幼稚園、保育所、認定こども園が抱える『いまそこにある労務問題』

人手不足…

 メンタルヘルス不調…

  キツい労働に報われない処遇…

 保育所、幼稚園、認定こども園が抱える「いまそこにある労務問題」とは?

 

慢性的な保育士不足問題

 『待機児童問題』という言葉がマスコミ媒体を騒がせて久しいですが、今もこの問題は終結されたわけではなく、大都市近郊を中心に待機児童率は高水準で推移しています。これは単純に施設数が足りないという問題だけではなく、保育士の人材不足問題にも絡んできます。

 施設を運営するためには、定員に沿った保育士の確保が必須でありますが、保育士資格を保有していても、低水準の賃金という先入観から保育士という仕事を選ばない“ペーパー保育士”が潜在的に多く存在したり、勤めていてもキツい割には金銭的に報われない仕事であるため、長期勤続したところで『素敵な将来像』がイメージできずに保育業界から他業種に早期に『転職』するケースもよく耳にする話です。

 また、昨今は企業主導型保育事業所も含む認可外の保育施設も増えてきていることから、慢性的に補足している現職保育士の全体のパイを多くの施設で奪い合う状況にならざるを得ない状況が続いています。

 

  平成30年度の全国平均の有効求人倍率:保育士  3.64倍

               (**全職種平均 1.63倍)

 

保育業界・幼児教育業界に潜む労務管理の落とし穴

 では、どうして上記のように保育士という仕事が『素敵な将来像』が描けずに、業界を離れる人が後を絶たない、あるいは資格保有者であってもあえて保育士の仕事をあえて選ばないのでしょうか?

 

大まかに以下の4つの労務絡みの落とし穴が原因ではないかと思います。

**幼稚園教諭も小学校就学前の幼い児童に接する業務という保育士との類似点から同様の懸案が存在すると推察します。

 

落とし穴ーその1

  メンタル不調のリスクが顕在する職場環境

 これは、保育士だけではなく、幼稚園教諭にも言えることなのですが、『危険なこと』『危ないこと』の認識力・判断力が備わっていない、乳幼児、園児の命を預かるといったストレス、緊張感ももちろんありますが、それに加えてこの仕事でメンタル不調の主な温床と考えられるのはクラス単位の担任制です。この『担任制』により向こう1年間は密に接する人間が固定してしまうということになります(児童、保護者、同僚etc.)。

 密に接する人間関係が良好であれば、何の問題もないのですが、保護者や同僚、上司、学年主任等と1年間過ごす固定メンバーとの相性が悪ければ、教諭、保育士のメンタルヘルスに影響が出やすい職場になってしまう可能性は総じて高いと言えるでしょう。現にこういった環境でメンタル不調に陥り、休職や退職を余儀なくされるケースも少なからず見受けられます。

 人間関係が必ずしも良好とは限らない環境下で職場定着率を改善するためには、職員たちのハラスメント防止の意識の植え付けと同時に、職員たち、教諭たちの『心を鍛える』という試みの必要性も生じてくるのではないかと思います。

 

落とし穴ーその2

 仕事の守備範囲が不明瞭

  保育所、幼稚園、認定こども園は小学校就学前の乳幼児のための福祉機関、教育機関という似たような側面が持ちながらも、それぞれで管轄する国の機関や管掌する法律が異なっています。

 保育所は厚生労働省の管轄で、児童福祉法という法律に管掌され、幼稚園は文科省管轄で学校教育法に規定されています。また認定こども園については内閣府の管轄で認定こども園法という法律が根拠となります。

 その各法律の中で、それら施設に勤める『保育士』『幼稚園教諭』の求められる職業像が法律あるいは告示等でに落とし込まれているのですが、それら告示等を読み込んでも各々の職域、守備範囲が非常にあいまいな記載となっています。

 例えば、厚生労働省告示である『保育所保育指針』では保育士に求める職域、守備範囲として『入所する子どもの最善の利益を考慮』『家庭、地域の様々な社会資源との連携を図り』『その職責を遂行するための専門性の向上に絶えず努めなければならない』等の極めてあいまい、不明瞭な表現に終始しており、保育士が提供する労働には『ゴールが見えない』『どこまでやっても限界を満たさない』というように受け取れます。

 こういった表現は受け取り方によっては『身を粉にしてでも子供たちのために』というようにも解釈できるわけで、その精神は立派といわざるを得ません。しかしながら、片や労務上のリスクとという点で捉えると過度に各施設内、園内でこのような精神が『さも当然』という雰囲気が広がってしまうと、保育士や幼稚園教諭の長時間労働を助長するリスクやメンタルヘルス不調のリスクと常に隣り合わせの職場ということになってしまうわけです。

 

 落とし穴ーその3

  明確なキャリア構築を描きにくい

  幼稚園教諭、保育士といった職種は、複数施設を運営する大規模な学校法人、社会福祉法人等に勤務する場合を除き、一般的には勤務地がほぼ1つの施設(園)での従事に限定され、引っ越しを伴うような転勤したり、異動したりということはレアケースかと思います。

 職員のキャリア構築という観点で見た場合、各々の成長段階に応じ、将来に向けた明確なキャリアパスを構築していきたいところですが、一つの仕事での従事ということに限定されてしまうと職位(ポジション)も同様に限定され、『担任』『(学年)主任』『園長(施設長)』のたった3つの階層のみとなってしまいます。

