なぜ企業は、昨今外国人労働者を積極的に雇用するのか‥?

ー企業の人事戦略の1つとしての外国人雇用ー

 

 外国人労働者と聞いて、私たちはどのようなイメージを持つでしょうか?語学学校の外国人講師であるとか、外国料理レストランのウェイター、ウェイトレスとか‥。そういった職種がまず頭に浮かぶのではないでしょうか?あるいは単純作業の3Kの労働環境の給与が安い職種というイメージを持つ方もおられるかもしれません。

 

 しかしながら、現在は“高い能力の従業員であれば、国籍を問わず”という考え方の企業が増えつつあり、貿易商社、システム開発、金融業界、IT業界などで有能な外国人を雇用するがことよく見られるようになってきています。

 

 こういった事情に加え、日本の中小企業のビジネスを取り巻くグローバル化も、企業が積極的に外国人雇用を推進することに拍車を掛けています。市場のグローバル化に伴い、大企業のみならず、中小企業も、生産拠点の海外シフト外国市場の新規参入など、最近では日本国内のみでビジネスを完結されることが難しくなってきてます。

 

 さらに日本国内の少子高齢化も、労働人口の減少という問題も抱え、今後外国人労働者に労働力を依存しなければならない状況も充分考えられるわけです。

 

 こういった、“国籍不問の優秀な人材の確保”“市場のグローバル化対応”“少子化に伴う労働力の確保”の3つの課題を日本企業が抱えている現在、大企業、中小企業等の企業規模の関わらず、外国人雇用に関しては今後必要不可欠になることは、予見できうるわけです。

 

不可欠になるというよりは、企業はもっと能動的に、人事戦力の一環として、外国人雇用を考えていく時期に入ったといっても過言ではないといえるかもしれません。

 

 このページでは、企業が外国人労働者を雇用する際の注意点等を以下の記事から見ていきたいと思います。外国人雇用が初めてという中小企業の経営者様や、人事担当者様へ、少しでも参考になればと思っております。

 

 当事務所においても外国人雇用や活用法に関してのご相談を承っております。

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入管法に定められた在留資格制度の手続きについて

 

 企業が外国人雇用を行う際に際して、1つのバリアとなりえるのが、“出入国管理および難民認定法”(世間一般で『入管法』と呼ばれるものですが)です。これは日本における在留資格に関することを詳細に規定しております。

 こういった“在留資格制度”において、日本国内での地位やどのような活動を行うことができるのか、就労が可能なのであれば、どのような就労が認められるか等を明確に規定されているわけです。また、この資格に該当されない人物の入国を拒否したり、ビザの発給を停止したりすることが、入管法上は可能となるわけです。こうして、入管法に則った形で、日本への出入国の管理が当局においてされております。

日本国内での在留資格に関しては、以下の3つに大きく分かれます。

 

(1)特定の就労活動が認められる在留資格(17種類)

 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資、経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、特定活動

(2)原則就労ができない在留資格(6種類)

 文化活動、短期滞在、留学、就学、研修、家族滞在

  *上記の在留資格であっても、例外的に就労できるケースもあります。

(3)就労に制限がない(国内でどのような仕事についても原則OK)在留資格(4種類)

 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者、定住者

 

 ・高度専門労働者と単純作業労働者

外国人労働者を区分すると、“高度専門労働者”“単純作業労働者” の2つに分けられますが、前者は(1)の専門のスキルを持ち、そのスキルで仕事をするために在留資格をえたもの。後者は(3)の在留資格で仕事をするものというケースが多いようです。

もちろん、(3)の在留資格であっても“高度専門労働者”として本邦で働かれている方はおられますが、あくまで一般論としてです。

 

また、外国人労働者に対する日本政府の受け入れの考え方としては、高度専門労働者に対しては積極的な反面、単純作業労働者に関しては消極的で慎重な対応をしています。

 

国際競争力の上昇や優秀な人材の確保、国際競争力の強化等のメリットの一方で、日本人の雇用機会の減少や外国人犯罪増加や不法滞在の懸念等のデメリットもあり、そのようなバランスでの対応をとらざるを得ないのかもしれません。

 

・外国人労働者を招聘する際の手順について

 次に外国人労働者を招聘する際の手順について述べていきます。

 

 ①外国人労働者本人が旅券(パスポート)を取得

  *外国人が日本に入国するためには、有効な旅券(パスポート)が必要です。これを持たずに日本国内に入国すると不法入国となります。

 ②本人又はその代理人(招聘先企業等)が地方入国管理局に在留資格認定証明書の交付申請

 ③地方入国管理局における在留資格認定証明書の審査

  *上記でも説明している通り、この在留資格証明書は日本に上陸しようとする外国人、又は招聘先企業等の代理人があらかじめ、地方入国管理局に申請があった場合、この外国人の申請している活動内容が在留資格に定める活動に該当し、かつ、基準に適合しているかを事前に審査し、審査適合と認められた場合に発行される証明書です。

