不当労働行為って何?ー労働組合法7条の解釈に関して

不当労働行為とはどのようなことを言うのか?

     ー労働組合法7条の解釈についてー

 

 法律用語で言うところの不当労働行為とは、事業主の労働者に対する職場での不当な扱いのことでも、労働者側が労働の義務を履行しないことでもありません。

 不当労働行為とは、労働組合への接し方で事業主側に禁止されている行為のことをいい、その根拠法は労働組合法7条にあります。

 

 組合の対処に慣れていない中小企業の事業主様や人事担当者の皆さんはこの“不当労働行為”が何なのかという知識が充分でなく、対応を誤るケースが多いように思います。しっかりと知識を拡充していきましょう。

 

 どのようなことが禁止されているか、つまり“不当労働行為”に該当するかと言うと‥

 法律の条文上では以下の4項目が禁止事項として記載されています。

 1)労働組合法7条1号

   労働組合の結成・加入、および労働組合活動を理由とする解雇、その他不利益な取扱い。及び労働組合に加入しないこと、もしくは労働組合からの脱退を条件に雇用契約を結ぶこと(このような雇用契約を黄犬契約といいます。)

 2)同7条2号

    団体交渉拒否

 3)同7条3号

    支配介入(経費援助も含む)

 4)同7条4号

    労働委員会への申し立てを理由とする解雇や不利益な取扱い

 

 これだけではよくわからないと思いますので、それぞれに関して解説を加えていきたいと思います。

 

 1)不利益な取扱い(労組法7条1号、4号)

  これは、労働者が労働組合の設立等の労働組合活動を行ったことを理由として、(または労働委員会への申し立てしたことだけを理由として)該当労働者を解雇やその他不利益な取扱いをした場合に“不当労働行為”となってしまうということです。

 

 ただし、組合員が行った会社に対する非違的行為に対する懲戒処分、能力や実績を鑑みた解雇や配転などの扱いは“不当労働行為”ではありません。

 

 しかしながら、よく問題になるのは、事業主側の意向が、能力や実績、就業態度の基づく処分(あるいは人事考課等)であったとしても、“組合活動を行ったことを理由として”の処分だと主張されるケースが非常に多いということです。

 この点において、労働委員会や裁判でどのような判断基準で見られるのということですが“使用者の言動(組合活動を非難するような発言がなかったか)”であるとか“他の従業員(非組合員)による同じような事例で均衡的な取扱いをしているか”等によって判断しているようです。

 

 2)団体交渉拒否(労組法7条2項)

 全く自社との縁もゆかりもないような労働組合からの団体交渉要求を“アウトサイダーと話し合う必要なない!!”と無下に拒否してしまうと、ここで言うところの団体交渉拒否となってしまうことは、先に述べた通りですが、この7条2項で解釈される団体交渉拒否というのは、こういった全く交渉のテーブルにつかないことはもちろんながら、交渉のテーブルにつくのはついたが、“誠実に対応しない”ということもここで言う団体交渉拒否に当たります。(このことを“不誠実団交”というように表現されます。)

 

 “不誠実団交”と言っても一体どのような行為が“誠実に対応しない”というように判断されてしまうのでしょうか?

 判例では、

  “使用者は労働組合の要求や主張に対して、回答や事業主側の主張の根拠を具体的に説明し、あるいは、必要な資料を提示する”

 “結論において、組合側の要求に譲歩できないとしても、その論拠を示して反論する”

 などの努力義務が課せられているとされています。

 この努力義務というのが、あいまいの表現で曲者なのですが、要するに、組合側の要求に対して、何も根拠を示さないまま、ただただ、『できない、できない』と渋っているだけなら、“不誠実団交”と受け取られてしまう可能性がありますよ、ということですね。

 

 また、この“不誠実団交”の解釈でよく誤解されていることなのですが、事業主側が組合側の要求や主張に対し、一歩の譲らないこと自体は、不誠実団交にはなりません。この法律で事業主側に要求されていることは、回答や主張の根拠を具体的に組合側に示し、必要に応じて資料などを提示することに留まり、意にそぐわない要求に対して無理やり妥結したりすることまで要求しているわけではありません。

 

 3)支配介入(労組法7条3号)

  この法律でいうところの“支配介入”とは次の2つの事項を指します。

  a)労働者が労働組合を結成し、運営することを支配もしくは介入すること

  b)労働組合の運営のための経費の支払いにつき、経理上の援助を与えること(経費援助)

 