 この階層の少なさが原因で経営側も職員に対し、成長段階に応じたキャリアパスを明示しにくいのではないのかと推察します。

 こういったことがまだ比較的キャリアの浅い職員や入職間もない若い保育士や幼稚園教諭の長期勤務へのモチベーションを削ぐ一つの要因、つまり『素敵な将来像』がイメージできないということでの離職理由の一つとなってしまいます。

 ポジションや階層がさほど多くないにしろ、職員たちが自己の成長過程や将来をイメージできるようにキャリアパス制度(資格等級制度等)は是非とも構築しておきたいところです。

 

 落とし穴ーその4

  生産性を上げにくい業務内容

  保育士、幼稚園教諭の主たる業務は、コミュニケーション能力が途上中の小さな子供と接するという人対人の仕事であるがゆえにAI化で簡略できるものではありません。少し古い資料(平成22年)ではありますが厚生労働省が開示している『保育士に関する関係資料』で保育士が1日の業務でどのような業務が発生し、各々の業務でどれくらいの時間がかかっているのかということがわかります。

 この資料を見ていくと、ただでさえ大変な子どもと直に接する業務(室内遊び、食事介助、就寝援助等)以外にも間接的な業務も結構頻出し、しかも時間的にも手間のかかる仕事として発生しているのがわかります。

 以下の統計をご覧いただければ、

  ①AI化に馴染まない業務がほとんどであること

  ②生産性を上げていくにはかなりの創意工夫が求められる

  この2点がお分かりになると思います。

 

 こういった業務内容が長時間労働の温床となってしまい(特に保育業界での)短期で離職する原因の1つとなってくるものと思われます。

 国策としての「働き方改革」が昨今取沙汰されますが、安心して働ける職場環境の整備のためにも、職員たちにタイムマネージメントの重要さを認識してもらい、生産性を上げていく意識改革も必要かと思われます。

 例えば、以下の表でもお分かりいただけるように、保育所で最も生産性を阻害する要因の一つは間接業務にある『会議』です。この『会議』についても、職員に『ファシリテーション=仕切り』の技術が身につけば、短時間で効率的な会議の運営が可能になります。

 子どもと直接接しない間接業務とその頻度

  業務 1勤務当たりの平均業務時間(分) 1勤務当たりの発生率
会議・記録・報告 53 100%
連絡帳 14  93%
 掃除  10 100% 
 保育計画策定・準備・調整  9 100%
保育記録の調整・保存  61%

子どもと直に接する主たる業務とその頻度)

業務 1勤務当たりの平均業務時間(分) 1勤務当たりの発生率
室内遊び 63 100%
表現活動への支援 38  98%
スキンシップ 32  78%
食事摂取の援助 29 100%
挨拶・日常会話 26  99%
就寝の援助 25  77%

引用元:厚生労働省「保育士等に関する関係資料」

「新たな次世代育成のための包括的・一元的な制度」設計に向けたタイムステディ調査

    (みずほ情報総研)

 

上記の4つの『落とし穴』を埋めるために…。

 当事務所はその解決策を用意しています。

 私たち社労士は労務リスクを回避する予防士です。もちろん就業規則等の改訂等で顕在的な労務リスクの防御のアドバイスも行っていきます。しかしながら就業規則だけで4つの落とし穴をすべて埋めていくことは難しいのではと思われます。

 なぜなら『メンタルヘルス不調対策の職場環境の整備』『生産性向上の意識づけ』『ゴールの設定』『キャリア構築』などは、より積極的に職員さんに意識の植え付けをしていかないとなかなか解決しにくいのではないでしょうか。

 当事務所では職員さんたちへの意識付けのための『各種研修制度』のご提供や職員さんたちのモチベーションアップのための『キャリア構築制度』のご提案等、より積極的な働きかけで保育士さん、幼稚園教諭の先生方に『より素敵な将来像を描ける』職場環境の整備にお力添え致します。

幼稚園・保育所ートラブルを防ぐ就業規則作成のポイント!

幼児教育業界、保育業界における就業規則の重要性

 これはどの業界でも例外なく言えることなのですが、就業規則の作成し、従業員に対し周知することにより、労務トラブルのリスクを軽減、回避することができます。

 幼稚園、保育業界はその労務環境の特殊性もあり、要点を炙り出した策を講じることにより、就業規則によるディフェンス効果は一層高まります。労使トラブルのリスク回避はもちろんですが、更に付け加えると、特に保育業界では市区町村等労基署以外の行政機関からの定期監査で就業規則の提示を求められることが多く『法律上作成義務があるにも関わらず作成していない』『作っていても法令違反が散見される』ということになると、労基署の監査レベルでは期日を設けて是正を求める『行政指導』で済むものが、市区町村の監査では事業者名の公表や認可の取り消し等厳しい措置を採る自治体もあるようです。

 それはそのまま、近隣に住む住人、つまり各園にとっての今後利用してもらう可能性のある将来の見込み客に対する風評被害にもつながることになりますので、そういったことも含めて就業規則は『きちんとしたもの』を導入しておきたいものです。

 こちらのコラムでは、幼稚園、認定こども園、保育園の就業規則作成・変更に際してのチェックポイントを10項目に絞って解説していきます。

 

 Point1  労働条件変更の担保がされてますか?