 ④許可されると在留資格認定証明書交付

 ⑤外国にいる本人に在留資格認定証明書を送付

 ⑥本人が日本の在外公館(現地の日本大使館等)へ査証の申請

  *①で取得した旅券を持っているだけではまだ不充分です。これに加え“この者は正当な理由と資格があってこの国に入国するものである。”という受入国(=日本)による裏書証明が必要です。この裏書証明を査証(ビザ)といいます。

  *このときに④で取得、⑤で現地にいる本人に送付した、在留資格認定証明書を提出することにより査証の発行が円滑に行われます。

 

 ⑦在外公館(現地の日本大使館等)で査証手続き及び発給

 ⑧出入国港において上陸審査(在留資格、在留期間の決定)

 ⑨日本国内に在留中に在留期間更新、在留資格変更、資格外活動許可等がある場合は地方入国管理局で必要な手続きを取る。

 ⑩90日を越えて在留する場合は市区町村において外国人登録手続が必要 

 

 *②③④⑤⑨⑩が国内における手続き

 *①⑥⑦が海外(その労働者の地元)での手続

 *⑧が国内及び海外双方での手続

 

当事務所では外国人雇用に関してのご相談も対応させていただいております。また、当事務所は行政書士事務所も併設しておりますので、幅広くお問い合わせの門戸を開いております

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技能実習制度とは?

18歳以上の外国人を日本に受け入れ、研修を行い、技術、技能、知識を実務的に身につけるための機会を提供することで、諸外国への技術、技能の橋渡しとそれを担う人を育成すること前提にした、いわゆる国際協力を目的とする制度のひとつです。

この制度は、平成22年7月に法改正が行われ、外国人技能実習生と入国後1年目の技能実習開始から雇用関係を締結しなければならなくなりました。つまり技能実習生が事業主に労務の提供を行い、その対価として賃金を得るという図式になります。(従来は1年目は研修扱いで雇用という概念では見ていませんでした。)

2年目から、検定試験等をクリアし一定の水準に達した技能実習生には企業の業務に入り込むことが許され、実践的、実務的に技術、技能、知識を習得させるようにしていきます。

ここで、企業側として留意しなければならないのは、受け入れ1年目から“雇用”の扱いをしなければならないため、労働基準法をはじめとした各労働諸法令が適用されるということです。 

*但し、入国当初に講習を行う期間:団体監理型受入(**以下に説明を記載します。)のケースでは最初の2ヶ月間は除きます。

 

技能実習制度には企業単独型と団体監理型の2種類があります。

 企業単独型ー受入企業の海外にある合弁企業、現地法人、一定の取引先企業等から企業が単独で受け入れる形態

 団体監理型(**)−営利を目的としない、事業協同組合などを通して中小企業が受け入れ先となるような形態

 

 繰り返しになりますが、技能実習制度の外国人実習生は1年目から労働諸法令が適用となります。よって、劣悪な環境での長時間の労働の強制や最低賃金を下回るような雇用条件を強いることは、法令違反となり、処罰の対象になりうるということを、企業側としては留意して実習生を受け入れなければならないということになります。

 

当事務所は外国人雇用に関しての手続、コンサルティングもお力にならさせていただいております。

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単純労働者と高度専門労働者の違いについて

 外国人労働者を募集・採用する際にまず検討しなければならないことは、どのような用途にどのくらいの能力を持った労働者を配置したいかというビジョンを明確に設定しなければならないでしょう。

 外国人を採用する場合には主に2つのケースが考えられます。企業が国際競争力の強化を目指したり、あるいは特殊な技術を持った優秀な外国人を採りたいというケースと、単純な作業に従事するだけの業務に人件費対策として外国人を採りたいというケースです。

 

 前者の場合は、長期的なキャリアプランを持って、自らのスキル向上や異文化生活を通じて得られる自分の国では得られないような体験、知識習得等の目的で日本への就業を希望するケースが多いのではないかと考えます。そもそも自国で就職しても待遇に関しては優遇されることが約束させているにも関わらず日本で仕事がしたいわけですから。

 このようなケースでは実際の給与等の待遇面よりは、やりがいに魅力を感じるタイプの人材が多いのです。よって、待遇面での好条件を同業他社からオファーを受けたりしても簡単には転職はしませんが、与えられる業務に魅力を感じなければ、転職はもちろん、今までの職業生活で培った知識や人脈等を使って独立、起業することも充分に考えられます。

 このようなリスクを回避するためには、会社のテクニカルな機密情報の扱いのルール化(例えば、入退社時の誓約書の記載の義務化)や競業避止に関する決め事を作るなど、このような場合を想定して規定を設けておいたほうがよいでしょう。

 

 *当事務所では機密情報の漏洩対策の就業規則も提供しております。詳しくはこちらから

 

