退職金の減額を変更する際によく問題になるのは、変更によって、現時点で退職したと仮定したときに、得られるであろう額(いわゆる既得権ですね。)を超えて、引き下げれるのかということです。

例えば、勤続3年以上から退職金の支給要件を満たす退職金規定がある企業で、勤続5年目で退職金規定を廃止されたとしても、5年間勤続分で得られていた既得権の部分に関しては、労働者側に請求権が残るわけです。

労働者側の既得権がある場合の、既得権部分に関しては、例え退職金規定を減額変更をしても、遡及して効力は発生しないわけです。

よって、既得権部分は当然に残したままで、例えば、10年後、15年後退職した際に受け取る金額を減額変更していくという考え方が、不利益変更となるのかという部分を見ていきたいと思います。

 

 『長年勤めた社員の退職金を支払う際、その金額のあまりの大きさに焦った!!』 

 『今の制度では、退職金の額が大きくなりすぎて、今後、経営に影響が出てしまう。。。』

 現行の退職金制度を変更したいけど、何かよいスキームはないだろうか…??

 

 裁判所の考え方は、退職金も他の定期賃金同様に、退職金規定を変更し、支給額を減額することは不利益変更にあたると判断しています。


退職金という、不確定な期限に発生するものであっても、労働者の期待的利益として、法律上も保護の対象となるという考え方になります。

よって、このケースでも“高度の必要性”に基づいた“合理的内容”を求めています。

では、どういった場合が“高度の必要性”に基づいた“合理的内容”なのかというと…

合理性が認められた判例としては
1)会社更生法摘要の下で、退職金額を15%以上減額し、15年間の分割払いとしたケース

2)会社更生法の摘要下で退職金額を変更前の2割とし、退職日から3ヶ月以内にその半額を、その後6ヶ月以内に残金を払い、退職金原資のできたときに加算支給するケース
 (加算支給の結果、従来の75%程度までは支給されている。)

3)会社の合併に当たり、労働条件を統合するために、退職金支給率を引き下げたが、給与規定全体を見直し、定期賃金や手当を増額し、蓋を開けてみた結果、賃金全体としてはさほど不利益にはならなかったケース

一方で合理性が認められなかった判例としては
 1)経営悪化という理由により、退職金の20%削減及び、支給率の減額改定されたが、客観的に経営悪化とまではいえなかったケース

 2)出向先との調整のため、退職金を従来の額よりも3分の2から2分の1の範囲で引き下げたケース。


 高度の必要性というのは、経営的に逼迫しているということが、客観的に証明できること。
合理性というのは、定期賃金や手当を含む賃金規定全体としての見直しをした上で、もしくは定年延長等の制度を設ける等の代替措置でもって、不利益を被る労働者に対する救済措置が講じられているか。

判例を見る限り、そういった基準で裁判所は判断しているのかな。と感じます。

 

ご覧の通り、労働契約法が施行後は、退職金規定の変更も慎重に行う必要が出てきました。

新たな規定の追加の場合はもちろんのこと、経営状況の悪化に伴う場合ですら就業規則の変更に伴う、労働条件の変更に関しては、やり方を間違うと“合理性のない不利益変更”と判断されてしまう可能性があります。

当事務所では、様々なケースを想定して就業規則の変更のコンサルティングを行っております。

退職金制度の見直しを検討中の企業様、事業主様は、経験豊かな当事務所に是非、ご相談下さい。

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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