 (特に)保育業は、事業者、法人の意向に関わらず、国や地方行政の意向や制度の変化が従業員の労働条件に影響を及ぼす可能性のある業種でもあります。加えて、今般のコロナ禍の教訓としてわかるように、保育業界、幼児教育業界ともに社会情勢の変化が従業員の労働条件に影響を及ぼすことも想定しておかなければなりません。社会情勢の変化、あるいは行政側の制度変更に則した労働条件の変更(給与の不利益変更も含めて)が担保されている条文が入っているかは、是非チェックしておきたい項目です。

 Point2  近隣住民等『外部の視線』を意識した服務規程が設けられてますか?

  これは相対的に若い職員が多いとされる保育業が特に留意する必要があるのですが、通勤時における外部からの視線を意識づける服務規律は必要かと思います。「仕事上の装い」と「私生活でのおしゃれ」にけじめをつける意味でも服装、化粧、髪型等の身だしなみも奇抜と映らないように律するような条文も必要でしょう。また保護者や近隣住民の目につく場所での喫煙も園へのクレーム対象になりかねません。一定のルールは設けておくべきでしょう。

 Point3  必要かつ充分な業務命令権が確保されていますか?

  危険回避能力がまだ備わってなく、予測のつかない行動をとる乳幼児と接するという業務である以上、突発的に起こる緊急事態の際の労務対応は想定しておくべきです。加えて、保育園は国や行政機関からの配置基準を満たした一定の職員数以上の勤務体制を引くことを求められますので、急な職員の欠員時の対応も想定しなければなりません。そういった緊急時に備えるには時間外労働、休日労働、振替休日、他施設へのヘルプ勤務等、施設側が適切な業務命令が出せる根拠条文が記載されているか一度チェックしてみてください。

 Point4  休憩時間の与え方…『手待ち時間』と言われないように。

  法律上の休憩の概念というのは『労務からの完全な開放』ということになります。よって、労務からの完全に開放された状態とはいいがたいのであれば、『手待ち時間』ということで労働時間にカウントされてしまいます。保育園、幼稚園の休憩は一般的に園児の給食時間中、あるいは園児の午睡中に交代で休憩を取らせることが多いと思いますが、“建前上は”休憩時間であったとしても、何か起これば対応しなくてはならない状況であれば、『休憩』ではなく『手待ち』と判断されるリスクもあります。適切な就業規則の条文表現と休憩時間の運用で『手待ち』と判断されるリスクを減らしましょう。

 Point5  ヒヤリ・ハットやその防止策の共有

  幼い命を預かるという業務、しかも『危険なこと』の認識力がまだ備わっていない乳幼児と接する仕事ということを考えた場合、日常業務で『ヒヤリとすること』『ハッとすること』もそれなりに多いはずです。たまたま大事故につながらなかっただけで、『ヒヤリ・ハット』の段階で何か施設として対策を打たなければ、今後賠償が発生するような乳幼児の死傷事故につながるリスクも顕在しているはず。『命を守る』という職務上の使命感が職員のストレス原因の一つになっていると思えますが、業務上起こりえる『ヒヤリ・ハット』とその防止策が職員全員が共有できれば、精神的負担もかなり軽減できます。就業規則はこういった場面では職員の教育ツールとしての効果も発揮するのです。

 Point6  ハラスメント規程の整備

 2019年12月に静岡県内の私立の認可保育所で園長らのハラスメントが原因で現場の保育士たちが一斉に退職したという事件が大きく報道されました。こういったことが起こると、現場の戦力ダウンや園児離れもさることながら、風評面でのダメージも計り知れません。とかく、幼稚園、保育所は『先輩後輩間の暗黙の不文律』や『序列重視のしきたり』なんかが存在するケースもよく見受けられますので、当方の私見ではハラスメントが起こりやすい環境であると感じております。また、『パワハラ防止』については*義務化されることを鑑みて、現行のハラスメント規程がきちんと法令に準拠したものになっているかを一度チェックされることをお勧めいたします。施設に余裕があれば、年1回程度は主任、園長等の上級職員向けにハラスメント研修を行うことができれば、更なるリスク回避策になるでしょう。

 *令和2年6月より大企業には既に義務化されており、中小事業者には令和4年3月末までは努力義務とされ、その後義務化される予定となっています。

  『パワハラ防止法』の詳しい解説ページはこちらから

 Point7  衛生面の規程ー感染症対策

 免疫機構がまだ十分に発達していない保育園児、幼稚園児を預かる立場としては、感染症対策はきちんと条文化しておきたいところです。また、新型コロナウィルス感染症が世の中の脅威となっている現在は『With コロナ、After コロナ対策』としても非常に重要な部分です。園内における集団感染、集団食中毒はもちろんのこと、職員自身もしくは同居の家族、近隣の住民等が何らかの感染症に感染した場合を想定し、施設側が必要な措置を講じる命令権を担保しておく必要があります。さらに給食業者に外部委託することなく、調理・調乳の専門職員を施設が直接雇用しているのであれば、検便に何らかの陽性反応が出た場合のその職員の処遇等も併せて明文化しておくべきでしょう。

 Point8  職場にコスト意識の定着を!

  幼児教育を担う教育者として、また1社会人としても、モノを大切にする行為は、職員自らが模範を示すことで、入園している乳幼児にもよきお手本になるはずです。加えて、認可保育所等はサービスを提供すれば提供するほど、底なしに事業が潤うというビジネスモデルではなく、児童の定員をマックスまで受け入れれば、それ以上の収入は見込めないという施設がほとんどだと思われます。職場の消耗品や文房具等を大切に使う等、コスト意識を定着させるための服務規程は入れておくべきでしょう。経営上の負担を職員全員でカバーするという意識付けを就業規則で示しましょう。

 Point9  有給取得ーきちんと業務が回るように運用されてますか?

