社用車、マイカー使用時の交通事故と会社側のリスク

もしも、社員が業務使用中の社用車で人身事故を起こしたら‥

   会社はどのような責任を背負うのか?

 従業員が業務中に社用車、またはマイカーを業務使用していた際の事故について、基本的に会社側は民事的な賠償責任を負うことになります。また、その事故が人身事故でかつ会社側が従業員に過重労働を課していたことが原因で起こった事故、あるいは無理な過重な積載が原因で起こった事故だとすれば、民事的な賠償どころではなく、会社側は刑事的な責任を負う事も場合によっては考えられます。

 何よりも会社側にとっては、最もインパクトのあるリスクとしては民事上の賠償責任ということになってくると思いますが、その損害賠償額も、昨今“被害者保護”という概念が色濃く出ており、額の高騰化が顕著に現れています。被害者が年収が高い人で障害が残った場合などは、賠償額が1億円を超えることが珍しくない状況となっています。

 “ウチは保険にちゃんと入っているから大丈夫!!”そのようにおっしゃられる経営者の方もおられるでしょう。マイカーの業務使用などの場合、昨今のリスク細分型の保険に加入していたとしても、業務上の事故が保険の対象外と判断され、保険が効かないことの充分に可能性としてはあり得るのです。

 このようなリスクを避けるために会社側はどのような予防策を講じるべきなのでしょうか。

このページでは、会社としての業務中の交通事故の企業責任の予防策をレクチャーしていきます。

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業務上の自動車事故と“使用者責任”

業務上の自動車事故と“使用者責任(民法715条)”の関係

1つ前の記事で“従業員が業務中に社用車、またはマイカーを業務使用していた際の事故について、基本的に会社側は民事的な賠償責任を負う”と述べましたが、その根拠となるものが、民法715条に規定される“使用者責任”と言われる概念、及び自動車損害賠償保障法の3条に規定される“運行供用者責任”の考え方です。

この記事では、民法715条に規定される“使用者責任”を解説していきます。

そもそもこの民法715条にはどのような条文なのでしょうか?

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民法715条ー使用者等の責任

 ある事業を行うために他人を使用するものは、使用される者(被用者)その事業を行うに際しての第3者に与えた損害を賠償する責任を負う。ただし使用する者(使用者)が使用される者(被用者)の選任及びその事業の監督について相当の注意を払っていたとき、または相当の注意を払っていても損害が発生していたと考えられるときは、この限りではない。

 2.使用するもの(使用者)に代って事業を監督する者も前項の責任を負う。

 3.前の2つの規定があっても、使用するもの(使用者)又は監督するもの(監督者)は使用される者(被用者)に対し求償することは可能である。

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というような条文となっております。

条文を見ていただいてお解りだと思いますが、特に自動車事故に限定しているわけではありませんので、例えば取引上や業務上のミスなどにも広く解釈が及ぶ考え方です。

自動車事故の際は一般的に物損事故に対してよく登場する条文と言えます。といいますのは人身事故の際は、後の記事でご説明する、自賠法3条の“運行供用者責任”の概念が先行するためです。

この“使用者責任”が成立する要件としては、以下の3つです。

1)ある事業を行うために他人を使用していること

2)その事業の執行についての事故であること

3)使用されているもの(被用者)が第3者に対して何らかの損害を与えてしまったこと。

このなかでも特に1)と2)に関しては、広義に解釈されておりますので要注意事項になります。以下に補足の説明を加えていきます。

1)ある事業を行うために他人を使用していること。

 この解釈は、実際に雇用契約や労働契約がなくても、実質使用者側の指揮命令が及んでいれば、1)の要件が満たされるという解釈となります。

 例えば、名目上はいわゆる一人親方との請負契約を締結している、自動車運送業などは実態として請負業者を配達の順番や経路などで事細かい指示をしていたならば、それは指揮命令権があったと認められ、この1)の要件が認められやすくなるでしょう。(まあ、そもそも、そのような指示をしている時点で、請負契約が否定され、労基法上の労働者性が肯定される可能性もあるでしょうが‥。)

 また、他社や取引先業者等の従業員を実際に業務の詳細に渡り指示命令しているケースもこの要件1)に該当するでしょう。派遣労働者を受け入れている派遣先企業は注意を要することになります。また、いわゆる“偽装請負”のような形態で他社の従業員を指示しているようなケースであれば、法令違反のリスクなみならず、民事賠償上のリスクを背負わなければならない可能性が非常に高いといわざるを得ません。何らかの対策が必要になってくるでしょう。

