休暇の管理方法の知恵

入院施設のある病院さんともなると、従業員である看護師さん達に対して、外来勤務を除いては、不規則なシフト制という形態で労務管理されている場合がほとんどでしょう。そういった中で、事業主さんとしては勤務体制が手薄で人手がないようなシフトの時に、有給休暇の申請をされて、お困りになってような経験もあるのではないでしょうか?

そのようにならないような予防策をここではお話していきたいと思います。

まずは、有給休暇に関しては、可能な限り、有給休暇の計画的付与制度(詳細はこちら)を導入していくことをお勧め致します。やはり、シフト制でどうしても人手が手薄な状態で、これ以上休まれでもしたら、業務(特に人の命を預かる業務ですから)に支障をきたす場合があるでしょう。そういった時のために、可能な限り、有給休暇の日程に関しては、事業主側がイニシアティブを取って進めていってもいいと思います。もちろん、事業主側が有給休暇の日程を変更できる“時期変更権”の行使も考えられなくもないですが、判例を見ていると、事業主側の時期変更権はよほどの事情がない限りはなかなか認められていないというのが実情です。24時間稼動の病棟勤務等で決まった、年末年始やお盆の休みがないようなケースでも、有給休暇の計画的付与は個人別や班別等の方法により導入が可能です。勤務体制が手薄な状態にも関わらず、有給を取得されてシフト回らないということがないように、可能な限り対策は打っておきたいところです。

 

これはクリニック、開業医さん、歯科医院さんも同様にこの計画的付与制度は導入しておくべきです。小規模なクリニック、歯科医院ではおそらくお盆休みや年末年始の休暇日も設定されているでしょうから、その部分を有給休暇の計画的かつ一斉付与制度を導入することは比較的容易だと思います。(但し、最低でも5日部分は従業員が自由に取れる余地は残しておく必要はありますが…)このこともやはり、必要最少人数で医院、クリニックを運営しているのであれば、急に有給休暇を取得されて、業務に支障が出ないようにするための事業主側の一つの防衛策と言えるでしょう。

有給休暇の計画的付与の導入や労使協定の作成については当事務所にお任せ下さい。お問い合わせフォームはこちらから。 (以下のバナーをクリック下さい。)

所定労働時間と有給休暇、平均賃金の取扱いの考え方

 次に、シフト制勤務でよく議論になる、所定労働時間の概念についてお話していきたいと思います。病院のシフト勤務で一般的なのは、①昼勤、準夜勤、深夜勤の3交代制になっているケース、もしくは、②昼勤と夜勤の2交代にしているケースの2パターンに分かれるのではないでしょうか?双方のケース共に、シフトで定められている所定労働時間がどの時間帯の勤務であっても同じ時間であれば問題はありません。

例えば①のケースであれば、

 昼勤:8時〜17時(8時間労働:休憩1時間)

 準夜勤:15時〜0時(8時間労働:休憩1時間)

 深夜勤:23時〜翌8時(8時間労働:休憩1時間)

 という形のシフトを組みのであれば、どの時間帯でも8時間労働となるので、特に所定労働時間の概念は発生しないのですが、時間帯によって、所定労働時間が微妙に違うようなケースであれば、有給休暇中の賃金をどのように扱うかであるとか、平均賃金を算定しなければならない場合にどのように考えなければならないか等の問題が発生してしまいます。

 例えば

 昼勤:8時〜16時30分(7.5時間労働)

 準夜勤:16時〜0時(7時間労働)

 深夜勤:23時〜翌8時(8時間労働)

というようなシフトとした場合は有給休暇の際の賃金の扱いの仕方を少し工夫したほうがよいでしょう。といいますのは、有給の際の賃金を通常の所定労働時間働いた場合に支払う賃金と決められている病院さんがほとんどだと思うのですが、そういう決め方にしておくと、従業員からしてみたら深夜勤に当たっているときに、有給休暇を取得すれば、最も多い労働時間の就労義務を免除されたうえで、最も多くの賃金がもらえるということになってしまいます。深夜の8時間の労働義務を免除されたうえで、8時間分の賃金と深夜割増も含んだ上でもらえるわけですから。ということになってくると、必然的に、深夜勤の時間帯に勤務が当たっている時に、有給休暇の申請者が増えてしまうということになります。そういったことを避けるために、当事務所では3勤務、あるいは2勤務のシフトにするようなケースでは有給休暇の際の賃金は平均賃金で定めるように推奨しています。平均賃金であれば、3ヶ月の平均なので、勤務時間の短い昼勤であれ、長い深夜勤であれ、同じ賃金の支給ですむわけです。時給単価に換算すれば、むしろ昼勤の際に有給休暇を取得したほうが特になるわけですから、こういった問題は解消されるはずです。

次に、昼勤と夜勤の2交代にしているケースを例にみていきます。

例えば

昼勤:8時〜17時(8時間労働)

夜勤:16時〜翌9時(15時間労働:休憩2時間)

というようなケースですが、このようなケースであれば、夜勤の場合の15時間労働の際は有給休暇を与える場合は2労働日を与えるという扱いをしていいのでしょうか?行政通達としてはこのような暦日をまたぐような、シフトの場合は1勤務を2労働日として扱って差し障りないとされています。ただし、このような昼勤の所定労働時間が8時間、夜勤の所定労働時間が15時間というような具合で昼勤の2労働日分よりも夜勤の所定労働時間が少ないケースなのであれば、就業規則に“夜勤の場合は2労働日の扱いをする”旨の記載をきちんとしておくべきと考えます。これは有給休暇の取扱いの話だけではなく、平均賃金を算定するような事由が出てきた場合に事業主有利に計算することができるからです。

 例えば、上記の例で15時間労働の夜勤専門のパートの看護師さんを即日解雇するケースで夜勤一回で30,000円に賃金をもらっているとします。月8回くらいの勤務とした場合この看護師さんの平均賃金を計算する場合

1)就業規則上に1勤務2労働日の扱いがないケースであれば 

日給者の最低保証が適用されるとして

3ヶ月の総賃金(30,000円×8勤務×3か月分)÷3ヶ月間の総出勤日数(8回×3ヶ月)×0.6×30日分=540,000

 という莫大な金額になってしまいます。

これに対して

2)就業規則上に1勤務2労働日の扱いが規定されているケースでは

3ヶ月の総賃金(同上)÷3ヶ月の総出勤日数(16回×3ヶ月)×0.6×30日分=270,000円

 ということで、単純に分母が2倍になるために、解雇予告手当は半分の額で済むことになります。

よって、暦日をまたぐ長時間の夜勤がシフト勤務上にあるのであれば、1勤務を2労働日の扱いとするように就業規則上に記載しておくことは必須と考えます。

 

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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