 有給休暇の取得ルールについては、職員側の時季指定権(職員が休暇取得したい日、期間を指定できる権利)等の法令を尊重したうえで、使用者が施設の業務がきちんと回るように主導権を持って運用しなければなりません。特に配置職員数が国によって定められている認可保育所は、それらのバランスを取って休暇の運用を行うことは非常に悩ましい部分ではあると思います。職員本人や養育する子供の体調不良など、急な休暇申請がやむを得ないものは別にして、職員配置に極力影響が出ないような休暇取得のルールを就業規則に明記しておくことは非常に重要です。

 幼稚園については、園児の長い夏休み等がある一方で行事が目白押しの学期もあったり、繁忙期、閑散期がはっきり分かれる業種だと思われます。閑散期に有給取得を推奨したり、場合によっては計画的付与を用いて、繁忙期の業務運営に支障のない体制を整えておきたいところです。

 Point10  入職、退職時のルールの設定および強化

 ユニフォーム、名札等の貸与物は、入退職時のルールをしっかり設けないと、貸与物の返還がないまま、あるいは紛失した状態で退職されてしまうということも頻繁に起こります。それ以外でも、入職時において自動車、単車、自転車通勤を許可するのであれば、通勤途上事故のリスクを見越して一定の許可基準を設ける等のルール決めをしておいた方が施設側のリスク軽減につながります。有資格者を証明する証書も入職時きちんと提出を命じる規定を明文化しておくべきでしょう。また、業務上知りえた情報や園児、保護者等の個人情報の取扱いについても入職時、退職時にルール決めをしておかなければ、漏洩、持ち出しの危険も考えられます。入退職時の一定の取り決めはしっかり行っておくことが後々のトラブル防止に繋がります。

 いかがでしょうか?要点を10項目に絞って解説させていただきましたが、幼稚園、保育園の労務管理の留意点については、まだ書き足りないこともたくさんあります。

 当事務所では幼稚園、保育園、認定こども園の就業規則の作成・改訂をお力添えさせていただいております。上記10項目プラスアルファの労務リスクを就業規則の強化で回避しましょう。

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幼稚園、保育所の労働時間管理、勤怠体系の考え方

幼稚園、保育園、認定こども園の労働時間の設定方法

 ①法令適合

   ②柔軟対応(急なシフト変更時)

      ③人件費的観点(残業手当対策) 

                の三面からの考察

 

 こちらの記事では、幼稚園、保育所の適正な労働時間の設定の考え方を解説していきたいと思います。貴園の業務形態にふさわしい労働時間の設定のヒントとなれば幸いです。

 

 保育所の勤怠体系ー基本的な考え方

 保育所は大まかに『認可保育所』『認可外保育所(企業主導型保育事業含む)』の2つに分かれます。両者の中でも運営上、行政からの締め付けが厳しいのは『認可保育所』のほうになります。認可保育所はサービスの提供日数、時間数や職員配置基準に至るまでかなり厳しく運営基準が設けられ、保育所側の都合によって稼働日数、時間、配置職員数が減らせない等の環境下にあります。そういった環境下においての各職員のシフト管理ということになると、

      ①法令に適合すること

      ②柔軟対応(急なシフト変更時)

    を主に重視させながら、マンパワー的に余裕があれば、

     ③人件費的な面  及び

     ④職員のワークライフバランス的な側面

       を見ていくという優先順位で勤務形態を考えるということになります。

 法令に適合するとは?)

 労働基準法上の法定労働時間は1日8時間以内、1週間40時間以内(労働基準法32条)と決まっています。その例外として、一定期間内における週の平均労働時間が40時間以内という条件下で繁忙な日や週にそれぞれ、8時間超、40時間超の労働時間を設定することができます。いわゆる『変形労働時間制』ですね。

 認可保育所や幼稚園では原則週6日稼働している施設がほとんどだと思われますが、『担任制』を引いている関係で、まだまだ正規雇用の職員に対しては週休2日の導入に踏み切れない事業所も多いかと思います。週6日勤務の場合の以下の2つの例をご覧になってください。

 

 事例1)

曜日 合計
労働時間 休日 7h 7h 7h 7h 7h 7h 42h>40h

 いわゆる『9時〜5時(休憩1時間)週6勤務』ですが、1週間の合計の勤務時間が40時間を超えてしまっているので、法令に適合しません。何らかの手続きを踏まないと法違反となり労基署からの指導、罰則付与の対象となります。

 

  事例2)

曜日 合計
労働時間 休日 7h 7h 7h 7h 7h 5h 40h
 

 こちらは法令に適合した例です。基本的には週6日勤務ですが、閑散な開所曜日の所定労働時間を若干縮小し、週所定の労働時間を法定労働時間である40時間に収まるように調整したケースです。ただ、開所時間が長く、深夜の開所もあり得る認可保育所では特定の曜日だけ勤務時間を短縮することは難しいかもしれません。その場合は職員配置基準を満たし、かつ、各スタッフの労働時間が週40時間を上回らないようにシフト管理を工夫する必要があります。

 

 変形労働時間制の活用)