2)その事業の執行についての事故であること

 この要件2)に関しても、判例は広い意味で解釈しています。つまり、使用される者(被用者)が厳密に業務を遂行中でない場合も、はたから見た場合に仕事中だと思われるならば、要件を満たし、民法715条が適用になるという考え方を裁判所は採用しています。

 具体的には社用車を、無断で従業員が私用で用いた場合の事故も、実際は仕事中ではなくても会社側に“使用者責任”が重く圧し掛かってくるくるということになってしまいます。

 このようなことを避けるためには、社用車の使用のルールを作成し、しっかり管理していくしかないのです。

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業務中の自動車事故と“運行供用者責任”

業務中の人身事故と“運行供用者責任”について

運行供用者責任とは、自動車損害賠償保障法(以下自賠法と略します)の3条にその定めがあり、人身事故の被害者救済がその目的となっています。1つ前の記事で解説した、民法715条の“使用者責任”が主に物損事故を想定したものですが、こちらは人身事故の際の法律概念として登場します。

以下でご説明しますが、“被害者保護”を前提とした法律なので、人身事故の際、会社側に重い責任が圧し掛かってくるような法解釈となっております。

まずはこの運行供用者責任が記載された、自賠法3条の条文を見ていきましょう。

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自賠法3条(運行供用者責任)

自己のために自動車の運行の用に供する者(運行供用者)は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任が生じる。

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となっています。この条文でのポイントは“運行の用に供する者(運行管理者)”と“運行”がそれぞれどのような解釈になってくるのかということです。

運行供用者とはどのような解釈で考えるのでしょうか?

 条文上では“自己のために自動車の運行の用に供する者”との記載ですが、この表現ではあいまいでピンと来ないのではないでしょうか?

 簡単に説明すると、対象となっている車(車両)を利用することで、会社側が何らかの支配を及ぼしていたり、あるいは、いくばくかの利益を得ていれば、“運行供用者”として責任が圧し掛かってくる可能性がありますよ。ということです。

 よって、車両の所有者が会社なのであれば、その車両に“支配を及ぼしている”ことになりますので、“運行供用者”としての責任を免れないわけです。

 また、会社側が従業員のマイカーを業務で使用させているようなケース、あるいはマイカーの業務使用を会社側は知りながらも黙認していたようなケースであっても、その車両を業務使用することで会社側は“いくばくかの利益を得ている”ということになりますので、これら両方のケースであれば、ともに、会社側に“運行供用者”としての責任がかかってくることになります。

“運行”の解釈

 次にこの条文上の“運行”がどのように解釈されるかということですが、これも広い意味での解釈となります。つまり、車両に乗車して走っている状態だけを指すものではなく、ドアや荷台部分など車両の付属部分に掛かる事故やクレーン車などの特殊車両のクレーン動作時の事故なども、“運行”と解釈されることとなります。

この“運行供用者責任”で非常にやっかいなのが、免責についてです。

通常の民法の不法行為などは、被害者側が被害を受けたことを立証する立証責任があるのですが、この自賠法の考え方は加害者側、つまり運行供用者が運転などに落ち度がなく、被害者側に過失等があったこと立証しなければ、免責されない規定になっています。

 よって賠償を請求された加害者側(会社側)としては、仮に裁判等になった場合においても厳しい立場に立たされてしまうことになります。

 このようなことを回避するために、会社側としての予防策として、車両管理規定の整備が必要となってくるわけです。

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ケーススタディー“運行供用者”の判断基準

どのような場合、会社側は“運行供用者”としての責任を負うことになるのか

         −社用車使用時、マイカー使用時‥それぞれの法的考え方ー

こちらの記事では、ケーススタディで会社側の“運行供用者”としてのリスク解説していきたいと思います。

会社側が“運行供用者”としての責任がかかってくるかどうかという問題に関して、その事故が“社用車使用時”に起こったものか、また“従業員の自家用車使用時”でのものなのかという点で分けて考える必要が出てきます。

A.社用車使用時の事故

 原則として、社用車使用時の事故は車両の所有者である会社が、運行供用者として被害者への損害賠償等の責任を負うことになります。

 ただし、以下のような微妙なケースではどのようになるのでしょうか?

