調剤薬局の人材確保と管理
急速な薬局数の増加と、“薬学部修了卒業者2年の空洞化期間”により人手不足に…
薬局業界は1997年より、いわゆる院外処方が進み、国内における店舗数を大きく拡大してきた成長業種です。
平成29年度の衛生行政報告を見てみると、日本全国で薬局総数は約59000店舗となっており、これはコンビニ店舗数の58000店舗をも上回ります。

コンビニが学生のアルバイトや主婦を配置して店を回せていけるのとは異なり、薬局の場合は、
・薬剤師の有資格者が店舗ごとに必ず必要になること
・薬事法で管理薬剤師の配置が義務付けられていること(他店舗との兼務は禁止)
・薬剤師1人につき1日の処方箋の処理枚数の制限があること(40枚がMax、41枚以上処理する店舗は複数の薬剤師の配置が必須)
等、コンビニとは比較にならないほど、人材の確保が困難な業界です。
こういった急速な店舗数の増加に加え、2006年度以降の薬学部の入学者に対しては、国家受験資格が与えられる期間が入学から従来の4年制から6年制(4年制卒業+修士課程の計6年のケースも含む)へと抜本的な教育改革が行われたことに起因し、2010年度、2011年度の修了者、卒業者(薬剤師の卵)が極端に少なくなるという事態となりました(薬学部既卒者2年の空洞化期間)
つまりこの“空洞化した2年間”の影響で、現在も若手でかつバリバリ働ける世代の30才代半ばの薬剤師が圧倒的に不足しているという状況となっています。
薬剤師の地域偏在と女性薬剤師の処遇
厚生労働省の“平成28年度医師・歯科医師・薬剤師調査”によると日本全国の薬剤師総数約301,000人に対し、女性薬剤師はその過半数を占める約184,500名となっています。つまり全国で活躍する薬剤師の6割超が女性であるということになります。
女性薬剤師、特に子育て世代の女性薬剤師は正規雇用を希望せずに、あえてパート待遇などの非正規雇用の形態で日中の勤務を希望するケースが多く、そのため夕刻以降の時間帯の常駐薬剤師が不足するという慢性的な問題を抱えている薬局も数多くあります。夕刻以降の常駐薬剤師の確保ができないような場合は、営業時間を日中だけに限定しないといけないようなケースもあると聞きます。
前述の厚労省“平成28年度医師・歯科医師・薬剤師調査”によると、都道府県別に見た人口10万人に対する薬局・医療施設に従事する薬剤師数は、全国平均で181人となっています。ただ、これは地域偏在が非常に顕著で、東京、神奈川、兵庫等は全国平均よりも多くの薬剤師を抱えるデータとなっておりますが、一部を除く地方では全国平均並みもしくはそれを下回る統計値となっております。
10万人に対して全国平均の181人が多いのか少ないのかという議論もさることながら、全国にチェーン展開している薬局さんはこういった地域偏在のことも頭に入れた人材配置の戦略も必要となるでしょう。
上記ご説明したような、調剤薬局を巡る労働市場から社長様、事業主様は以下のことを念頭において、労務管理を行っていく必要があるように思います。
①良質な労働力(優秀な人材=金の卵)を確保できる採用体制を作ること
②確保した人材をしっかり育成、定着させる体制を作ること
③女性薬剤師、特に子育て期の女性薬剤師には士気が低下しないような処遇の導入を検討すること。
上記のポイントを踏まえ調剤薬局の労務管理上の留意点を以降の記事にて解説していきます。
当事務所には、調剤薬局の薬剤師の確保、育成、定着に関してのノウハウがあります。
“薬剤師がなかなか定着しない!!”“店長クラスの管理者がなかなか育たない!!”等のお悩みに対してしての解決策を提示します。
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