 業務の都合上どうしても事例1)のような勤務体系を敷かなければならない場合は、法令に適合させるため、いわゆる『変形労働時間制』を導入する必要が生じます。

 変形労働時間制とは、前述した通り、任意の期間を設け、その期間中の週平均の労働時間を40時間以内とすることを条件に、一定手続きの下で、繁忙な日や週にはそれぞれ8時間超え、40時間超えの労働時間の設定を可能とする方法です。

 保育所、幼稚園で検討対象となる変形労働時間制には1カ月以下の期間で調整する方法(1カ月単位変形)と、1年以下の期間で調整する方法(1年単位変形)の2種類がありますが、導入に当たっては手続きの煩雑さや急なシフト変更への柔軟度など色んな側面から検討する必要があります。以下の比較表をご参考になさってください。

 

変形労働時間制導入のメリット・デメリット)

  手続き・メンテナンスの煩雑さ 繁閑に応じたメリハリのある働き方 急なシフト変更時の柔軟性 人件費的観点(残業の調整弁的役割) 労働時間・休日の制約 職員のワークライフバランスの観点 対象者の制限
変形労働時間制を導入しない場合 ×   ×
× 
きつい(1日8h、1週40h、原則1週1休を厳守)
×  
1カ月単位変形  さほど煩雑ではない
 
× 但し、全否定されるわけではない*注釈)参照 
〇 緩い(1日、1週の労働時間は上限なし)
 (1勤務日の所定労働時間を長くとることで週休3日制も可能) 妊産婦の適用には一定の制限あり。年少者は適用除外
1年単位変形 × 手続き、メンテナンスとも煩雑 × 但し、全否定されるわけではない
*注釈)参照 
△ 一定の制約は受けるが自由度はある 〇 (1勤務日の所定労働時間を長くとることで週休3日制も可能)  妊産婦の適用には一定の制限あり。年少者は適用除外
 

*注釈)変形労働時間制は使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することがないことを前提にした制度であるので原則的には、単なる業務の繁閑等を理由として休日振替は行えない。ただし、労働日の特定時には予期しない事情が生じた場合における休日振替も認めない趣旨ではなく、そういった場合は一定の条件の下で休日振替が認められる(行政通達:平成一一・三・三一 基発一六八号)

 ⇒変形労働時間制において、急なシフト変更時の対応が全くNGというわけではない。

 

 上記の表を参照し、どの要素を重視した労働時間の設計を行うのかは、各施設の抱える悩みや事情を考慮したうえで検討しなければなりません。例えば、慢性的にマンパワー不足で職員配置をカツカツで回しているような認可保育所では、何よりも『急なシフト変更時の柔軟性』を重視して検討しなければならないでしょうし、逆に認可外保育所でマンパワー的に比較的余裕のある施設であれば、『人件費的な視点』やリテンション策(離職防止策)として、スタッフのワークライフバランスを考慮にした設計も可能になるでしょう。

 変形労働時間制の導入の有無や、導入するとしたら、どの変形期間を採用するのかは各施設の現状を考慮して検討する必要があります。

 ただし、これは私見ですがシフトの柔軟対応に難ありということで、変形労働時間制の現場での運用を見送った施設であっても、『1カ月単位変形制』については使用者裁量で導入できる根拠は設けておいた方が後々(退職直前のトラブルが起こった時等)何かと便利かと思います。

 

幼稚園の勤務体系ー繁閑のメリハリを活用した設計に

 幼稚園については、前述の保育所ほどは行政機関からの厳格な労務管理を要求されませんので、法令に適合している限り、労働時間の設計にはある程度の自由度はあるといえるでしょう。

 幼稚園の場合は、小中学校と同様に土曜日の園児の在園時間は『半ドン』の事業所が多いと思いますので、上記の事例2のケースのように、土曜日の所定労働時間を少し削ることで、法令に適合する設計に合わせることも比較的容易かと思われます。

 園内の年中業務を見渡すと遠足や運動会等の園内行事が目白押しの学期がある一方で、長い夏季休暇等で直接園児と接する業務からはしばらく遠ざかる期間もあり、非常に繁忙、閑散の差がある業務だと思います。

 もし、労働組合からの反対など導入への障壁がないのであれば、当事務所としては幼稚園の勤務体系として『1年単位の変形労働時間制の採用』を推奨します。幼児教育の現場は1年間という期間の中で繁忙期、閑散期がわりとはっきりと区分けできるので、繁忙閑散のメリハリのある働き方のできる「1年単位変形制」がフィットします。

 幼稚園が『1年単位の変形労働時間制』を導入するメリットは上記の表にも纏めていますが、改めて2点に絞り解説したいと思います。

 ①人件費(残業代)対策

 1年単位変形制は1日8時間、1週40時間にとらわれずに、繁忙期には多めの所定労働時間を割り当てることが可能(ただし一定の制限あり)となります。その分、閑散期で調整し、年間の週平均の所定労働時間が40時間以下であれば、割増賃金は発生しない制度です。繁忙期、閑散期のメリハリのある働き方がそのまま残業代(割増賃金)の調整弁として機能する便利な制度です。

 ②スタッフのリテンション策(離職防止策)

 「1年単位変形労働時間制」はうまく運用すれば、週休3日制の実現も可能な制度です。もちろん、クラス担任制であり担任として業務に穴は空けられない事情も理解しますし、また園内行事が立て込む繁忙期には休日を増やすことは難しいでしょう。ですが園児が登園しない夏季休暇中等の閑散期には教諭たちのワークライフバランスを検討することも可能になるのではないでしょうか。繁忙閑散のメリハリを享受することで、幼稚園教諭たちの仕事と私生活の双方の充実が可能となり、こういった職場環境の提供が離職率の改善につながるケースとなりえます。