 1)車両が盗難に遭い、その車両が人身事故を起こした場合

  結論から言うと、このようなケースであっても、原則会社側は運行供用者としての責任を負わなければなりません。車両の所有者である会社から見れば、酷な話にも見えますが、自賠法が被害者救済という着眼点で施行されている以上、この法解釈はある意味、妥当と言えるでしょう。。

 ただ、この法解釈には例外があります。

  盗難から相当時間が経過した後の事故に関しては、会社側の運行供用者責任が免責される可能性が強くなります。この“相当時間の経過”がどのくらいの時間の経過を指すのか‥。それは盗まれ方の状況によってケースバイケースです。短いケースだと1週間、長い場合だと1ヶ月程度は会社の車両所有者としての責任が存続すると考えられます。

 つまり、鍵を付けっぱなしであったである等、ルーズな管理状態で盗難にあった場合では、会社側の運行供用者責任が長い間存続すると考えられますが、管理者として盗難防止の最大の配慮をしたにも関わらず、盗まれてしまった場合は、責任は短期間で消滅すると考えられます。

 また、どのタイムミングで盗難届を出したかというのも一つのポイントとなります。判例の中には、盗まれた後、すぐに盗難届を出したことが推酌されたようなケースもあります。

 こういったリスクを防ぐために会社側ができる方法としては、車両管理規程の中で、社用車の駐車の際の注意点(盗難防止のためのロック、キー、駐車場所等)のきちんと規定し教育すること、合わせて万が一盗難に遭った際の行動マニュアル(会社、警察への連絡、盗難届の提出)なども合わせて規定しておくべきでしょう。

 2)従業員が無断で私用のため社用車を持ち出して事故を起こした場合

  上記1)の盗難されたケースであっても、会社側は運行供用者としての責任は免れないわけですから、この2)のケースでも当然ながら会社側の責任は掛かってくると考えられます。

 こういったケースを防止するためにも、車両管理規定で社用車の徹底した管理を規定化し、無断使用をされない体制を作ることが重要でしょう。

B.マイカーでの事故

 次にマイカー使用時の事故ですが、会社側の運行供用者責任が掛かってくる可能性としては次の2点に絞られるでしょう。1)マイカーの業務使用時の事故、2)マイカーでの通勤時の事故

以下にそれぞれのケースについての解説を加えていきます。

1)マイカーの業務使用時の人身事故

 会社側がマイカーの通勤時の使用だけではなく業務使用まで認めているケースもありますが、そのようなケースでのマイカーでの業務中の事故はどのように考えるのでしょうか?

 基本的な解釈としては、会社側にその従業員のマイカーの業務使用に運行支配、運行利益の双方が存在すると考えられるので、会社の運行供用者責任は免れないと考えるべきでしょう。

 従業員のマイカー使用に対する会社の運行供用者責任を完璧に回避しようと思えば、通勤、業務共にマイカーの使用を全面的に禁止し、それをきちんと従業員に遵守されるしかないのです。

2)マイカーでの通勤途上中の人身事故

 会社がマイカーでの通勤のみを認めていた場合で事故が起こった場合の“運行供用者責任”はどのように考えればいいのでしょうか?

 この場合は基本的には、会社側は“運行供用者責任”は負わないという考え方が主流でした。しかしながら、最近はマイカー通勤を会社側が積極的に推奨又は容認しているケースでは、会社側の責任を一部認めるような判例も散見されるようになってきています。

 また、“運行供用者責任”だけではなく民法715条の会社側の“使用者責任”についても認められるような判決も出ていますので、注意が必要でしょう。 

 特にマイカーに関しては、任意保険の加入漏れなんかのリスクが伴いますので、会社側が責任をかぶらなければならない可能性が少しでもあるのであれば、しっかりと許可基準を作って管理すべきでしょう。

 どういったケースが会社側に責任がかかってくるリスクがあるかという部分なのですが、前述のように会社がマイカー通勤を積極的に推奨している、あるいは積極的にとは言わないまでも容認しているケースです。

 具体例で言うと、通勤に伴う駐車場を会社側が提供していたとか、通勤手当として、あるいは通勤手当に変えてガソリン代の実費を会社が支給していた場合などがマイカー通勤を推奨、あるいは容認していると受け取られるでしょう。

