改善基準告示とトラック運送業の労働時間管理のポイント
トラックドライバーの主な就業形態
トラックドライバーの就業形態は大きく分けて次の3パターンになります。
地場輸送 ― 地元を中心とした輸送形態で、原則として1日完結型の業務です。暦日をまたぐような勤務にはなりにくい形態です。
作業輸送 ― 引越し便や倉庫でのピッキング作業を伴い、運転以外の業務もある勤務形態です。運転時間と同等またはそれ以上に荷役等の作業時間の占有率が高くなります。
長距離輸送 ― 片道距離が300kmを超える輸送を業態とするものです。業務が1日で完結することは物理的に不可能であるため、車内での仮眠等が不可避となります。長時間労働・過重労働の温床となりやすく、行政からの重点指導の対象となることが多い形態です。
2024年4月改正の改善基準告示 ― 何が変わったのか
ドライバーには労基法の労働時間規制(1日8時間、週40時間)に加え、「改善基準告示」というドライバーのみに適用される追加規制が設けられています。この改善基準告示は2024年4月に改正施行され、拘束時間や休息期間の基準が大幅に見直されました。
改正後の主な規制内容は以下のとおりです。
ドライバーには労基法の労働時間規制(1日8時間、週40時間)に加え、「改善基準告示」というドライバーのみに適用される追加規制が設けられています。この改善基準告示は2024年4月に改正施行され、拘束時間や休息期間の基準が大幅に見直されました。
| 規制項目 | 改正後の改善基準(2024年~) |
| 1年の拘束時間 | 原則:3,300時間以内(労使協定により最大3,400時間) |
| 1か月の拘束時間 | 原則:284時間以内(労使協定により最大310時間、年6か月まで) |
| 1日の最大拘束時間 | 原則:13時間以内、上限15時間(14時間超は週2回までが目安)。ただし、宿泊を伴う長距離貨物運送の場合は週2回まで16時間まで延長可 |
| **休息期間 | 継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないこと
|
| 連続運転時間 | 4時間以内。運転開始後4時間以内又は4時間経過直後に30分以上の休憩等を確保(1回おおむね10分以上で分割も可)。 **連続運転の中断時には原則として休憩を確保する必要があり、荷積み・荷下ろし等の作業による代替は特段の事情がある場合の例外的な取扱いにとどまる |
トラック運送業の改善基準告示における規制時間の概念、用語の定義
労働時間=運転時間+作業時間+手待ち時間
拘束時間=労働時間+休憩時間
休息期間=1日24時間−拘束時間
**休息期間は勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠を含むトライバーの自由時間、生活時間と定義される
改正前と比較した最大のポイントは、休息期間が「継続8時間以上」から「継続11時間以上を基本、最低でも9時間」に引き上げられたことです。これにより1日の拘束時間の上限も実質的に短縮され、特に長距離輸送を主業務とする事業者にとっては、配車計画や運行管理の大幅な見直しが必要になっています。
時間外労働の年間上限規制 ― 罰則付きで適用済み
2024年4月より、自動車運転業務についても時間外労働の年間上限が960時間と定められました(労働基準法第36条)。違反した場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
一般業種に適用される「月100時間未満」「2〜6か月平均80時間以内」といった単月ベースの上限規制は自動車運転業務には適用されませんが、年間960時間の枠内で計画的に労働時間を管理する必要があります。年間の前半に残業が偏り、後半に稼働できなくなるような事態を避けるため、単月ごとの残業計画と実績管理を着実に行うことが大切です。
労働時間管理の精度を高める「マイクロマネジメント」の推奨
トラックドライバーの労働時間管理を難しくしている大きな原因の一つは、「非運転時間」の取扱いです。非運転時間が休憩だったのか、荷役等の作業だったのか、荷主都合の手待ち時間だったのかを、正確に判別できる管理体制を構築することが必要不可欠です。
マイクロマネジメントとは、業務の細部まで把握・管理する手法を指します。ドライバー業務は外勤であるため、あらゆる行動を逐一指図する形態には向きませんが、少なくとも労働時間・休憩時間・休憩場所の特定はきちんと経営者側で把握しておかなければ、本来は労働時間に算入する必要のない非運転時間まで労働時間として扱われるリスクが生じます。
デジタルタコグラフ、運行記録計、GPSによる位置情報管理等のあらゆるツールを活用し、「運転時間」と「非運転時間」を特定し、非運転時間のうちどこまでが労働時間でどこからが休憩時間なのかを立証できる管理体制を確立することが重要です。
改善基準告示における「連続運転時間4時間以内、30分以上の非運転時間の確保義務」を活用し、オン・オフの切り替えを制度として管理する体制を構築して就業規則に明記しておけば、非運転時間を労働時間と判定されるリスクは格段に低減できます。
また、長距離輸送の場合に労働時間の算定が困難であっても、過去の実績やテスト走行等の確固とした根拠に基づいた行き先ごとの「標準労働時間」を算定しておくことは、有効な対策の一つです。
今後の法改正動向にも注視が必要
2026年通常国会への提出は見送りとなりましたが、約40年ぶりとされる労働基準法の大改正議論は継続しています。検討されている主な論点として、14日以上の連続勤務の禁止、勤務間インターバル制度の義務化(11時間を原則)、法定休日の特定義務化などがあります。
改善基準告示ではすでに11時間のインターバルが原則とされていますが、一般法として義務化された場合には就業規則の改定など新たな対応が求められることになりますので、動向を注視しておくべきです。
当事務所ではトラック運送業の労働時間管理方法、賃金体制や就業規則の見直しで労務トラブルのリスク軽減のお力添えができます。ご相談は以下のバナーより