 

 保育所、幼稚園の労働時間設定の考え方を解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?労務管理において、各々の施設にどのような悩みがあり、どこに重きを置くかということで、労働時間の設定手法も変わってくるということがご理解いただけたならば幸いです。

 

 当事務所では労働時間、休日、休暇の設定・改善のコンサルティングを含んだ、保育所、幼稚園の業務体系にマッチした就業規則の導入をご提案させていただきます。

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処遇改善等加算を有効活用!幼稚園、保育所の賃金制度、給与テーブル設計手法

幼稚園、認定こども園、保育所の賃金制度の設計の勘所について

 平成30年度調査の厚生労働省の公式データ(賃金構造基本統計調査)によると幼稚園教諭、保育士の平均給与は全職種平均よりも3割程度下回っている事実が浮き彫りとなっています。

   年収の全国平均

      幼稚園教諭:360万円

        保育士:356万円

      (全職種の平均:560万円)

 

 こういう事実が有資格者たちの『保育士離れ』の一因となっていると思われます。限られた人件費原資の範中で幼稚園教諭、保育スタッフたちのモチベーション維持をどのようにしてやり繰りするのかを考えていかなくてはなりません。

 加えて今後の少子高齢化の影響で学卒者、有資格者が減少することが確実視されます。就活生たちに我が園を選んでもらうため、また既存の職員たちのリテンション策(引き留め策)としての賃金制度の設計を戦略的に考えていかないといけない段階にきているのではないでしょうか。

 こちらでは、幼稚園、認定こども園、保育園の賃金制度、給与テーブルの設計の基本的な考え方を解説していきます。貴園の賃金制度構築の一助となれば幸いです

 

認可保育所の賃金設計の考え方

 認可保育所の経営資源は国や地方自治体からの公的な運営支援金や拠出金にほぼ依存せざるをえない法人様がほとんどではないでしょうか。また人件費原資に目を向けても『処遇改善等加算』などの公的資金に強く依存せざるを得ない保育所が大半かと思います。

 こういった事情を鑑みた場合、保育所、特に認可保育所のケースでは『使える賃金制度』として機能させるためには、行政から支給される『処遇改善等加算』の獲得を前提として、その支給の意図に沿った形でかつ、支給される人件費原資の額を見込んでの制度構築が求められます。

 ではどのように処遇改善等加算と賃金制度をリンクさせていけばよいのでしょうか?以下の2つの考え方で見ていきます。

 

 1)獲得原資を合理的な改善用途として運用できる賃金制度の構築

 保育事業者を対象とした処遇改善等加算は大まかの分類すると加算Ⅰと加算Ⅱの2種類、これらをさらに細かく階層化すると、加算Ⅰが3層、加算Ⅱが2層と計5階層の成り立ちとなっています。

 加算Ⅰの支給目的は施設(組織)の取り組みとしてスタッフ全体の給与の底上げということで、

  ①ベースアップを含んだ定期昇給原資(基礎分、公務員・民間格差是正分)

  ②組織全体の賃金水準の改善として(賃金改善要件分)

  ③組織としての職員のキャリア構築体系の整備(キャリアパス要件)

   の計3層の構造となっています。

 それに対して加算Ⅱの支給目的はリーダー職を含む中堅職のスタッフに限定して、賃金水準の引き上げを図り職場定着を安定されることを意図する支援金となり

  ④概ね3年以上の経験年数を持つ職務別分野リーダー対象

  ⑤概ね7年以上の経験年数を持つ副主任保育士、専門リーダー対象

  の計2層の構造になっています。

よって、これら処遇改善等加算ⅠおよびⅡの計5つの階層ごとのそれぞれの支給目的、支給方法にリンクした形で、かつ見込まれる人件費原資に見合った形での賃金設計が望まれます

 またこれら処遇改善等加算で支給された人件費原資には、スタッフの支給方法(還元方法)にも階層ごとに一定の制限がかかるために、そういった制限を踏まえたうえでの昇給ルールや各種手当や賞与等の設定が不可欠となります。以下に手当設定の考え方の一例をあげておきます。

 例)処遇改善等加算Ⅱの原資を見越して役職手当を設定する場合

 組織内での役職手当の支給対象者と処遇改善加算Ⅱの受給要件を合わせる必要がある。

 よって単純に組織内での位置付けだけではなく、3年以上、7年以上の経験年数や各職務分野での研修の修了の有無等により役職手当の支給要件を検討しなければならない。

 

 2)獲得要件に見合う賃金制度の構築

 さらに言えば、処遇改善等加算(Ⅰ、Ⅱの双方)の獲得要件を満たすように賃金制度を整備する必要もあろうかと思います。

 主な段階での加算の獲得条件を以下で見ていきます

・処遇改善加算Ⅰの3層目である“キャリアパス要件”を獲得するためには『職位、職責または職務内容に応じた賃金体系』の構築を求められます。それに加え『研修の機会の付与』や『能力評価の実施』等も行わなければなりません。

・処遇改善加算Ⅱの4層目(職務分野別リーダー)、5層目(副主任保育士、はそれぞれ、一定のキャリアや研修を積んだ中堅リーダー層の職員の人数に応じ支給額が決定されるので、支給の対象職員がその職位に該当するということが明確に区分けされている必要があります。

 

