女性薬剤師の活躍推進と短時間正社員制度

全体の6割を占める女性薬剤師を「辞めさせない」ことが、最強の採用戦略です

何度もお伝えしている通り、全国の薬剤師329,045人のうち、女性が**203,979人で62.0%**を占めています(令和6年厚労省統計)。調剤薬局の現場を支えているのは、圧倒的に女性薬剤師です。

 

ところが、結婚・出産・子育てのタイミングで正規雇用を離れてパートに移行する方が多く、そのまま現場を離れてしまうケースも少なくありません。先ほど申し上げた通り、薬剤師1人を新たに採用するのに80〜180万円のコストがかかる。離職を防ぐための仕組みに投資するほうが、はるかにコストパフォーマンスが良いのは明らかです。

 

・「フルタイムか、パートか」の二択しかない薬局は、人材を失います

 

多くの薬局で、勤務形態の選択肢が「フルタイム正社員」か「パート」かの二択になってしまっています。子育て中の女性薬剤師にとって、フルタイムは物理的に厳しい。でもパートになれば処遇が大幅に下がり、キャリアも途切れる。この二者択一が、優秀な薬剤師を現場から追い出してしまっているわけです。

 

ここで導入を検討していただきたいのが**「短時間正社員制度」**です。

 

・短時間正社員制度とは

 

短時間正社員制度は、所定労働時間はフルタイムより短いけれども、正社員としての雇用形態・処遇は維持するという仕組みです。

 

たとえば、

 

パターンA:週30時間勤務(1日6時間×週5日)  

パターンB:週32時間勤務(1日8時間×週4日)

 

いずれも正社員として、社会保険・賞与・昇給・キャリア評価の対象となります。給与は労働時間に応じた比例計算になりますが、時間単価はフルタイム正社員と同じです。

 

2020年施行のパートタイム・有期雇用労働法(いわゆる同一労働同一賃金法)、2025年改正の育児・介護休業法により、こうした柔軟な勤務形態の整備は法的にも後押しされています。

 

・導入するメリット

 

①採用コストの削減──いま在籍している女性薬剤師が辞めずに済む。1人の離職を防ぐだけで80〜180万円の採用コストが浮く計算です。

 

②薬局のブランド力向上──「育児をしながら正社員で働ける」という情報は、採用市場で非常に強いメッセージになります。とくに女性薬剤師が就職先を検討する際、こういった制度の有無はかなり重視されています。

 

③夕方以降のシフト問題の緩和──短時間正社員を午前〜午後の時間帯に配置し、フルタイム正社員を夕方以降に集中させるといった柔軟なシフト設計が可能になります。

 

・「コスト」ではなく「投資」として捉える

 

短時間正社員制度の導入には、就業規則の改定、賃金テーブルの整備、評価制度、退職金制度との接続など、一定の準備が必要です。「手間がかかる」と思われるかもしれません。

 

しかし、考えてみてください。全体の6割以上を占める女性薬剤師の離職を防ぐことは、新規採用に走り回るよりも確実で、しかも即効性があります。いま御社にいてくれている薬剤師さんたちこそが最大の資産であり、その資産を守るための仕組みが短時間正社員制度なのです。

 

当事務所では、短時間正社員制度の設計から就業規則への落とし込み、退職金制度の改訂、賃金テーブルの整備、評価制度との接続まで、一貫してお手伝いさせて頂いております。多様な働き方を検討し、女性薬剤師の活用方法を探りましょう。

 

 ※本記事は2026年4月時点の法令・統計に基づいています。出典:厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計(令和6年)」、パートタイム・有期雇用労働法、育児・介護休業法(2025年改正)

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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