 例によって、これだけではわかりにくいと思いますので、具体的に見ていくことにしましょう。

 a)でいうところに“支配介入行為”についてご説明していきます。

 この法律でいうところの“支配介入行為”というものは色んなケースを幅広く“支配介入”と解釈されうる可能性があります。

 “支配介入行為”で代表的なのは『事業主側からの労働組合結成の妨害行為、けん制行為』『労働組合に対する中傷等、組合敵視の発言』『労働組合の脱退を強く勧めること』なのが挙げられます。

 

 また、1事業所に複数の組合が存在するケースで『事業主側と協調路線を歩んでいる組合に事務所や掲示板の貸与等の便宜供与をするが、もう一方の組合に対して同様の扱いをしない場合』や『少数派組合に対抗し、事業主側が企業内組合を意図的に設立するように働きかける行為』も支配介入行為となってしまいます。

*事務所貸与の便宜供与については、例えば、スペース的にもうこれ以上の余裕がない等の正当な理由がある場合は、支配介入と判断されないケースもあります。

 

 b)の経費援助について説明します。

  経費援助というのは、例えば、組合専従の従業員や事務員の給与を会社側が負担しているケースはこの“経費援助”になってしまうためNGです。

 この条文は事業主側の組合に対する経費援助を原則禁止しているのですが、例外的に以下のような行為は、経費援助にはあたらないのでOKとされています。

 ・組合員たる従業員が就業時間中に事業主側と団体交渉や協議をする時間分の給与をカットしないこと。

 ・掲示板や最小限の事務所の供与

   (事業主に義務があるわけではありませんので、供与しなければならないということではありません。ただし、複数組合存在する時は注意が必要です。上記a.)のところに記載した内容を参照下さい。)

 

 いかがでしょうか?

 

 対応に慣れていないと知らず知らずのうちにこういった“不当労働行為”になりそうなことをやってしまいがちなので上記記載の内容を一度チェックしてみて下さい。

当事務所では、組合との団体交渉に向けた事前準備等でお力にならせていただきます。

  当事務所の 『労働組合(ユニオン)団体交渉サポートサービス』はこちら

 

 お問い合わせは以下のバナーをクリックしてください。

この記事が含まれるページ全体を閲覧する場合は

 こちらから  “合同労組との団体交渉にはこう備える”のページのトップへ

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

免責事項

当ホームページは情報の掲載に関しては、万全を施すべく尽力しておりますが、サイト運営者の私見に基づく記述も含まれるため、全ての事案に対しての絶対の保証をしているわけではございません。また、法改正や制度変更の際は記事の更新が遅れることがあります。当ホームページ掲載の情報の取扱いに関しては、閲覧者の責任においてお扱いいただきますようにお願いいたします。当ホームページ掲載情報の扱いに際し、個人もしくは法人が何らかの損害を被ったとしても、児島労務・法務事務所ではその責任を負いかねます旨予めご了解下さい。

Copy Right:児島労務・法務事務所 2008

当サイト掲載コンテンツの全部または一部の無断複写・転載・転記を禁じます。

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
06-6673-7856

受付時間:9:00~18:00
定休日:土日祝祭日

大阪の社労士、就業規則の児島労務・法務事務所のホームページです。
就業規則の作成・変更を主力業務としている、大阪市住吉区の社会保険労務士です。元労働基準監督署相談員・指導員の代表社労士が長年の経験を活かし、御社にフィットする就業規則・賃金制度をご提供します。

サポートエリア)
最重要エリア)大阪市、堺市、吹田市等を含む大阪府下全域
重要エリア)京阪神地区、奈良地区
*オンライン(Zoom)でのお打合せにより就業規則作成、賃金制度構築等のサービスは全国対応可能です。大阪より遠方のお客様もお気軽にお尋ねください。

サービス内容のご質問、お見積もり依頼歓迎。

込み入った事案の労働相談は必ず事前予約下さい。(飛び込み対応は致しません)

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ

06-6673-7856

<受付時間>
9:00~18:00
※土日祝祭日は除く

ごあいさつ

大阪の社労士、行政書士の児島です。私は10期勤めた労基署の相談員時代に、通算件数15,000件以上もの労働相談を受けてきました。また、年間に300件以上の民間企業・法人の就業規則のチェックを行っており、これらの経験で培った、労働トラブルの予防に対する引き出しの数の圧倒的な多さが当事務所の武器です。

就業規則の
児島労務・法務事務所

住所

〒558-0045
大阪市住吉区住吉2-5-28

営業時間

9:00~18:00

定休日

土日祝祭日