 つまり、これらの獲得条件から読み取れる行政からのメッセージとしては、認可保育所では『職位や役割が明確に区分けされる資格等級制度を構築し、それぞれの職位にふさわしい処遇をすることが望ましい』と察することができます。

 

 上記の解説を踏まえて、以下の表に行政から支援される処遇改善等加算に賃金制度をどのようにリンクさせていけばよいかということをまとめてみました。

加算ⅠorⅡ 階層 内容 処遇改善の対象 賃金制度における課題・検討ポイント
処遇改善加算Ⅰ 第1層 基礎分・人勧(公務員と民間の格差是正)分 組織・施設の全体の処遇の底上げ ・基本給の昇給ピッチ
・在職年数に沿ったモデル賃金カーブ


第2層 賃金改善分 ・基本給の昇給ピッチ
モデル賃金カーブ
・賞与設計
第3層 キャリアパス要件分 資格等級制度
職位もしくは役割に応じた手当の設計
処遇改善加算Ⅱ 第4層 職務分野別リーダー 施設内の特定の職位の者のみが対象 資格等級制度
職位に応じた手当の設計
第5層 副主任保育士・専門リーダー

 保育業、特に認可保育所については上記の表における『課題・検討ポイント』に沿った賃金制度を考えていくことが今後の行政からの支援金の“獲得”および“活用”のためには重要になってくるかと思われます。

 *上記で取り上げた処遇改善等加算は当コラム執筆時点(令和2年6月)での全国共通の保育業向け支援金制度の概念に基づき解説記事を記載しております。各地方自治体で独自で支援金の支給基準を設けているケースもございますのでそちらにつきましては都度ご確認ください。

 

 当事務所では、いく通りかの賃金制度設計のコンサルティング手法を持っており、都度経営者様からのご要望やご予算に合わせたやり方をご提案させていただいております。ここでご紹介する、給与設計ソフトを使った賃金設計はキャリアや職務と給与をうまく連動させるという意味においては認可保育所の賃金設計には非常に相性がよいかと思います。ぜひ一度ご覧ください。

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幼稚園・認定こども園、認可外保育所の賃金設計について

 処遇改善等加算として公的機関からの支援金支給の対象となるのは、上記で説明させていただいた認可保育所だけではなく、幼稚園、認定こども園、(認可外保育所のうち)企業主導型保育施設も支給の対象となります。よって、保育所や認定こども園、企業主導型保育施設の中でも、人件費予算を公的な給付に依存するようなケースであれば、上記で解説させていただいた『認可保育所の賃金設計の考え方』を踏襲いただければいいと思います。

 同一法人で認可保育施設、認可外保育施設、幼稚園、認定こども園等の形態が異なる施設を運営しているケースもあろうかとおもいます。そのような場合は『処遇改善等加算』を活用した賃金制度の運用をより慎重に進める必要があります。というのは、施設形態により受給できる施設、できない施設が出てきたり、都道府県をまたがって施設運営するケースでは自治体独自の追加加算の対象になる施設も出てくるので、保育士や幼稚園教諭としてキャリアや能力が同程度の職員であっても勤める施設によっては処遇の格差が出てくるケースも考えられます。そういった環境下でどのように公正公平な処遇を行っていくかということも課題になってこようかと思われます。

 

 幼稚園、認定こども園での賃金設計でもう一つ課題になってくる事案が、リテンション策(離職防止策、引き留め策)としての戦略的な設計です。このページの最初の解説記事(⇒幼稚園、保育所、認定こども園が抱える『いまそこにある労務労務問題』)でも述べた通り、保育業界、幼児教育業界は一般企業などに比べて職層階級が少なく、幼稚園教諭や保育教諭、保育士等がなかなか明確なキャリア構築を描きにくいというのが人材定着を阻害する一つの要因になってきていると思われます。

 『我が園に長期勤続すれば、これだけ成長できて、こんな素敵な未来が待っている!!』というメッセージを若手スタッフや就活中の学生たちにアピールできるような賃金制度に仕上げていきたいものです。

 加えて処遇改善等加算の獲得要件にもある通り、幼稚園教諭、保育教諭のキャリア形成の道しるべをしっかり示すという観点からの賃金制度に作り上げていく必要があろうかと思います。

 幼稚園、認定こども園の賃金設計には、スタッフ一人一人の成長段階がしっかりと把握でき、仕事や役割と処遇がきちんとリンクするような『資格等級制度』を用いて処遇することも選択肢の一つとなってくるでしょう。

 

 当事務所では『資格等級制度』を活用し、組織の中での個々の役割や成長度合いを処遇に反映させ、かつ法人・企業の業績に応じた弾力性のある給与制度も含む『人を育てる人事制度』の構築をお手伝いをさせていただいております。

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 当事務所では、保育所、幼稚園、認定こども園の『スタッフのやる気を高める賃金制度』の構築も含め、採用支援、定着支援等、人事労務に関すること全般でお力添えさせていただくことが可能です。

保育士、幼稚園教諭の育成(戦力化)・定着手法

いかに保育士、保育教諭、幼稚園教諭を育成(戦力化)・定着させるか

 前述した通り、幼稚園教諭、保育士の平均的給与は全職種平均の3割程度下回る低水準にあるという統計データも存在するなか、魅力的な金銭的報酬でもってスタッフの定着を図る策を取れるのは、よほど資産状況のよいごく一部の施設や法人に限定されると思います。多くの施設では限られた人件費予算をやり繰りしながら、保育士、保育教諭、幼稚園教諭を“使える人材”として育成し、定着させることに苦慮されているのではないでしょうか。

 こちらのコラムでは、『コンピテンシー』という概念を使った幼稚園教諭、保育士の育成手法と定着(リテンション)策について解説していきます。

 

 行動を改善してスタッフを戦力化し、定着させる!