 上記のことから言えるのは、会社として、マイカー通勤は自宅近辺の交通機関が整備されていないなど、特段の事情のある従業員に限定して認める等の措置を講じるべきでしょう。また、マイカー通勤を許可した従業員に対しても、通勤手当の設定はガソリン代等の実費をベースにして算定するのではなく、公共交通機関を使用した場合の金額を基準にすべきです。 

 

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業務中の自転車事故に関すること

高騰化する自転車事故の損害賠償額

 これまでの記事では、業務中の自動車事故に関しての会社側の責任範囲の法的な考え方を解説してきましたが、この記事では自転車の使用中の業務中、あるいは通勤中の事故に関してご説明していきたいと思います。

 銀行、信用金庫の渉外担当者の方、訪問介護のヘルパーさんなど、自転車を業務で使用するケースや業務使用はなくても、自転車での通勤を認めている企業さんもたくさんあることでしょう。

 基本的に自転車は軽車両といって、いわば車の仲間という扱いを法律上します。よって、考え方としては、会社側にかかるリスクとしては、自動車事故と何ら変わらないことになってしまいます。

 つまり、会社側は民法の“使用者責任”及び自賠法の“運行供用者責任”を同時にかぶるリスクがあるのです。

 昨今自転車事故における損害賠償額は加害者側に厳格化される傾向があります。今年(2013年)7月に神戸地裁で出された、自転車対歩行者の衝突事故で、自転車を運転していた事故当時小学生だった少年の母親に9500万円の賠償を命じた判決は記憶に新しいところでしょう。

 これは極端に厳しい判決とは言えず、自転車対歩行者の衝突事故では、被害者側に重度の障害が残ってしまったようなケースでは、賠償額が5000万円以上というケースが結構存在します。

 これは、2010年に自転車事故の新基準を主要都市地裁の交通事故専門の裁判官が提示し、その新基準の中で、“歩道上の事故は原則、歩行者に過失はなく、自転車運転者に責任を負わせるべきである”ことが謳われています。

 よってこの新基準の提示以降の自転車事故には加害者にとっては厳しい判決が出ており、その傾向は今後も続くものと考えて間違いないでしょう。

 自転車の業務使用が常態化しているような企業や、自転車の通勤使用を認めている(あるいは黙認している)企業は再度、そのリスクを認識した上で、従業員に対する教育などの方策を講じるべきでしょう。

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車両管理規程の整備

業務中の自動車事故の際のリスクを回避するための車両管理規程の整備の方法

 これまで見てきたとおり、業務上の自動車事故で従業員が加害者になってしまった場合は、会社側は“運行供用者責任”と“使用者責任”がかかってくるリスクがあります。

 そのリスクを可能な限り低く抑えるための、車両管理規程の整備の手順をお話していきたいと思います。

 リスク回避の基本的なポイントとしては、2つあります。

 ①運行供用者性があると判定される可能性がある部分に関しては、できるだけ業務上の車両使用の範囲を狭める。

 ②業務の性質上どうしても、車両の使用を避けられない部分に関しては、保険でカバーできるようにする。

 上記2つのポイントをきちんと押さえた規程を整備するために、まずは現状の車両の使用状況をチェックしてみましょう。

  どういったケースで車の使用の場面が出てくるのか?例えば営業社員が営業車を使用するケースが真っ先に頭に浮かぶと思いますが、こういったケースでマイカーの使用を認めているかどうかであるとか、勝手に従業員がマイカーを業務使用しているのを会社側が黙認していないかであるとか、営業社員だけではなく、間接部門の従業員にも社用車を使用することがあるのか‥等々

 どのようななケースで社用車を使用、あるいはマイカーを業務使用しているケースがあるのかを実績として抽出していってみましょう。

 また、社用車や従業員のマイカーに限定せず、関連会社や協力会社の持ち込み車両やリースしている車などの使用履歴などもチェックします。

 そういった履歴を抽出していく中で、業務上止む無く、社用車を使用しなければならないとか、マイカーを業務使用しなければ業務が立ち行かなくなってくるとか、業務遂行に必要不可欠な車両使用のケースをピックアップしていきます。

 業務に必ずしも必要がないようなマイカー使用などは、全面的に禁止にし、全て社用車使用に切り替えるであるとか、予算の関係で社用車を増やせないようなケースであり、なおかつ現状保有する社用車だけでは、業務が立ち行かないようなケースにのみ、マイカー使用を一定の許可基準の下、許可する等会社の状況に合わせた対応が可能になるはずです。

