高度プロフェッショナル制度の創設(2019年4月 改正労基法)

『高度プロフェッショナル制度』が新たに創設されます。

 

 高度プロフェッショナル制度とは?

  国が定める高度な専門職でかつ年収が一定水準以上(1075万円以上)の労働者を高度プロフェッショナル職とし、労働時間の規制対象から外す制度。

 

 *国が定める専門職は『省令で定める』となっていますが、現時点(平成31年1月1日)ではまだ、具体的なアナウンスはありません。

 

 従来からある労働時間等の規制の適用除外者との違いは?

  労働時間(法32条) 休憩時間(法34条) 休日(法35条) 深夜割増賃金(法37条)
高度プロフェッショナル対象者 適用除外 適用除外 適用除外(*) 適用除外
裁量労働対象者(専門業務型、企画業務型) 適用(**) 適用 適用 適用
事業場外みなし対象者 適用(**) 適用 適用 適用
管理監督者 適用除外 適用除外 適用除外 適用

 * 高プロ対象者は建前上は休日の適用除外者となりますが、健康確保措置により休日104日以上の確実な取得が導入要件(後述)となりますので、実務上は休日管理は必須となります。

 **裁量労働等のみなし労働時間の対象者は労働時間の法規制に関して適用除外となっているわけではなく、実際に何時間労働しているかに関わらず、労使協定等を根拠として『1日〇時間労働したものとみなす』だけなので、そのみなし時間が8時間を越えていれば、36協定の締結が必須ですし、割増賃金の支払いも必要となります。

 

 導入要件)

  ① 労働委員会を設置

  ② 労働委員会にて決議事項について委員の5分の4以上の賛成の意を得て可決

  ③ ②で可決した決議届を所轄の労基署に届出

 

 決議事項)

     ーどのようなことを労使委員会で決議しなければならないか

  ・対象業務

      厚生労働省令で定める業務から選択

  ・対象労働者の範囲

      年収要件等あり

  ・健康管理のため、対象業務に就く対象労働者の事業所内にいた時間と事業場外で労働した時間の合計(以下健康管理時間と記す)を把握する措置。

  ・対象業務に就く対象労働者に対して、使用者が年間104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日の確保を行うこと。

  ・対象業務に就く対象労働者に対し、使用者が次の①〜④のいづれかの措置を講じること。

   ①インターバル措置

   ②1ヶ月または3ヶ月間の在社時間等の上限措置

   ③2週間連続の休日確保措置

   ④臨時の健康診断

  ・対象業務に就く対象労働者の健康管理時間(⇒事業場内時間+事業場外時間の合計)の長さに応じた健康・福祉の確保のための措置

  ・対象労働者の同意の撤回の手続き

  ・対象業務に就く対象労働者の苦情の処理に関する措置

  ・高度プロフェッショナル制度に同意しなかった労働者に対する不利益な取り扱いの禁止

  ・その他厚生労働省令で定める事項

 

 制度導入後、事業主が負う義務について

  定期報告

  事前に届出された決議届で決議された事項の以下の部分ついてはさらに実施状況・運用状況を所轄労基署に定期的に届出る必要があります。

  ・年間104日以上、4週につき4日以上の休日の確保状況

  ・①インターバル措置②在社時間の上限措置③2週連続の休日の確保措置④臨時の健康診断、のいずれか実施した措置の実施状況

  ・健康管理時間に応じた健康、福祉の確保措置の実施状況

  医師の面接指導

  単月100時間超の時間外労働(1週40時間超の時間をカウント)があった場合は、労働安全衛生法66条8の4に基づき医師による面接指導を実施させなければならなくなります。

 

 高度プロフェッショナル制度は労働時間が必ずしも成果に一致しない、『ホワイトカラ職種』『知的職種』にぴったり制度に思えますが、上記で見て来た通り、導入や導入後の運営に対し多くの超えなければならないハードルが設置させています。

 また、ホワイトカラー職なら、どんな職種でも『高プロの対象職』になるというわけではなく、アナリスト等非常にレアな知的職種に限定されそうな感じです。なおかつこれに年収要件も加わってきます。

 

 『高プロ』の導入も、ホワイトカラー職の有力な生産性向上や残業手当高騰対策になるとは思います。ただ、職種が限定されていたり、導入へのハードルが高かったりと、採用を躊躇される企業さんも多いのではないでしょうか?『高プロ』に限定することなく、ホワイトカラー職の生産向上を実現できる策はないものでしょうか?

 

 当事務所ではホワイトカラー職、知的職業層の従業員に対しては『業務の時間割作り』、『業務ブレイクダウンによる優先順位付け』等を行い、生産性向上策、残業時間削減策をご提案しております。

 今回の『働き方改革』関連の法改正は企業側が『生産性向上』『労働時間短縮』という命題を国から突きつけられたものが非常に多い改正となっております。“改善したくても何からやっていいのかがわからない”“どのように進めていけばよいのかわからない”という経営者の方も多いのではないでしょうか?

 当事務所では、訪問による診断を初回無料にて行っています。働き方改革に向けて何をどのように舵を切ったらよいのかをアドバイスさせていただきます。(大阪から遠方の事業者様も交通費等の経費の折り合いが付けば対応致します。)

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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