まず、就業規則の定義、考え方についてなのですが、使用者は、雇用契約を通じ従業員を一定の組織の元に位置づけ、業務を運営しなければなりません。

ある一定人数以上の従業員が存在する事業所になると、業務を組織的かつ効率的に運営するためには、従業員の労働条件を集合的、画一的に決定することが必要になってきます。

使用者がこのような、集合的かつ画一的な労務管理を達成するために、“就業規則”により労働条件を決定するわけです。


ところで、雇用契約というものは、労使のどちらか一方が解約を申しいれない限りは継続的関係であるために、企業の経済的あるいは、運営的な要因、(例えば、景気減退やダンピング競争による利益減少、経営失敗、等)によりやむを得ずに、従業員の労働条件を低下させざるを得なくなる場合が生じることがありえるわけです。

この場合、従業員を自由に解雇できるのであれば、低下させた労働条件に応じない労働条件に応じない従業員を解雇し、低下後の労働条件を受け入れる従業員との雇用契約を継続することで、全体の人件費の削減が可能になります。

ただし、日本の法律では解雇権濫用法理という考え方が明文化され、確立しており、(労働契約法16条)むやみに解雇権を振り回すことはできないとされております。

よって、雇用関係の合理的な維持を図り、集団的、統一的に労働条件を変更するという考え方の元、就業規則の不利益変更の法的考え方を知る必要があるわけです。

この就業規則を変更することにより、労働条件を低下させた有名な判例として、“秋北バス事件(最高裁大法廷昭43、12、25)”があります。

この裁判での最高裁の考え方は『新たな就業規則の作成もしくは変更によって、労働者の既得権を奪い、不利益な労働条件を一方的に課すことは許されないが、労働条件の統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、変更された箇所、条文が合理的なものである限り、
不利益変更は有効である。』と判示されました。

変更の合理性として、その後裁判所は“大曲農協事件”(最高裁三小 昭63、2,16)において、『変更された規則の条項が合理的かどうかは、その就業規則の変更が“必要に迫られていること”と、“内容がどの程度の変更なのか”の両面から判断し、変更された条項の法的な規範性を是認できるだけの合意性を有するかどうかである。』
とし、特に賃金、退職金等の重要な労働条件に関しては“高度の必要性に基づいた合理的な内容”であることと、判示されました。

以後この考え方は“就業規則の不利益変更法理”として、その後の判決にも引用され、労働契約法の9条、10条にも明文化されています。

では、何が、具体的に高度の必要性で、何が合理的なのか?

ということが疑問になってくると思います。

新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと、“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。

当事務所では、様々なケースを想定して就業規則の変更のコンサルティングを行っております。

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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