     −“コンピテンシー”を使った組織活性化手法

 

 『コンピテンシー』とは、人事労務用語で、高い業績を達成する者に共通する“行動様式”のことです。つまり簡単に言い換えると“仕事のできる人の行動”ということになります。

 例えば、野球のピッチャーの投球フォーム(メカニック)を分析していっても、150キロを超えるスピードボールを投げるすごい能力を持った投手たちには一定の共通した動作がそのフォームの中に見られます。

 野球のピッチャーしかり、一流のアスリートには高いパフォーマンスを発揮する源となる、共通した動作、フォームが必ずあるものです。

 こういったアスリート達の共通した動作、フォームも『コンピテンシー』の一つといえます。

 それを幼稚園教諭、保育士という職業に当てはめて考えると、『保護者からの受けがいい先生』『子供たちから慕われる保育士』『同僚の間で評価の高い幼稚園教諭』など、高い業績を上げるスタッフにはそれなりの行動が必ず伴っているはずです。

 そういった『仕事のできる人の行動=コンピテンシー』を抽出し全員で共有し習慣化すれば、『仕事のできる人』が増え、職場が活気づくというのはご理解いただけると思います。

 

 幼稚園や保育所でコンピテンシーを使った育成、教育を行う利点として

 1)保育士や教諭等スタッフ全員の行動の質が上がる

 2)熟練者が持っているノウハウやコツを全員に共有できる

 3)上記1)2)によって、今までに気付かなかった仕事の面白みややりがいに気付く

 

             の3点が挙げられます。

 

 とかく、幼稚園教諭や保育士という仕事はどちらかというと、自らの裁量で仕事をするというよりも、園児や保護者からの頼まれ事に応えたり、上司、先輩からの指示に従って行動する『受け身』の業務が多いのではないでしょうか?そういった『受け身業務』が多い中でもきちんと、自分たちで抽出した行動目標をしっかりと実行することによって、何らかの結果に繋がってくるようになると仕事にも新たな気付きや面白みを感じるようになってきます。

 こうしたスタッフの『行動の改善』により、園児および保護者、近隣住民の皆さんからの支持を増やし、ファン化させる効果があることはもちろんなのですが、幼稚園教諭、保育士のような『受け身業務』の多い職種では上記の利点3)の効果が多く見受けられ、定着率アップ、離職率の改善につながることも案外と多いのです。

 

 幼稚園で作成した幼稚園教諭のコンピテンシーの事例)

  (*現場で作成したものを当方が適宜アレンジを加えて掲載しております。)

 ・お遊戯会の衣装や製作、演出等で先生自身が手掛けるべきものは『これくらいでいいだろう』とある程度で妥協するのではなく、子供たちや保護者の皆さんが喜び感動し、後々まで思い出に残してもらえるくらいを目標に妥協せずに努力を続ける。

 ・みんなと一緒に活動をするのを嫌がる子供がいたときは、参加を無理強いせずに、『みんながやっているのを先生と一緒に見てみようか』『楽しそうだね!』『みんなうまくできたね。〇〇ちゃんもできるかな?』等の声がけを行い、子供が自発的に参加するように促してあげる。

 ・保護者から否定的で嫌味とも受け止められる意見やクレームをもらっても、貴重なご意見と受け止め、素直に聞き入れて改善する。

 ・失敗をしたときは、周りに掛かる迷惑を最小限に食い止めるため、早急かつ簡潔かつ正確に主任、先輩に報告している。

 ・自分が受け持っているクラスだけ他のクラスとの均衡が崩れないように、他のクラス担任の先生の進捗具合を肩を並べて確認し合いながら、クラスの仕事を進めている。  etc.

 『仕事のできる人の行動=コンピテンシー』の抽出手法

 上記のような『仕事のできる人の行動=コンピテンシー』は1日研修(約6時間)の中で参加者全員で議論し合って抽出していく作業を行います。

 また、研修で抽出した『行動=コンピテンシー』を習慣化させるサポートもお手伝いさせていただいております。(3か月集中導入コース)

 当事務所のコンピテンシーの導入サポートはこちらから

  (姉妹サイト:大阪人事コンサルティングセンターにジャンプします。)

 

“コンピテンシー導入がなぜ業績のアップに繋がるのか?”“コンピテンシーと取り入れると定着率がよくなるのはなぜ?” などなど“コンピテンシー”についてもっと詳しく知りたい経営者の皆様にはこちらに解説記事を上げております。

 “コンピテンシー” デキる社員が増殖する教育手法

  (姉妹サイト:大阪人事コンサルティングセンターにジャンプします。)

 

 様々な業種で作成した『仕事のできる人の行動=コンピテンシー』の事例集をご希望される経営者、人事責任者の皆様にご提供しております。ぜひご参考にどうぞ。

 このコラムでご紹介した『コンピテンシー』以外にも、当事務所では、幼稚園、保育所、認定こども園の労務トラブル予防や人材の戦力化、モチベーションアップ術、定着率アップの手法等に幅広い引き出しを持ち、経営者の皆様、園長先生たちの『人についてのお悩み』を解決に導きます。

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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