場合は、その手続きを経なければならないということになります。この場合、懲罰委員会の諮問を経ずに行われた懲戒処分は手続き面で問題がありと判断される可能性が非常に高いといえます。

 

 2.遡っては処罰できない

 例えば、従業員Aが度重なる遅刻を行ったとします。事業主さんは従業員Aが5日連続遅刻してきた時点で、その勤務態度を問題視し、今まで作成していなかった就業規則を作成し、懲戒規程の中に遅刻を処分対象とする文章を盛り込み、全従業員に周知しました。

 事業主さんは、就業規則の周知前の過去5日間の遅刻に対しても処分しようとしていますが、これは処分できるでしょうか?

 答えはNGです。これは刑事罰の“不遡及の原則”という考え方に基づきます。あくまで、従業員が不祥事を起こした時点で、その不祥事が懲戒事由として就業規則上の記載があれば、処分できますが、なければ、その時点での不祥事に対しては処分できないということになります。

 よって、上記の例では、就業規則作成、周知前の5日間の遅刻に対しては、遡っての処分はできませんが、就業規則制定後にさらにAが遅刻を繰り返すようであれば、制定以後の遅刻に対しては懲戒処分が可能だということになります。

 

 3.二重処罰の禁止

 一度処分した懲戒事案に関しては、その後同じ理由をもとに処罰することができないという考え方で、“一事不再理”ともいいます。例えば、業務命令に反した従業員を戒告処分としたが、反省の色が見えないという理由で、さらに減給の処分をする、ということはこの2重処罰に該当し不可ということになります。ただし、一回戒告処分としたが、それでもまだ、業務命令違反を繰り返すであるとか、さらにひどい懲戒事案に該当する行為におよぶということであれば、さらに行われた不祥事の処分に際し、以前の戒告処分を加味し、加重した処分を課すことは、この二重処罰には該当せずに可能だと考えます。

 

 従業員の不祥事に対して、何らかの処罰を行う場合は、この1−3に関しては留意して行わなければならないということになります。

 

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企業の懲戒権と権利濫用

企業の懲戒権限ー権利濫用かどうかの判断基準

 

 企業は企業内の自治をするにあたって、その秩序を保つために一定の懲戒権限を持っていると考えられるのは前述した通りですが、果たしてその懲戒権が、権利の濫用となってしまう基準はどのあたりなのでしょうか?

 

 労働契約法の15条には以下のような条文があります。

 『使用者が労働者を懲戒できる場合において、その懲戒が労働者の行為及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、その解雇は無効とする。』

 

 条文の最初の“使用者が労働者を懲戒できる場合において”という部分は、前の記事で記載した、“罪刑法定主義”を満たした場合のことです。つまり、就業規則で“罪と罰”を明記したうえで周知していることが、事業主が不祥事(つまり罪ですね!)を起こした従業員を懲戒処分できる(罰を与える)最低条件になります。

 

 ただ、条文のその後の部分“その懲戒が労働者の行為〜その権利を濫用したのものとして、その解雇は無効とする”とあります。これは、仮に就業規則に“罪と罰”の根拠規定があり、最低条件を満たしていたとしても、それだけでは、直ちにその懲戒処分が有効となるわけではなく、無効になる可能性がありますよ。ということです。

 

 では、その有効無効の判断基準はどこで見ていくのでしょうか?具体的には以下の部分に留意して懲戒処分を行うべきでしょう。

 1.不祥事の度合いに相当する処分であること(相当性の原則)

  “罪”と“罰”のバランス、つり合いがきちんと取れているかどうかということです。例えば、1回の遅刻だけで、懲戒解雇という最も重いペナルティーを課すことができるかどうかといえば、いくら就業規則に根拠がある処分だといってもそれは、無効になる可能性が非常に高いといえるでしょう。

  これは刑事罰で量刑を決めることと同じ理論ですね。少額の窃盗の罪だけで、死刑になるとはまず考えにくいでしょう。(江戸時代以前とか、現代でも独裁国家ではあり得るかもしれませんが、それは置いておきましょう。)

