就業規則変更により、労働条件を引き下げるに際して、どうのようなやり方が合理性があって、どのようなやり方が合理性がないのか?
どのように事を運べば合理性ありと判定させるのか?という部分に関しては、玉虫色で、これといった模範解答があるわけではありません。
よって、判例により、ヒントを探っていくしかないということになります。
そこで、この“就業規則での不利益変更”の合理性の有無で争った、第4銀行事件の最高裁の判断を少し見てみます。
就業規則の変更による
1)労働者が被る不利益の程度
2)使用者側の変更の必要性
3)変更後の就業規則の内容の相当性
4)代償措置や他の労働条件の改善状況
5)過半数労働組合との交渉の経緯
6)他の組合や組合員以外の従業員に対する対応
7)同業他社の国内における一般的状況
この1)から7)までの項目を“総合判断”するという内容になっております。
とはいっても、この項目のなかでもどの部分を重視すべきかということになると、5)、6)の部分ということになってくると思われます。
と言いますのは、就業規則の不利益変更の問題は、労使間の労働条件をどのあたりに落ち着ける(合意する)という利益紛争であり、権利義務の紛争ではないために、本当は労使間の協議によって解決することが望ましいという考え方があるからです。
よって、この合意に基づき就業規則を変更するときは、変更後の就業規則は労使間の利益調整があったものとして、合理性ありと推定されるでしょう。
前記の第四銀行事件での判例でもこのように判示されています。
ただし、その合意が過半数組合とだけのものなのであれば、他の労働組合員や非組合員に対しての効力が及ぶか?ということが議論になってきます。
また、“被る不利益の程度の内容”があまりに大きいということで、『労組の同意を大きな考慮要素と評価することが相当でない』と判示された判例もあります。
ただし、この事案は高齢者が極めて不利益を被る事案であったこと。また、不利益を受ける高齢者の多くが、同意をした組合とは別組合に属していたことにより、高齢者の意思が充分に反映されていなかった例外的な事案であると言えるでしょう。
もう一つ、“合理性あり”と判断される判断要素があります。
それは、“経過的措置”を設けているかどうかということです。
『一方的に不利益を受ける労働者について不利益を緩和するなどの経過措置を設けることによる適切な救済を併せ図るべきである。』
との最高裁判例(みちのく銀行事件)での判例でもあるように、経過措置あるいは緩和措置は合理性の判断を見る上で重要な要素となっており、これは最高裁以外での下級裁判例においての判例でもこの点は重視された判断材料となっているようです。
新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと、“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。
当事務所では、様々なケースを想定して就業規則の変更のコンサルティングを行っております。
就業規則のご変更の際は、是非、ご相談下さい。