調剤薬局の労務管理上の留意点
調剤薬局の労務管理
よくある間違い(勘違い)と注意点
調剤薬局さんで散見される労務管理上の間違い(勘違い)や注意点をまとめていきたいと思います。

・時間外・休日労働協定(36協定)
全店舗の総従業員数を本店にて取りまとめ締結し、本店を管轄する労働基準監督署のみにしか提出していないケースが散見されます。36協定は各店舗ごとで常駐する従業員から“労働者代表”を選出し、その代表者と協定を結んだ上で、その店舗を管轄する労働基準監督署の提出する義務があります。(労働組合が有る場合を除く)
・店舗の営業体系に沿った労働時間の設定
薬局の開局日は近隣のクリニックの診療日、診療時間に合わせて月曜日から土曜日までと設定しているケースが多いと思われます。現状が原則的な法定労働時間(1日8時間、1週40時間:従業員10名未満の店舗は1週44時間)に収まり切る勤務体制なのかどうかを確認する必要があります。収まりきらないのであれば、変形労働時間制を採用するのか、あるいは始業終業時刻を何パターンか定めて、法定労働時間をクリアするように工夫する等の何らかの対処が必要になります。
変形労働時間制を採用するのであれば、導入手続きや運用に瑕疵がないか(法令順守できてるか)、従業員に対する説明や周知が徹底できているか等もチェックしなければならない事項です。
・割増賃金の計算
これも、本来計算のベースに入れるべき手当が計算のベースから外れていたり、きちんと法令通りに支給されていないケースが散見されます。前任の労務担当者から間違った計算方法をそのまま引き継いだりしているケースも見受けられます。現状法令通りの計算方法できっちり算出できているのかを一度チェックされることをお勧めいたします。
・定額残業、込み込み賃金
薬剤師さんを採用する際に、前職でいくらもらっていたかということだけを根拠に、残業代や諸手当等を“全て込み込みで年収700万円!!”というような給与の給与の決め方をされているような薬局も散見されますが、このような『エイ!ヤァー!』的な給与決定の方法は非常にリスクが伴います。
最近の司法判断では、就業規則等に根拠がないような定額残業代に関しては、会社側に厳しい判決が出ています。もしも定額残業のような制度を導入するのであれば、対象になる時間数を決め、就業規則にきちんと根拠を設けた上で運用しなければ、トラブルがあった際に会社側が何も反論できないということになってしまいます。
定額残業代の是非に関する最近の司法判断についての詳細はこちらの記事をご参照下さい。

・定期健康診断
『我々は患者さんに健康を提供することが仕事なので、そこに従事する私達は健康でいることが当たり前!!だから健康診断なんて必要ないんです!』
こういった勘違いをされている人事労務の担当者の方も極まれにいらっしゃるようです。年1回の定期健康診断は労働者安全衛生法で義務付けられている必須事項になります。人事担当者が変わったりして、きちんと年1回できていないようなケースも散見されますので、こういった法定の必須義務はきちんと押さえておきたいところです。
転籍・出向の根拠付けを!
全国展開をされているあるいは、地方一体に店舗展開されている大規模調剤薬局グループでは、グループ内で店舗ごとに法人化されているケースもあるかと思います。そういった場合に社員を同一グループ内で別店舗に勤務させることはグループ内という考え方であれば、単なる配置換えという感覚かもしれません。しかしながら、法的には別法人への『移籍・転籍』『出向』と解釈されてしまいますので、しっかりと就業規則や契約書等への根拠付けがあるいは個別の同意が必要となってくるケースもございます。
上記のような就業規則上の根拠付けがきちんとできているか。当等。。。
きちんと確認しておきたいところですね!!
当事務所では調剤薬局様が適正に労務管理が行えるべく、就業規則の導入コンサルティングをさせて頂いております。