労働時間の概念

医療機関、特に歯科医院やクリニック(開業医院)さんでよく誤解されるのは、診察時間=労働時間であると認識されておられる経営者の方が結構おられます。 しかしながら、労働基準法上、労働時間というのは、使用者つまり、院長先生や理事長先生方の指揮命令下に属している時間の全てと考えなければならないということになっております。よって、診察前の時間であっても、診察の準備や院内の掃除等を、看護師さんや受付従業員さんに義務付けているのであれば、それは労働時間とカウントしなければならないということです。労働の実態としては、診察前にカルテの準備や診療器具等の準備があるでしょうし、診察後には後片付け等もあるでしょう。また、診察の受付時間が終了しておっても、込み合っているときであれば、診察の補助等で対応しなければならないこともあるでしょうから、医院さんで掲げている診察時間内で業務が完了すると言うことはまずありえないでしょう。

労働基準法では、そういった時間は全て労働時間にカウントしなければならないということになってきます。各医院さん、クリニックさんで、掲げている診察時間が労働時間になるわけではないのです。よって、診察時間とそれ以外の準備時間、後片付け時間等も含めて労働時間になるんだという前提の元で、法定労働時間=1日8時間を超えない範囲内で所定労働時間を設定しなければならないわけです。

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小規模保健衛生業の労働時間の特権

病院やクリニック(開業医院)、歯科医院は労働基準法上の業種区分でいくと、いわゆる“保健衛生業”というカテゴリーの中に含まれます。この保健衛生業には、従業員数が10名未満という小規模な事業所であれば、法定労働時間に関して他の業種よりも多めに労働時間を設定できるという、特権があります。1日の労働時間は、8時間というくくりは変わらないのですが、1週の労働時間は別の業種であれば、40時間なのですが、保健衛生業であれば、1週44時間までマックスで労働時間を設定できるわけです。だから規模の大きな病院等であれば、この特権の対象にはなりませんが、小規模のクリニックさんや歯科医院さんであれば、この特権の恩恵を受けることができる事業所さんが多いのではないでしょうか?

 

変形労働時間制と1週44時間の特例

前述の1週44時間制と1ヶ月単位の変形時間制又は、労働時間の繰上げ繰り下げのシステムを導入することで、小規模のクリニックさん、開業医さん、歯科医院さんの労働時間管理がスムーズに進められるのではないでしょうか?一ヶ月単位の変形労働時間制に関してはこちらをご覧下さい。仮に10人未満の労働者数のクリニックが1ヶ月単位変形制を導入するのであれば、1ヶ月が31日の月であれば、月間の労働時間の総枠:31÷7×40=194時間51分 を各所定労働日で事業主の任意で割り振っていってもよいということになります。この制度をとれば、1日8時間という法定労働時間の縛りもなくなってくるわけです。

また、この1ヶ月の変形労働時間制を導入した上で、シフト制を併用すると言う方法も考えらえるでしょう。1つの方法としてシフトで早番、遅番の2班に分ける方法です。例えば診察時間前の掃除や準備を担当する早番と、診察時間後の残っている患者さんの処置や後片付けを担当する遅番に分け、月間の1週平均の労働時間を44時間(10名以上の事業所は40時間)以下に設定するという方法です。

1つの例ですが、看護師さんが3名、事務員さんが2名おられる、クリニックを想定して見てみましょう。月曜日から金曜日までは午前診察が9:00から13:00まで、午後診察が16:00から20:00まで、土曜日の診察が午前診察のみという診察時間を設けておくとします。

これを従業員の出勤体制として、A班、B班に班分けします。先ほども記載したとおり、診察時間=労働時間というわけではないので、所定労働時間としては診察開始時間よりも早い時間で設定し、診察終了時間よりも遅めの時間で設定しなければなりません。よって

A班の所定労働時間を8:30〜12:30(午前)、15:45〜19:45(午後) 12:30〜15:45は休憩時間

B班の所定労働時間を9:30〜13:30(午前)、16:30〜20:30(午後) 13:30〜16:30は休憩時間

土曜日は午前中のみ診察でかつ、休日前でクリニックが込むことが予想されるのであれば、A班8:15〜12:15 B班9:45〜13:45という形にします。

ということでA班、B班ともに月から金は8H×5=40H 土曜日は4H労働で合計44H労働となり、法定労働時間内で調整できるわけです。

このようにシフト制を用いて、時差的に所定時間を設けることにより、法定労働時間を超えずに所定労働時間の設定ができるわけです。

また、これに1ヶ月単位の変形労働時間制を設けることにより、1日の所定労働時間が8時間以内に縛られなくすることができます。例えば、週末及びパッピーマンデイを含んだ連休明けの火曜日等、患者の来院が多く、多忙が予想できる日には、所定労働時間を1日9時間等に調整することが可能になってきるわけです。

1ヶ月単位の変形労働時間の導入は、就業規則(もしくはそれに準ずるもの)への記載、又は、労使協定の導入により可能です。10名未満の事業所は法律上就業規則の作成義務はありませんが、労使紛争予防の観点で、当事務所では小規模の事業所さんにも、就業規則の作成をお勧めしています。労使紛争予防の観点からの就業規則の役割についてはこちらから。

 

 看護師さんの過重労働問題、国が色んな施策を投じていますが、うまく改善されている医療機関さんは少ないのではないでしょうか?当事務所では経営管理学の科学的手法を用いた残業時間削減、過重労働解消の解決策を提示できます。医療機関でも病棟等で一定の効果が出ている手法になりますので、是非一度お声がけ下さい。

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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