 さらに、情状酌量する余地が考慮されたがどうかということも1つの判断基準にはなりえます。例えば、不祥事を起こした従業員の反省の度合いであるとか、何か損害を与えた場合であれば、損害に対して弁償があったかどうかであるとか、そも辺りも考慮の必要があるかと思います。

 よって懲戒処分の決定に関しては、具体的にどのような不祥事であり、それに至った動機、会社や他の従業員に対するインパクト、損害の大きさ等を検証し、前述の情状酌量の余地があるかどうかも含めて、不祥事とのバランスに合致した処分を下さないと、処分自体が無効になってしまう可能性があるので要注意です。

 

 2.同一もしくは類似する罪には平等の扱いを!(平等取扱の原則)

 同じ懲戒の要因、例えば、1回遅刻をしたことにより、従業員Aに対しては、戒告処分であるのに、従業員Bに対しては、減給の制裁をしたとすれば、なぜ、同じ罪に対しての処分が従業員Bの方が重いのかということになってきます。会社側がこの処分の重さの違いに対して理にかなった説明ができるのであれば、こういった処分ができる可能性はありますが、ただ単なる社長のさじ加減でということであれば、無効になる可能性が高いでしょう。従業員に対する好き嫌いで処分を決めているという風に受け止められかねないからです。

 

 よって、何らかの不祥事が起こった場合は、会社側はその同一もしくは類似の不祥事に対して、過去どのような懲戒処分を課しているのかということを調べる必要が出てきます。そういった類似の不祥事の前例がない場合は、過去どのような不祥事に対して、どれくらいの重さの処分を下しているか、という前例を把握した上で、今回の不祥事が前例の不祥事と比較して、どのくらいの重さ加減なのかを判断し、その重さに適した懲戒処分を割り当てていく必要があります。

 

 3.適正な手続きを経ていること

 これは、1つ前の記事の“罪刑法定主義”の部分と内容がかぶってしまいますが、就業規則上に懲戒処分に関する手続きが記載されているのであれば、その手続きを尊守しなければならないということになります。

 例えば、懲戒処分に至るまでの事実関係の調査方法であるとか、不祥事を起こした従業員に弁明の機会を与えるか否かであるとか、懲罰委員会等の諮問機関の諮問を経た上で処分を決定するとか、そういった手続きを就業規則上に記載している企業さん、会社さんも結構おありだと思います。

 

 そういった記載があるのであれば、その手続きを経たうえでの処分でないと、手続きの適正を欠く懲戒処分であると判断され、懲戒権の濫用とされる一つの要因になってしまう可能性があります。

 

 蛇足ですが、不祥事を起こした従業員に弁明の機会を与えたり、懲罰委員会の諮問を経たうえでの処分の決定という、手続きを設けることのメリットに関してお話しておきます。従業員に弁明の機会を与えることは、会社側(使用者側)の一方的な決め付けで処分することの抑止力や、会社側(使用者側)の、従業員に対し情状酌量の点があるかどうかを見たうえで判断しようとしている姿勢が、いざ争いになった場合に裁判所が推酌してくれる可能性があると思います。

 また、懲罰委員会の審議も、社長のさじ加減で処分を決めるよりは、一定の諮問機関の審議を経て処分決定したという筋書きにしておく方が、いざ、解雇権濫用で争われた場合のよりどころとなるのは間違いないと思います。

 

 あくまで個人的な意見として、こういった従業員の弁明の機会の付与や、(もし会社の組織機能的に可能ならば)懲罰委員会の設置も手続きとして入れておいた方がよいかと思います。

 

 

 

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不祥事の発生から懲戒処分までの手順

不祥事発生から懲戒処分までどのような手順で行えばよいのか?

                        −懲戒処分までの流れー

一連の流れとしては以下のようになります。

           1.不祥事の発生

             

           2.事実関係の調査(当事者、関係者へのヒアリング)

             

           3.懲戒事由(罪の部分)についての確認(就業規則にて)

             

           4.懲戒処分(量刑)についての検討

                       *過去の企業内での懲戒処分の履歴等も吟味対象とする

             

           5.就業規則記載の適正な手続きを経る

                       *懲罰委員会の諮問、処分対象者の弁明の機会の付与等

             

           6.処分内容の決定

             

           7.本人への通知、懲戒処分の実施

 

