いざ、“団体交渉”に出向く心構え、留意点

さて、いざ団体交渉‥、どのような点に気を付ければよいのか?対処の心構えとは?

 

留意点その1.最初が肝心

 団体交渉では、事業主と組合間の慣行がルールとして重視される傾向があります。つまり、第一回目の団体交渉のルールが慣行化され、その後も一回目の進行状況通りに運ばなければならないという暗黙の了解が出来上がってくることになってしまいます。つまり一回目で組合側にペースを握られてしまうと、その後の団体交渉でペースを奪い返すことが難しいということになってしまうのです。

 

 1例を挙げると、組合の要求のままに、第一回目の団体交渉を会社の会議室で行ったりすると、その後もし、団体交渉と同じ日時に、社内で会議室を使うような会議が入っていたとしても、“今日は別の社内会議があるので使えない”という抗弁が組合に対して使えなくなってくるわけです。1回目で社内会議室が使われると、慣行として、団体交渉の会場が決まっているということになりかねません

 また、第一回目の団体交渉を組合側が事業主側に要求する場合はたいてい、早い時期の開催を迫り、“O月O日までに回答せよ。”とシビアな回答期日を切って来るものです。なぜなら、組合側も、社長や人事担当者が組合対応に慣れていないということが、わかっているため、準備期間をできるだけ与えないことによって出来るだけ早い段階で交渉の主導権を握りたいからでしょう。

 しかしながら、組合側が指定する期日までに回答しなければならないという法律はありません。ただ、何も回答せずに放置しておくこともできないでしょうから、とりあえず、準備期間も充分考慮したうえで、“O月O日までに文書で回答します。(もちろん組合が指定してきた回答期日を過ぎた日程でも全然OKです。)”と文書やFAXで回答しておけばよいでしょう。

 

留意点その2.開催場所は会社施設、組合施設どちらも避けるべき

 そもそも、組合活動や団体交渉というものは、会社の施設外で行うというのが、原則的な考え方です。よって、会社内の施設で行う必要は全くないし、もし、会社の施設内での開催を了解してしまうと、その後慣行のルールとして、“団体交渉の開催場所は会社の第O会議室”という不文律が出来上がってしまうことになりかねません。また、社内施設で行ってしまうと、双方の主張が平行線をたどった場合に、組合側は主張が通るまで、席を立ってくれないということも考えられます。

 これは逆に、組合側の施設で行う場合も同じで、双方の妥結点が見えない場合、自分達の要求が通るまで、帰してくれないということも考えられます。

 

 団体交渉の場所としては、外部の会議室等を借りて、対応することをお勧めいたします。外部施設を借りるとなると、当然、費用がかかってくることになりますが、ここは、思い切って会社側が負担することにしましょう。会社側が負担することによって、開催場所、開催日時、会議室の確保時間、会議室での位置取り(ポジショニング)等でイニシアチブを取ることができます。また、団体交渉の外部施設の賃料が会社が持つことは、支配介入の不当労働行為には当たりません。

 

留意点その3.社長は出来るだけ、団交の場には出席しない

 団体交渉の場に、社長の出席を組合側が要求してくることがありますが、早い段階では出席しない方がいいでしょう。社長は概して、会社に対して思い入れが強いこともあり、組合批判などの、不当労働行為と受け取られるような失言をしてしまいがちです。また、組合によっては、そういった失言を社長から引き出そうと、交渉の場でわざと社長に集中砲火するようなケースもあります。

人事労務の責任者などが、応対すれば事足りることです。ただし、人事労務責任者も社長から人事労務の権限を任され、採用、解雇、労働条件の決定等で社長と同様の決定権を持っているという前提でないと団体交渉の出席者としてふさわしくないと判断されます。決して団体交渉の場で組合の要求に対し“権限がないから、社長に聞かないとわからない”となどと発言してはいけません。不誠実団交と受け取られてしまう可能性もあるわけです。

 

留意点その4.団体交渉の場ではどんな書類にも署名(サイン)、もしくは記名捺印しないこと

 議事録、覚書、協定書など、名称がどうであれ、組合側、事業主側の双方が、同じ書式内に署名(サイン)もしくは記名捺印をしてしまうと、“労働協約”と同じ効力が発生してしまいます。この労働協約というものが曲者で、労働協約に記載された労働条件や労働者の待遇に関しては会社の就業規則よりも効力が上になります。

 よって、“議事録くらいサインすること自体問題ないだろう”と思ってサインした結果、その後の交渉が事業主側に不利になってしまったということが起こりえるわけです。

 また、労働組合は組合側に有利になるような文章を用意しているケースが多く見受けられます。どんな文書であれ、その場でのサインは断り、“持ち帰って検討する”と回答し、あらためて冷静になってから文書を見直し、あるいは私達のような専門家とどのように対処するか相談してから組合側に回答するべきでしょう。

 

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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