以下は就業規則の記載で問題になりそうな箇所、または私の経験上、実際に紛争があったケースを何点かピックアップさせて頂いております。御社の就業規則見直しの一つの基準にして頂ければと思います。

チェック1)条文に“この規則の定めにない事項については、労働基準法、労働関連法規、その他各法令による”という規定があるか?

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当事務所の見解)

書かないほうがいいと思われます。繰り返しになりますが、労働関連法規全体が労働者保護法という立場をとっている中、就業規則が唯一、事業主側のイニシアティブで作成できるものなのです。にも関わらずこの規定を入れてしまうと、就業規則に記載がないことは全て法令に従うこととなってしまうわけです。本来は規定がない部分に関しては職場の労働慣行が就業規則と同じ効力を生じるという考え方が判例により認められています。にも関わらず、この規定を設けることによって、職場の労働慣行によるルール規範が効力を失うことになりかねません。

チェック2)従業員がインフルエンザ等、感染症に感染したときの就業禁止規定の記載があるか?

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当事務所見解)

 記載しておくべきです。感染症の種類は感染新法により、Ⅰ類からⅤ類まで危険度の高い感染症ごとにカテゴリー分類されています。通常危険度が高い、Ⅰ類からⅢ類までの感染症に罹患すると、国による就業禁止が命じられます。普通のインフルエンザはⅤ類の感染症(鳥インフルエンザはⅣ類)になるので、感染新法での国による予防措置の対象とはならず、安全衛生法68条による就業禁止規定が適用になります。この場合、就業規則等で“産業医その他専門医の意見を聞く”等の手続きを踏んだ上で出勤停止を命じないと、休業手当を支払わなければならない可能性が出てきます。就業規則にもその旨、しっかりと記載しておくべきでしょう。

チェック3)試用期間の定めをしているか?試用期間の延長を規定しているか?

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 当事務所見解)

 試用期間の定め、および試用期間延長の定めはともに必要と考えます。試用期間を経ての本採用拒否は基準法上は解雇を解釈されますが、解雇理由の正当不当性を争う際に、試用期間中の解雇や試用期間を経ての本採用拒否は、会社側から見ると、正職員を解雇するときよりは、若干解雇権濫用と判断される基準のハードルは下がります。また、試用期間中、雇い入れから14日以内であれば、解雇予告をせずに解雇することが可能です。試用期間のない会社を狙って就職し、雇い入れた瞬間から態度が豹変し、わざと即日解雇されるように仕向け、解雇予告手当をせしめるような常習者が世の中にはいるのです。そんな“タカリ”から会社を守るためには必要な規定です。

 試用期間の延長に関しては、基本的には就業規則の根拠がないと延長はできません。試用期間中に私傷病で長期に渡り欠勤されるようなケースであれば、試用期間中に従業員としての適正を判断しきれない可能性もあります。このようなケースに備えて、延長規定は設けておくべきでしょう。

チェック4)休職に関する規定は“休職を発令することができる”という形であくまで、会社側のイニシアティブで発令できる規定になっているか?

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当事務所見解)

要件に該当すれば、当然に休職できるようになっている休職規定は危険です。労働者が権利として主張する可能性があるからです。特に休職の該当事項を私傷病以外の自己都合による欠勤まで広げているケースではなおさらです。(できればこのような私傷病以外の該当要件は設けない方が無難だと個人的には思いますが‥。)休職規定はあくまでも会社の配慮であり、会社の裁量で発令できるというようにしておくべきです。

チェック5)休職後、復職しその後一定期間内に再び同一事由、または類似の事由で再び休職事由に該当し、休職を命じる場合は前回の休職期間を通算するという通算規定はあるか?

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当事務所見解)

 通算規定は設けておくべきです。休職規定を盾に取って休職を繰り返す、従業員に対する対策として入れておくべき規定です。

チェック6)休職規定の適用の判断、および休職後の復職の判断に当たっては本人の主治医以外に、会社の産業医や会社が選定する医師への受診を命じることがある旨の規定があるか?また、診断書の提出を求めるのであれば、料金を労使どちらが負担するのか決めているか?

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当事務所見解)

経験上、従業員の主治医は本人が“大丈夫!働けます!”と言えば、“就労可能”の診断書を書くものです。しかしながら、会社として復職を認める基準はあくまでも、ちゃんと戦力として機能するかどうかで判断すべきでしょう。よって、労働者の主治医の就労可能の判断基準と会社の復職の判断基準にズレがないか、産業医もしくは会社の選定医の確認を取ることは重要だと思います。その際の診断書の料金の負担に関しての決め事を記載することも忘れてはいけません。

チェック7)有給休暇の規定、及び育児休暇、介護休暇の規定の部分を“法定通り”もしくは“労働基準法に準ずる”“育児介護休業法に準ずる”等の表現をしているにとどまり、具体的な内容に関して記載していない。

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当事務所見解)

