潜在的な未払い残業代の残存リスクと賃金制度再構築の必要性について

潜在的な未払い残業代の積み上げ、放置すると大変なことに…!

今こそ、リスクに備えた賃金制度の再構築を!!

 
 厚生労働省の発表したデータによると、平成29年4月から平成30年3月までの労働基準監督署の監督指導により100万円以上の未払い残業手当の存在が指摘され、是正指導を受けた企業数は1870社となっております。また、指導を受けて支払った額の1企業当たりの平均は約2400万円と多額のキャッシュアウト(現金損失)が是正指導により発生したことになり、これは経営に非常に大きなインパクトが出るのではないかと推察します。労務管理や賃金制度の取り扱いを誤ることによって、労働基準監督署の是正指導レベルでも、経営に関わるほどの多額のキャッシュアウトのリスクがあるということがこのデータから読み取れると思います。

度重なる法改正で残業手当を巡る扱いは経営者に対しさらに逆風に…

 こういった労働局、労基署の厳格な取り締まりの動きに加え、残業手当がさらに経営に大きな負担となってくることが予想される法改正がここ最近連続され施行されております。

 ・中小企業に対する割増賃金率の見直し
 2010年の労働基準法改正で60時間を超える時間外労働については、従来の25%割増から50%割増に引き上げられました。この措置は一定規模以下の中小企業には適用が猶予されていたのですが、2023年(令和5年)4月より中小企業にも適用されることになります。

・賃金請求権の時効の延長
 2020年(令和2年)4月の労働基準法の一部改正により、賃金請求権の時効が従来の2年間から3年間へ延長されました。条文上は『5年間(ただし当分の間3年間)』となっていますので、将来的には民法同様5年間に延長されることが予想できます。対象となる賃金債権は令和2年4月以降に賃金の支払日が到来するものになりますので、3年積算分の未払い賃金の請求が可能となるのは令和5年4月以降となります。

・同一労働同一賃金への対応

 上記のような残業手当に直接インパクトのある法改正ではないのですが、非正規雇用者の均等改善を目的とし2020年(令和2年)4月に施行された『同一労働同一賃金(パートタイム労働法等)』の適用範囲が2021年(令和3年)4月より中小企業にも広がります。こういった部分を加味した賃金の再設計が中小、中堅企業様の直近の必須課題となってきています。

 

監督指導のリスクに加え、訴訟でのリスクも…

 昨今、退職した元従業員からの未払い残業代の請求は、珍しい話でなくなってきているどころか、むしろちょっとした流行と思われるくらいに世の中に蔓延して参りました。

 また、こういった請求行為は労働者一人のみに留まるだけではなくはなく、最近では弁護士、司法書士等の専門家のサポートのもと、集団訴訟等に至るケースも目立ってきております。

 今後もこういった潮流は、一過性で終わることなく、しばらくは続くものと思われ、経営者としては気が抜けない状況が続きそうです。

 そういった背景の中で、ここ昨今の未払い残業代請求に関する訴訟の裁判所の判断は、経営者サイドから見て非常にシビアな状況へと急激に変化してきています。

シビアに変化した最近の判例の事例) 

 最近の判例を一つ挙げると、タクシー会社において従来、慣行的に行われてきた、歩合給を残業手当(の一部)に組み込むようなドライバーに対する賃金設計手法には違法性がある(労基法37条違反)ということを最高裁が明示し、審理を高裁に差し戻すという判決がありました。(国際自動車事件、令和2年3月30日、最高裁)

 従来の慣行により、長年是認されてきた賃金設計のやり方ですら否定されてきているのです。

未払い残業代の隠れ債務の顕在化リスク)

 当事務所では、こういった賃金設計のコンサルの他、企業の労務管理が法的にしっかりできているかを調査する労務監査サービスや、M&Aの際の売り手企業の労務実態の瑕疵を調査する労務デューデリジェンス等、企業の潜在的な未払い残業代(=隠れ債務)を調査する機会がままにございます。そういった現場では、従業員一人当たりの月間の未払い残業の隠れ債務が5万円〜7万円程度に膨らむことも頻繁に遭遇します。もし従業員一人当たりの未払い残業の隠れ債務が7万円/月であって、100名規模の企業であれば…

 7万円×100人×12か月=8,400万円

 これらの未払い残業の累積が3年時効が適用される令和5年4月以降に発覚するとすれば… 

 8,400万円×3年分=2億5千万円以上の未払い残業手当の潜在的なリスクが存在するということになります。 

 こういった経営者に逆風な局面が続くゆえに、企業様、法人様におかれましては、“会社を守る!”という観点から、割増賃金、残業手当という課題の切り口での賃金制度改訂をご検討していただく必要性があるのではないでしょうか?

 いざ、司法の場に引きずり出された場合の金銭的な損失のインパクトや裁判で実名報道され、“ブラック企業”なるあらぬ風評被害を受ける可能性もあるわけです。よってそういったことの予防策も御社は考えておく必要があるのではないでしょうか?

 上記に記載の通り、弁護士のサポートを受けて集団訴訟など起こされた場合は、複数人の原告分の金銭的なインパクトに加え、精神的なプレッシャーや時間的な損失等多大な労力を負うことにもなってしまいます。

 当事務所では、退職従業員からの残業代請求のリスクを改善する、賃金制度再構築のノウハウがございます。

 **当事務所の賃金制度再構築のプロセス(ステップ1から4までの4段階)をご説明しております。よろしければこのままスクロールダウンして読み進めて下さればと思います。

 コンサルティング料金につきましては、御社の業種、従業員数、職種区分、階層、手当の種類等をヒアリングした上でお見積りさせて頂きます。

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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