労働基準監督官ー法律上の立場
労働Gメンー労働基準監督官
その法律的な定義と役割とは?
労働基準監督官とは、厚生労働省に所属する公務員職ですが、労働基準法や労働安全衛生法といった法律の違反に係る捜査、調査を行う“特別司法警察官”です。労働基準法や労働安全衛生法といった法律には罰則が付与されますので、法違反に対しては検察に送致する権限も持ち合わせております。
法律条文では労働基準監督官の職務権限はどのように定義されているのでしょうか?確認してみましょう。
労働基準法101条
“労働基準監督官は事業場、寄宿舎その他の付属建設物に臨検し、帳簿及び書類の掲出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。”
⇒監督官の事業所の立ち入り調査の権限についての記載です。
同102条
“労働基準監督官は法律(労働基準法、労働安全衛生法)違反の罪について、刑事訴訟法に規定する司法警察官の職務を行う”
⇒労基法、安全衛生法違反の事案で重大又は悪質な事案、例えば安全衛生法の違反が原因で、工場で死亡事故が起こったようなケースがあれば、事業主を検察に送致できるような非常に大きな権限を持っていると言うことですね。
しかしながら、労働基準監督官に与えられている権限は、基本的には労働基準法違反及び、労働安全衛生法の違反(労災隠しを含む)のみとなります。よって、民事上の問題や、労働基準法や安全衛生法以外の法律に根拠があるような問題…。例えば、雇用保険法上に規定されている離職票の発行などの問題には介入できません。
わかりやすい例を一つ挙げると、事業主が労働者を即日解雇し、解雇予告手当を支払わないという事案があるとします。労働基準法20条には、労働者を予告なしに即日解雇する場合は、平均賃金の30日分の解雇予告手当を事業主が支払わなければならないことになっています。解雇予告手当の支払いなき即日解雇はこの労基法20条には抵触する行為になりますので、労働基準監督官はこの解雇を手続の部分、つまり、解雇予告手当の支払いに関しては介入することができ、支払うように行政指導を行い、それに従わなければ、検察庁への送致までの権限を持ち合わせているわけです。
しかしながら、解雇理由が正当なのか不当なのかという点においては、労働基準法の中には明確な判断基準が記されていないため、その部分に関しては介入できないということになります。極端な話、社長が従業員Aの容姿が個人的に嫌いだと言う理由でもって解雇したとしても、労働基準監督官は“その解雇は正当な理由がなく無効だから、従業員Aを職場に復職させよ!!”という指導はする権限はないということになります。
ドラマ“ダンダリンー労働基準監督官”では主人公の女性監督官が民事上の問題や労基法以外の問題にまで介入する場面が結構見受けられたように思いますが、あれはあくまでドラマなので、実態とは違います。。。
蛇足ですが、上記の例のような解雇理由が正当なのか不当なのかという、いわゆる民事上の問題に対しては、都道府県労働局の企画室という部署に配属されている“紛争調整官”という役職の職員がその調整にあたります。この“紛争調整官”は主任労働基準監督官クラスの比較的上位職の職員がローテションでその職務を2−3年行いますが、その間はいわゆる“特別司法警察官”という身分ではなくなり通常の厚生労働省の職員的な立場でしかありません。あくまで、民事上あっせんや労働局による指導(いわゆる当事者間同士の話し合いの促進)の調整役に過ぎません。
場合によっては、都道府県労働局長の名前で文書で指導が行われるケースもあるようですが、あくまで民事上紛争である以上、検察庁への送致などそういったことはする権限までは持ち合わせてはいないわけです。
また、各労働基準監督署には都道府県労働局の企画室の出先機関として“総合労働相談コーナー”という民事上の問題を調整するセクションが設けられていることがほほんどです。
もし労働基準監督署から電話があったとしても、最初から必要以上に構えたりしないで、彼らの要件が何なのかを見極める必要があるでしょう。
それが、来社しての調査を求めるものなのか、民事上の話し合いを求めるものなのか、何らかの理由で労基署に呼び出しをしているのか…。それを知ることにより、練ることができる対応策も変わってきます。
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