きちんと詳細まで記載をしておくべきと考えます。休暇休日に関しては、就業規則の絶対的記載事項(必ず記載しなければならない事項)です。よって有給休暇、育児・介護休業に関しては就業規則に記載することが必要です。実際に育児休業、介護休業に関しての記載のない就業規則は、行政機関(労働局雇用均等室)からの指導対象になると聞いています。問題はどのように書くかなのですが、とりあえず、“法定通り”であるとか、“〇〇法に準ずる”という書き方であっても、行政機関は『記載はされているもの』とみなしてはくれます。但し、労働基準法106条には法令等の周知ということで、事業主に基準法ほか労働関連法を従業員に対する周知を義務付けています。有給や育児休業、介護休業の権利を喪失した労働者から“会社が法律を周知していなかったから、気づかない間に権利を喪失した。喪失分の賠償を請求する”ということを言われかねません。

チェック8)従業員が自己都合退職する際に、引き継ぎ義務を定めた明文上の規定はあるか?誠実に引継ぎ業務を行わない際は懲戒処分の対象になる旨の規定があるか?

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当事務所見解)

自己都合退職の際に、充分な引継ぎなしでの有給休暇の消化というのは、事業主さんからの一番相談の多い事案です。引継ぎ義務を明文化して定めることと、誠実に引継ぎ業務を行わない際は懲戒処分の対象になる旨、きちんと普段から周知していくことが結果として、このような事案の防止策に繋がると考えます。

チェック9)(特に接客業務で)勤務中の服装、みだしなみ、飲食等に関して、服務規律規定できちんと明文化しているか? 

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当事務所見解)

接客業や営業職等、人と接する業務には服装、みだしなみに関しての規定を設けておくべきでしょう。Tシャツ、ジーパン、無精ひげで営業周りをさせますか??このような服務規律規定を軽視される会社さんも多いですが、大事なことですので記載しておくべきと考えます。

チェック10)14日以上の無断欠勤を続け、連絡がつかなくなった行方不明従業員に対する措置は規定されていますか?

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当事務所見解)

行方不明者や長期無断欠勤者の扱いや解雇の相談は非常に多いです。解雇を通知するにも本人と連絡が取れないためどうすればよいのであるとか、公示送達するにも手続きに時間がかかるため、その間の社会保険料の会社負担分に関しては会社が払い続けなければならないわけです。行方不明者を想定した上で、本人と連絡が取れなくなった場合等はどのようにするのか等の規定は必須です。

チェック11)営業車等、業務上で車を使うケースで車両管理規定を設けていますか?また、マイカー通勤の許可に関して、その車両管理規定に定めはありますか? 

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当事務所見解)

 マイカー通勤を認めるケースや業務上で車を使用する場合には、必ず定めておきたい規定です。マイカー通勤の許可の基準を明確にしていなかったため、通勤中の事故の損害賠償を2億円を被った企業があります。

 なお、通勤や業務上で自動車の使用がある場合の考えられるリスクや、そのリスク対応策については、別途、解説のページを設けております。ご参考になさってください。

       諸規定の重要性ー車両管理規定編のページへ

チェック12)家族手当の支給をしている場合、家族手当の支給対象となる、家族に対してきちんと、規定していますか?

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当事務所見解)

 家族手当の支給対象とする子女にきちんと制限を設けていなかったため、離婚して出戻ってきた娘に対して、家族手当の支給対象としなければならかったという事案がありました。昨今、成人しても、自立できないニートも社会的問題になっています。会社として、そのようなところまで、サポートしなければならないでしょうか?家族手当の対象子女は、一定の年齢に達したときに支給停止とすべきでしょう。 

                                         

To Be Continued

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 裁判員制度施行に伴う、労務管理対策!!御社は大丈夫ですか??

本年の5月より、裁判員制度が導入され、既に裁判員制度による裁判が開始されていることは、マスコミ等の報道により、皆様もよくご存知のことと存じます。

さて、この裁判員制度により、裁判への参加が義務付けられた従業員に対して、どのように対処すればよいのかというところは、各企業さん非常に悩ましい部分のようで、最近この手の質問が増えております。特に中小企業さんからしてみれば、一定期間あてにしている労働力が欠けてしまい、致命的な打撃を受けることを懸念されている経営者の方もおられるようです。

この制度の開始に伴い、事業主としてはどのような対処をして行けばよいのでしょうか?

 

 1.裁判員制度と労働基準法7条(公民権行使の保障)の関係

まず、この裁判員制度のスタートが会社や事業所の労務管理する上でどのようなことが懸案事項となるのかをまず見ていきたいと思います。 

労働基準法では、事業主は公の職務(公務)の執行に対して、従業員に必要な時間が請求されれば、拒否はできないという規定があります。(労働基準法7条、公民権行使の保障)

この公の職務というのは、議員等の仕事や、労働委員会の委員、民事訴訟の証人等を指すのですが、裁判員制度の裁判員もこの“公の職務”の中に含まれます。よって、裁判員候補者となり、裁判員や補充裁判員に選出されれば、きちんとした理由がない限りは裁判員を辞退できないわけですから、会社としては、公民権行使を保障しなければならない、つまり、会社は就業期間中であっても裁判員としての“公の職務”を優先させなければならない、ということになってしまいます。よって、まず第一の懸案事項として、会社または事業所は、審理が行われる、数日間から1週間くらいの不在労働者の労働力をどう補うかということを考えなければなりません。それよりもそもそも、不在になるということ、及び不在になる期間を会社または事業所がきちんと把握をしなければならないわけです。

