有給休暇の計画的付与

やはり有給休暇の取得を巡るトラブルというのはこと欠きません。

会社側は忙しい時期に有給を取得されると、大企業ならいざ知らず、労働力の乏しい中小企業の経営者の立場から見ると、休む労働者の代替措置等を講じなければならず、大袈裟ではなく死活問題に発展する可能性も否定できないわけです。

しかしながら、基本的に有給の取得に関しては、労働者側に“時季指定権”があり、労働者側にイニシアチブがあるのが実情です。

労働者が有給の取得を申し出れば、会社は拒否はできません。

会社が有給に対してできる唯一の権利行使は、労働者が申請した有給の時季が、会社の正常な運営を妨げる場合にその時期を変更できる、“時期変更権”があるだけです。

その“時期変更権”ですら、裁判例を見る限りでは、“会社の正常な運営を妨げる場合”と認められること自体が非常に難しいと言わざるを得ない解釈になってしまっています。

慢性的に人不足の中小企業が時期変更権を行使しても、その時期変更権自体が認められないという判例があるので、結果的に時期変更権の行使に関しては大きなハードルがあると言わざるを得ないでしょう。

というところで、この“有給休暇”の管理方法が事業主としては悩ましい部分ではあるとは思うのですが、合法的に事業主がイニシアチブを取って管理する方法があります。

それは“有給休暇の計画的付与”という方法です。

これは有給休暇を5日を越える部分に関しては、あらかじめ、有給休暇の取得時期に関して、事前に決めておくという方法です。

つまり、有給の付与日数のうち、5日分は労働者が自由に取得日を選ぶことができるが、それ以外は会社側が有給の取得日を指定できるという制度です。

もともと、欧米に比べ、有給の取得率の少なかった日本企業に有給の取得率を向上させるために導入されたシステムです。

もともと、お盆や年末年始など、ある特定の時期に長期間のお休みを予定している企業、事業所なのであれば、この制度を導入するメリットがあるのではないかと思います。

例えば、6ヶ月継続勤務で原則10日有給が発生するということを考えると、お盆の8/12-8/16までの5日間をお盆休みとしている企業なのであれば、5日は労働者の自由に使える付与日を残すことにより、このお盆休みの5日に関しては、計画的付与にすることは、労基法上は問題はないわけです。

 

この計画的付与ということに変更すること自体が労働条件の不利益変更にならないのか?という議論はよく聞きます。

そもそも労働力がいっぱいいっぱいで経営している中小企業にしてみれば、有給の取得率が非常に悪く、ほとんど有給が取得できない環境下で仕事をしている状況を鑑みると、この“計画的付与”自体が有給の取得率を上げるという目的の制度である点で、結果的に有給の取得率が
向上するのであれば、それは不利益変更とまではいえないのではないかと
考えます。

 

そもそも、この“計画的付与”は労使協定が導入の要件でありますから、労働者側と協定しているという点で“労働者との合意があった”と受け取れるわけですからね。


しかしながら、この制度のデメリットの一つとして。この計画的付与の時点で有給が発生していない従業員、及び、パートタイマー等比例付与の対象者となっている従業員で有給日数が10日に満たない従業員に対しては、休業手当(平均賃金の6割)の発生が予測されます。

そのあたりはこの制度を導入する際に、人件費全体で考えた場合、会社としてメリットが勝るか、デメリットが勝るかで判断して頂ければよいのではないかと思います。

ただ、退職時に一気に残りの有給を消化したり、引継ぎ等を充分にしないまま,辞めてしまうような従業員への対策等、この計画的付与はそれなりのメリットがあると思っております。

 

この“有給休暇の計画的付与”の導入に関しては、協定書の作成等、法律上の手続きが必要となります。導入を検討の際は、こちらからお問い合わせ下さい。

 

繰り返しになりますが、この“有給休暇の計画的付与”は労使協定と言われる労働者代表と使用者による書面による約束ごとが必要で、事業主側が勝手に、計画的付与を決めていいわけではありません。

 

計画付与に限って言えば、就業規則で定めただけでは不十分です。(もちろん就業規則に記載しておく必要がありますが、それだけでは導入要件を充たしません。)

 

協定をしようとしても、労働者側からの拒否があるかも知れませんし、協定で有給付与日を定めようとしても、お盆休み、正月休みの日程なんかは、その年その年の土日との兼ね合いで変わってしまいますよね。

また、その年の労働者代表が協定してくれたとしても、次の締結時は労働者代表が変わっているかも知れないし、変更された労働者がきちんと協定してくれるとは限りません!!(労使協定は有効期間の定めが必要になりますので、たった一回協定すれば終わりというわけではありません

 

こういった懸案事項を解決するノウハウが当事務所にはございます。

 

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