 この流れの過程で、特に慎重に進めなければならない、“2.事実関係の調査”についてもっとブレイクダウンし、詳細を見ていきたいと思います。

 

  

 

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事実関係の調査

  従業員の不祥事があったという、事実認定を行うためには、関係者に対するヒアリング等の事実関係の調査は不可欠です。事実認定を行わないで、特定の従業員を犯人と決め付けるのは非常に危険といえるでしょう。調査方法は懲戒対象者や被害者の性格や事案の性質、重さ等でケースバイケースで対応する必要はありますが、主だったフローは以下のようになります。

  a)被害者、内部通報者からの申し立てのヒアリング

    この際の留意点として

      ・ヒアリングする際には先入観を排除し、客観的に聴く。

      ・申し立てを裏付ける資料の有無の確認

      ・申し立て者以外にも事情を知る者がいるかどうかの確認

      ・申し立てられた内容を確定した事実なのか、推測なのか、意見なのかを判断、区別する。

      ・不祥事を行った者を特定した経緯、理由を確認する。

      ・処分に関しての意見や希望を確認する

      ・相手(加害者)に対して名前を開示していいかどうかの確認

         *特にセクハラ被害等、被害者がいる場合には、被害者の心情等を考慮して、慎重な対応が求められます。

    

   b)証拠品の収集

      留意点)

      ・証拠品となるべき文書を収集する

      ・文書以外にも証拠となるモノが存在するかどうか確認する。

      ・文書については作成者、作成時期や目的等を抽出する。

      ・文書の筆跡や文体を確認し、不自然さの有無や、本人の作成文書かどうかを吟味する。

      ・記述内容の矛盾の有無を確認する。

      ・文書を時系列的に確認し、時間の流れと内容が矛盾しないかをチェックする。

      ・文書と証拠品が辻褄が合っているかを確認する。

     

    c)当事者ではないが事情を知る可能性がある従業員からの聴取

      留意点)

      ・その従業員が目撃したこと、または聞いたことの時期や状況をヒアリング

      ・上記でヒアリングしたことが、事実に基づくものか、推測の域を出ないものなのかを判断

      ・何らかの記録や資料があるのかの確認

      ・その従業員の印象にどのくらいのインパクトがある出来事であったを確認

      ・その従業員の他にも事情を知る者がいるかどうかの確認

    

   d)加害者(不祥事の行為者)からの聴取

     留意点)

      ・聴取を強要されないことをあらかじめ伝える。

      ・ただし聴取拒否自体も重要な判断材料になることもあらかじめ伝える。

      ・申立人(被害者、告発者)の希望も考慮し、彼らの情報を伝えるかどうかをあらかじめ決めておく。

      ・聴取の際に、行為者に提示する文書、資料をあらかじめ決めておく。

      ・聴取を行う際は、先入観を持たない。

      ・聴取した内容が、事実か推測か意見かを判断し区別する。

 

  上記a)からd)のようなフローで行うのがごく一般的でしょう。各々の聴取の際の留意事項は項目ごとにまとめていますが、話が込み入ったようなケース等は専門家に介入させることも検討すべきでしょう。

   

  また、上記のようなフローで各々から聴取できたとしても、供述内容の信用度というのは、正直どの程度かなんとも言えないでしょう。保身のためにうその内容を供述することもありうるわけですから。

 そういった事情を勘案すると、やはりこの事実認定⇒量刑の検討の部分が懲戒処分のフローの中では難易度の高い部分になってくると言えるでしょう。裁判同様、不祥事(罪)の事実認定ができるかどうか、またできたとして、その罰(処分)の重さをどのように考えるかという部分が、企業としては非常に難しいと思われます。

 複雑な事案に関しては専門家の介入も選択肢の一つとして検討すべきでしょう。

 特に最近は、“通勤途上でチカンで逮捕された従業員”“インターネットへの会社に対する誹謗中傷の書き込みを行う従業員”等、複雑かつ特殊なケースで企業が懲戒処分を検討しなければならない場面が増えています。

 

 当事務所では企業様からの従業員の懲戒処分に関して、事実認定から量刑の検討、手続きに関してアドバイスをさせていただいております。様々な事案を扱った経験豊富な当事務所にお任せください。

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