もう一つは賃金の問題です。不就労部分の賃金の取扱いは、有給にするか無給にするかということは、事業主側の裁量になります。(行政通達;昭二二・一一・二七 基発三九九号) そこで、第2の懸案事項としては、不就労部分の賃金に関してどうするのかを考えなければならないわけです。

2.転ばぬ先の杖!!就業規則に規定しておくべきこと

 1)従業員が裁判員等に選ばれた時は、会社に報告する義務を記載しましょう。

まず第一の懸案事項に対する解決策として、当事務所では以下のことを就業規則に規程することを推奨しております。

 ①裁判所候補者名簿記載通知を受けたこと

 ②裁判員候補者として呼び出しを受けたこと

 ③裁判員や補充裁判員に選任されたこと

 ①から③に該当する場合は使用者(事業主)報告を義務付けるという規定を就業規則に定めた上で、報告義務の命令権を確保しておくべきでしょう。まず、会社(事業主)としては、従業員が不在となり、必要な労働力が確保できなくなる可能性があることやその時期、期間等をきちんと把握をして、しかるべく、勤務体制の変更等の対策を練っていかなければなりません。 直前になって言って来られても、会社としては出勤しているという前提で段取りしている行事や会議なんかもあるでしょうから、後になって慌てるということは、絶対に避けたいところです。

 さて、裁判員等に選ばれたときに、事前に会社に報告することを義務づける行為についての是非はよく議論されるところです。

 裁判員法第101条第1項にて“何人も裁判員や裁判員候補者等の指名、住所その他個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない”とされています。しかし、この場合の“公にする”とは不特定多数の人間に話したり、知られるような状態にしておくということです。よって、勤務先の休みの調整等に勤務先の事業主や上司等に話すことは、構わないとの解釈になります。

 よって、就業規則に報告義務を設けておくこと自体は、それが、裁判員あるいは裁判員候補者の従業員の休暇やそれに伴う、出勤体制の段取りを目的としている限り可能であると考えられます。

 2)従業員が裁判員候補者名簿記載通知を受け取った場合は、会社(事業主)と協議する旨を記載しましょう。

 裁判員候補者名簿記載通知を受け取ったとしても、まだ裁判員に選出されたわけではないですし、仮に裁判員に選出されるにしても、どの時期に行われるべきものかも、その時点ではわかっていないわけです。よって、会社と協議する機会を設ける旨を就業規則に記載しておきたいところです。特にスペシャリスト職などでは、どうしてもその人でないとできない仕事があるでしょうし、特定な業種ではどうしても時期的に繁忙な時期があるわけですから、その時期に関して会社側と協議することも必要となってくるはずです。よって、辞退の申し出をするかどうか、及び裁判員として参加することが困難な時期についてどのように回答するかと会社と協議の上決定する旨、就業規則に定めておくことを推奨いたします。

 これも前の1)と同じ考え方で裁判員法101条に抵触するものではないと考えます。ただし、あくまで労基法7条の公民権行使の話になりますので、会社は該当従業員と協議することはできても、裁判員を辞退するように強要はできないので、ご注意下さい。

 3)裁判員として不就労日の給与の考え方

 これに関しては先に述べたとおり、有給にするのか、無給にするのは、基本的に会社側の裁量です。無給しても従業員が事前に法定の年次有給休暇を申請してくれば、与えなければなりません。

 年次有給休暇以外に裁判員用の特別の有給休暇を新たに加えられる事業所さんも多く見受けられますが、気をつけなければならないのは、就業規則等に、

 ①裁判員の休暇は有給にしているので、裁判員としての日当は会社に納付する

 ②裁判員としての日当金額は給与から減額する。

 と規定している場合です。この場合は①、②ともに法律に抵触する可能性がありNGです。

 ①の場合は裁判員法第100条の不利益取扱いに該当する可能性があるわけです。例えば有給休暇分が日額8,000円の賃金で、裁判員としての日当が10,000円とするならば、日当の10,000円を納付させることにより、差額の2,000円が従業員が不利益な扱いを受けることになります。

 ②の場合は有給休暇として日額賃金から裁判員としての日当を差し引くのであれば、労基法24条の全額払いの原則に抵触することとなってしまいます。

 しかしながら、特別有給休暇の賃金額をあらかじめ“1日分の日額賃金から裁判員としての日当額との差額”というように、休暇中の賃金額を日額給与と日当額の差額を支給するような、有給休暇にすることは特にはどの法律にも抵触しないので問題ないのではないのでしょうか?

 例えば、日額賃金12,000円で裁判員としての日当が10,000円の場合、裁判員としての特別有給と取得した従業員に対しては、12,000−10,000=2,000円が休暇中の賃金と支給されるような制度を定めておくということです。

特別の有給休暇制度を設けられている企業さんは、法に抵触する部分がないか再度ご確認されてはどうでしょうか?

当事務所では、裁判員制度の施行に伴う、労務管理や就業規則の見直しのご相談を承っております。

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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