労基署の監査って一体どんなもの?

労働基準監督署が行う監査、調査、臨検って、どんな種類があるんだろうか…

 

労働基準監督署が行う調査には主に、5種類にカテゴリー分けできるでしょう。

1.定期監督

  年度の計画を定めて行われる監督、監査です。月次によりターゲットの業種を特定して行うようなケースもあるようですし、予め年度の最初にターゲットの事業所をピックアップして行うようなケースもあると聞きます。

 また、多くの労働基準監督署では、“集合監督”という監査を定期監督の一環で年度に2回程度、それぞれ3日間くらいかけて行っています。

 この“集合監督”は所轄管内の事業所をランダムに選び出し、社長または人事責任者に来署依頼を出し、署内の会議室等で各事業所の労務管理の基本事項をヒアリングを行い、法違反があれば違反切符を切る(つまり是正勧告を出すということですが)というような調査業務を執り行います。

 ただし、この“集合監督”は1事業所あたりの調査時間が30−40分程度と時間制限があったり、監督官が実際に事業所内部を直接監査するのとは違い、持参したペーパー資料を基に監査を行うため、(他の監査と比較してですが)あまり厳しい突き上げや追及がないのではないかという、個人的な感想を持っています。

 

2.申告監督

 労働者または元労働者の申し立てに基づいて行う監督監査のことをいいます。申告と言う行為は労働者又は元労働者が個人の権利救済を目的として労働基準監督署に対して、事業所の労働基準法(又は労働安全衛生法)の違反を申し立てる行為を言います。

 基本的な考え方としては、“個別の権利”の救済ということになりますので、例えば未払い賃金や残業代等の労働債権が発生している(と推定できる)ケースに労働基準監督署は労働者からの申告を受理し、事業所に対し調査、監督を行います。

 よって申告した労働者に対する個別の事案と言う側面が強いものになります。もちろんその際に申告した労働者以外の労務状況をチェックし是正勧告を行うこともありますが、基本的に申告事案(給与未払いなら給与未払いの事案)が解決するとそこでクローズとなります。

 この申告に基づく監査は“事業所に法違反がある”という前提での監査になりますので、対応を誤るとやっかいなことになってしまうので注意が必要です。 

 

3.情報監督

 在職労働者あるいはその家族、退職労働者等の情報(いわゆるタレコミですね。)を根拠に行われる監査、調査のことです。情報提供は、来署しての相談、匿名の投書等様々な方法があります。この“情報監督”の際は労働基準監督官は『この事業所には法令違反が存在する!』という前提で訪問してきますので要注意です。

 平成16年の“公益通報者保護法”の施行に伴い、労働基準監督署も労働基準法、労働安全衛生法の法違反の通報窓口となっている関係で、こういった情報監督(特に在職労働者からの情報によるもの)は昨今、非常に注力しているように思われます。

 来署または、電話での情報提供の際に、労基署は情報提供者に対し、事業所を監査するに当たり“会社に対して情報提供者の名前を明かしていいか?”であるとか、“名前は明かせなくても、こういった情報が労働者から寄せられたということを会社に言ってもいいのか?”ということを確認します。

 情報提供者が名前を会社に開示してもいいというケースであればもちろんですが、少なくとも、“情報が寄せられたということを事業所に明かしていい”ということであれば、監督官は情報で寄せられた“法違反があるとさせる”部分をピンポイントで責める、つまり細部に至るまでヒアリングするということになります。

 もし、情報提供者が名前の開示も、情報があったということすら会社に伝えることがNGなのであれば、労働基準監督署としては、定期監査を装って事業所に調査に行くという方法を採らざるを得ないということになります。

 建前上は定期監査であったとしても、実は情報提供(タレコミ)による監査であるということはありえる事なのです。

 上記の“申告監督”もこの“情報監督”も共に“事業所に法違反が存在する”と言う前提で監督官が監査にあたりますが、両者の決定的な違いは申告監督の場合は、申告労働者の名前を開示して、個別の労働債権の救済を行うことを原則としますが、情報監督は寄せられた情報(タレコミ)の真偽の確認はもちろんのこと、事業所の労務管理が法令通りに行われているかが全般的にチェックされる可能性が非常に高いということです。

 情報監督の場合も初期の段階で対応を誤ると、あとあとかなり面倒なことになってくることが予想できます。

 

 4.災害時監督

 労働災害が発生した際し、死傷者が出た場合にに事業場に出向いて行われる監督、監査です。労働災害に至った経緯、原因の特定、安全衛生体制に不備がなかったかであるとか、従業員の過重労働の有無等が主な調査項目となります。

 

 5.再監督

 定期監督、情報監督等で見つかった法令違反が是正されたか否かを確認するための監査です。

 

 調査後、何一つ違反の指摘も受けず、監督官をドヤ顔で「お疲れさまでした!」とお見送りできたら、すごく気持ちといいと思いませんか?当事務所の労務監査を事前に受けていただくとそれが現実に…。

 あくまで当方の私見なのですが、他の都道府県はわかりませんが、大阪府下で限って言うと、こういった監督の場合(特に定期監督)に事業所側(社長あるいは人事労務責任者)に事前にアポを取っている場合の方が多いように思います。抜き打ちで行うケース(これを通常臨検といいますが)もなくはないでしょうが、そういった場合は社長や人事責任者等が不在であったりして、空振りに終わるケースも考えられます。労基署も国の機関である以上は、血税をムダには使えないわけで、内容をヒアリングする相手がいるかどうかわからないのに訪問するというのはリスクがあるからでしょう。

 ただし、従業員から寄せられた情報があまりにも悪質な場合…例えば定時に従業員達にタイムカードを打刻させて、その後にサービス残業を強要しているであるとか、抜け打ちで訪問しないとその現場を押さえられないような事情なのであれば、予告なしに訪問を受けることもあるようです。

 事前連絡で事業所に監査に来るようなケース、あるいは期日を指定して呼び出されるケースであれば、対策を立てる余地がございますので、労基署から連絡があったタイミングで当事務所にご相談頂ければと思います。

 当事務所では労基署の監査の事前の対策立案や監査の立会い是正報告書の作成等でお力にならせていただきます。詳細はこちらから

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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