労使紛争防止の予防策としての就業規則

就業規則を制定するということは、ただ単に“労働基準法上に定められた義務だから”というだけではありません。

就業規則を制定すること、あるいは、息吹を吹き込んだ就業規則に変更することは色んな効果を結果的にもたらします。

その一つが従業員との無用なトラブルが回避できるということです。

一つの例として懲戒規定を設けることのメリットをお話しましょう。

法律の基本的な考え方として、人に懲罰を与えるためには、どのようなことをすると罪になり、その罪に対してどのような罰を与えるのか、ということを法律等によって明文化された根拠がなければ、人を罰することができないという考え方があります。これを罪刑法定主義といいます。

この明文化された根拠というのが、日本の法律でいうところの、刑法であり、地方自治体でいうところの条例であるわけです。国も地方自治体も明文化された法律、条令があるからこそ、その条文に基づいて人を処罰できるわけですね。

この明文化された根拠をいうのが、会社でいうところの就業規則なわけです。

よって、この罪刑法定主義の考え方からいくと、就業規則がない事業所、あるけれども、懲戒規定を設けていなかったり、あいまいであったりする会社は懲戒解雇を含めて、従業員に懲罰は与えられないという解釈になってしまいます。

ということになると、売上金を横領や着服するような従業員や、無断欠勤をずっと続けている従業員など、従業員側にどう考えても責任があるという場合に対しても、理論上は会社は彼らに対しては何の懲罰も与えられないということになってしまいます。

いざ、このような従業員を懲戒解雇した場合で、その従業員が解雇の不当性を民事上訴えて出たケースでは、残念ながら裁判所はこの“罪刑法定主義”の考え方を指示しており、結果的に会社側に賠償命令を出しているケースが多いように思います。

上記のようにつまらないことで、いざトラブルになっての金銭的、時間的、精神的な損出を防ぐためには就業規則の制定、きちんと機能するために息吹を吹き込んだ形での見直しが不可欠であるといわざるをえないでしょう。

 

 

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員


 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。
その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。
圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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