 それに対し、単純作業者の方は、仕事のやりがいなどよりも、賃金などの待遇面を重視する傾向があり、他に待遇のある職場があれば、それまで培った事業主との人間関係も不義理に捨ててしまい転職してしまうケースもままあるようです。

 

 どちらのケースにしろ、会社側が採用しようとする外国人労働者をどのように活用するか、具体的にどのような職種につかせるか等の方向性を明確化し、その労働者の日本語のコミュニケーション能力の程度の把握、および社内の関連部門が入管法をきちんと理解するということが、外国人採用における準備段階の第一歩でしょう。

 

 当事務所では外国人労働者の採用から活用までのプロセスに関してもお力にならせて頂いております。

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この記事では外国人労働者を採用するための受け入れ体制をどのように整備していくかということを見てみていきたいと思います。

・会社の求める業務における能力基準や日本語力を明確化する

これは、外国人を採用する段階で最も重要になってくる要素です。特に日本語能力に関しては、周囲とのコミュニーケーションが取れる程度の日本語力でいいのか、それとも商談等の場できちんと交渉できる程度の日本語能力まで求めるのかで、採用に掛かる労力が大きく変わってくる可能性があります。

 

また、日本語能力の見極めをおろそかにして採用してしまうと、もし、配置された仕事に適性がないと判断せれた場合であっても、配置転換するにも適所が見つからず結局は解雇するしかないという結果にもなりかねません。

 

こういったことからも、採用後揉めないために、語学力を含めた能力をどの程度まで求めるのかという基準をしっかり明確に作っておくことは不可欠なわけです。

 

日本語能力の見極めは“今後の伸びしろ”等は考慮せず、面接段階での能力で判断してしまって構わないと思います。採用後、日本語を使って業務をこなしていったとしても、飛躍的なスキルアップはまず期待できないでしょうから。

 

・プライベートを含んだフォローアップシステムの構築

 言葉や文化の違う異国で働く外国人労働者にとって、就業に専念できる環境を提供するということは、なかなか難しいことだと思われますが、そういった意味で、ここは会社の上司もしくは同僚が外国人労働者の“衣食住”を含んだ生活の支援や世話役を買って出るようなシステムが会社にあれば望ましいでしょう。

 プライベートの支援の例としては、“住”の部分のサポートとしては賃貸住宅の保証人になってあげるであるとか、“食”の部分のサポートは、母国の料理が食べれるレストラン等のリサーチや母国の食材の入手経路のリサーチや手配のサポートその他の生活については外国語(母国語)の通じる病院の紹介等が挙げらます。

 こういった支援は、人的資産に余裕のない中小企業さんなんかは難しいかもしれないですが、特に高度専門労働者に対してはシステムを構築することによって、彼らが業務に集中できる環境を作り出し、能力を最大限に発揮できる可能性を秘めていると思います。

 

・法律上の必須事項

 これは邦人、外国人問わず、必要になることなのですが、労災事故予防のために、雇入れ時に安全衛生教育を実施することが法律で義務化されています。(労働安全衛生法35条)

 ただ、外国人労働者に対しては、教育をしても理解度がどれくらいあるのかということが懸念されます。よって、できれば、本人が理解できる言語での教材、レジュメで教育してあげれるような体制が作ればベストなわけです。もしくはフルでの対訳対応が難しければ、一部をイラスト化したりするのもいいでしょう。大事なことは会社が理解される努力を可能な限り行い、本人からも理解している旨のフィードバックがあることです。これは、安全衛生教育だけに限らず、業務のマニュアルも本人がわかる言語、もしくはイラスト対応してあげるとより親切でしょう。一度にそのような対応が行うことがマンパワー不足で難しければ、プライオリティをつけて、徐々にそのようなシステムを構築してあげることが大切です。

 

 また、これは雇入れ時の労働条件通知にも同じことが言えます。労基法15条で従業員を雇入れた際は、書面による労働条件の通知が事業主に義務付けられています。法律では特に“本人の母国語で”というところまでは義務付けられてはいませんが、ここは今後のトラブル発生の予防のために、本人の母国語で明示する努力はしておいた方がよいと思います。

 

 労働条件明示書(雇用契約書)やそれに変わって就業規則で条件明示することもあると思いますが、どちらにしろ、いきなり全ての項目を本人の母国語で対応することは難しいと思います。よって、労働条件の要になってくるような部分や、服務規律などで、どうしても遵守して欲しい項目等からプライオリティーをつけて対応する等、会社の身の丈にあった努力をしていく必要はあるでしょう。

当事務所では、労働条件通知書(兼雇用契約書)や就業規則等、労務管理用の書類の外国語翻訳、外国語対応のサポートも行っております。

(但し、対応言語は英語に限定させて頂いております。)

 

外国人雇用に関する労務管理上の対応は当事務所にお問い合わせ下さい。

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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