1日6時間の短時間勤務の制定が必須となります。(改正法23条1項)

 改正前の育児休業・介護休業法では、育児のための勤務時間短縮措置として、事業主側の義務として、以下の①から⑥のどれかの措置を事業主の裁量で選択すればよいという制度でした。

3歳に達するまでの子を養育する労働者に対して

①育児休業制度に準ずる措置

②短時間勤務制度の導入

③フレックスタイム制の導入

④始業・終業時刻の繰上げ・繰り下げ

⑤所定外時間外労働の免除

⑥事業所内託児施設の設置もしくはこれに準ずる便宜の提供

 

よって今までは、③の制度を導入しようが、④の制度を導入しようが、事業主側の勝手に選んでもよいという趣旨だったのですが、改正により、②短時間勤務制度と⑤所定外時間外労働の免除は必須義務となります。

⑤の所定外時間外労働の免除は後述するにして、ここでは②短時間勤務制度の導入に際しての労務管理上の留意点に関して、説明していきたいと思います。

 

この短時間勤務制度について省令では、“1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置を含むものとしなければならない”と定められています。

 

“原則6時間”の解釈の仕方なのですが、行政通達(平21・12・28 職発1228第4号等)によると

『1日の所定労働時間を6時間とすることを原則としつつ、通常の所定労働時間が7時間45分である事業所において短縮後の所定労働時間について1日5時間45分から6時間までを許容する趣旨である』となっています。

 

よって、この6時間の短縮というのは、法定労働時間の8時間労働がたたき台になっていると思われ、法定の8時間を下回る所定労働時間の事業所にはある程度の融通があるように思いますが、しかしながら、所定労働時間が7時間の事業所が短縮後に5時間から6時間までを許容するものではありません。法定を下回る労働時間を設定している場合でも、短縮後は5時間45分から6時間の範囲内で所定労働時間を設定するのが無難でしょう。

 

また、短時間勤務のバリエーションを色々取り揃えて(ex: “週4日勤務コース”、“1日6時間30分勤務コース”等)、労働者側に選択権を持たせるような方法を設けることも可能ですが、この場合には対象労働者が“1日6時間”のコースが選択できる状態になっていなければならないという解釈になります。

 

適用除外者と労使協定

 改正育児・介護法では、短時間勤務制度の適用除外者を以下のように定めています。

 A.1日の所定労働時間が6時間以下の労働者

   (6時間以下の所定労働時間をさらに短縮する必要はないため、措置の適用除外となります。)

 B.次のa〜cに該当する労働者(但し、労使協定の締結が必須条件です。) 

  a.雇用期間が1年未満のもの

  b.1週間の所定労働日数が2日以下のもの

  c.業務の性質または業務の勤務体制から考慮すると、所定労働時間の短縮の制度の適用が困難だと認められる業務に携わるもの。

  となっており、特にc.に関しては厚生労働省が出している指針として、以下のような業務や事業所が該当するとなっております。

 ①国際路線等に就航する航空機において従事する客室乗務員等の業務

 ②労働者数が少ない事業所において、その業務に従事する労働者数が著しく少ない業務

 ③流れ作業方式による製造業務であり、かつ、短時間勤務のものを勤務体制に組み込むことが困難な業務

 ④交代制勤務による製造業務であり、かつ短時間勤務のものを勤務体制に組み込むことが困難な業務

 ⑤個人ごとに担当する企業、地域等が厳格に分担されていて、他の労働者では代替が困難な営業業務

 

 c.の適用除外条件の指針①〜⑤をお読みいただいても分かるとおり、きちんとした線引きができているわけではありません。(特に②)。よって労使協定により適用除外者を設定する場合は慎重に吟味する必要があるわけです。

 

また、c.の適用除外者を労使協定で定める場合は、適用除外者に対し、以下(ⅰ)〜(ⅲ)のいずれかの代替措置を講じるように事業主側に義務付けています。また、どのような代替措置を講じるかということも含めて労使協定の中に盛り込まなければなりません。

 (ⅰ)フレックスタイムス制

 (ⅱ)始業・終業時刻の繰上げ・繰り下げ

 (ⅲ)託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与

 

この、短時間勤務制度の適用された労働者に対し、勤務時間が削られた部分までは賃金が発生するのかというと、原則はノーワークノーペで、支払い義務までは発生しません。(協定で支払うとしてももちろん労働者有利の扱いなので構いませんが…。)また、賞与の算定や退職金の勤続勤務年数の算定においても、現に働かなかった時間や日数部分を差し引いても、不利益な取扱いには該当しないと解釈されます。しかし、現に労働しなかった時間以上に、差し引き算定すると不利益な取扱いとなってしまいますので注意が必要でしょう。

 

また、ここで気をつけなければならないのは、一定期間の有期雇用契約の労働者や、時間給契約をしているいわゆるパートタイマーも適用除外にはできない点です。

 有期雇用者であっても、1年以上雇用されるに至った後はこの制度の対象となりますし、パートタイマーであっても、実質6時間超の所定労働時間で週3日以上所定労働日がある場合はこの制度の対象としなければなりません。

 

 平成24年6月30日以降は、この制度の導入を猶予されていた、中小企業も制度の導入が必須となっています。 

 

 

今回の育児休業・介護休業法の改正に際して、就業規則見直しや、労使協定の締結等、労務管理上でやるべきことがたくさんある、企業さん、事業主さんがほとんどだと思います。特に労使協定に関しては慎重に吟味を行わなければ、あとで従業員と揉める元凶となってしまうでしょう。当事務所では、改正後の育児休業・介護休業法の労務管理上の対応に関してお力にならせていただきます。

上記の助成金の受給要件に該当するように制度導入をしたい場合なども、ご相談下さい。

 

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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