 マイカーの業務使用の許可基準としては、業務使用の範囲の設定であるとか、加入保険がリスク細分型保険で、業務上の事故がカバーされるのかどうかであるとかそういった部分を確認し、許可不許可を判断していくことになるでしょう。

 使用状況のチェックが終わり、会社の業務上の車両使用の方向性が見えてくると、次は規程に落とし込む作業をしていきます。

 車両管理規程に落とし込む際に、規定しなければならないポイントが3つあります。

 1)車両運行管理のルールについて

 どのようなケースで社用車の使用、あるいはマイカーの業務使用を認めるかということと、その時の手続について定める必要があります。この部分がうやむやになって、車両を業務使用していたとすれば、業務中に事故が起こった場合に会社として、運行供用者責任は避けられないものになってしまいますので、この運行管理の規程は非常に重要といえるでしょう。

 2)安全運転を規律するルールについて

 社用車の使用時、あるいはマイカーの業務使用に際し、会社側が日常から安全運転の指導教育をしていたというように証明できる規程を作成しておけば、いざ、事故が起こり、会社の社会的責任を責められたとしても、この規定を根拠にして抗弁できる可能性はあります。こういった決め事も漏れなく記載しておくべきでしょう。

 3)事故後の対応マニュアル

 これも会社側が個々の従業員に意識付けをさせるという意味で、何かあったときの抗弁のために規定しておいた方がよいでしょう。また、前述した通り、盗難に遭ったときにすぐに盗難届を出すことを義務付けるような規定を盛り込むことも、会社側の運行供用者責任を回避する上で重要視されることは言うまでもありません。

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マイカー通勤規程の整備方法

会社側にリスクがかからないような“マイカー通勤規程”の設計方法

前述したとおり、通勤途上でのマイカーの事故に関しては、運転者である従業員の自己責任と判断されるケースが多く、会社側は基本的には責任は問われません。しかしながら、会社側が積極的にマイカー通勤を推奨しているようなケースでは例外的に会社側の民事上の責任を認めているような判例もありますので、そのようなリスクを回避するためにどのように“マイカー通勤規程”を設計していけばよいかということを解説していきます。

 1)マイカー通勤自体を許可制にして、許可の範囲を設定する

 前述した通り、会社側が駐車場の提供等、積極的にマイカー通勤を推奨している(あるいは、第3者が見てそのように受け取れる)ようなケースでは、通勤中の事故は会社側に責任がかかってくるケースも可能性として残ります。

 よって、マイカー通勤に関しては、希望者全員というわけではなく、一定の要件を満たす従業員に対して許可制を採るようにお勧め致します。

 通常は、郊外等の公共機関交通の便が悪い地域に住んでいる従業員に限定するべきであると考えますが、会社によっては、地方に工場などの生産拠点や物流センターなど交通の便の悪いところに事業所があるようなケースも存在すると思われますので、その辺りの会社事情を考慮し従業員が納得のいく形の許可基準を設けましょう。

 2)許可申請の手続についての記載

 許可の際の手続に関する定めも規定しておきたい項目になります。特にどのような書類の提出を求めるのかという部分の規定は必須でしょう。提出書類には少なくとも、本人の運転免許書、通勤に使うマイカーの車検証、任意保険の保険証それぞれのコピーの提出を求めるべきです。

 それに加え、安全運転等を確約させる誓約書、マイカー通勤をしなければならない事情や通勤コースを記載したものを申請書の記載事項の欄に加えておけばさらに良いでしょう。

 また、許可期間も任意保険等の保険期間に合わせ1年間の有期とし、許可更新のために同様の手続を年1回行うようにしておくべきで、内容に変更があった場合は許可期間の途中であっても、再度手続をしなければならない旨を定め、制度化しましょう。

 3)許可要件としての任意保険の基準を設定する

 通勤途上の事故の際の被害者に対する損害賠償は、基本的には運転者たる従業員本人が賠償することになりますので、この辺りはしっかりと任意保険でカバーできているかどうかを確認する必要があります。前述したことの繰り返しになりますが、昨今のリスク細分型保険に加入していたケースで、通勤途上の事故では保険金の支払いが認められないようなケースも想定できますから、そういったことも踏まえてチェックする必要があります。

 万が一のケースで、対人賠償、対物賠償、搭乗者障害等、会社が定める賠償額の水準をクリアしていることが許可の一つの要件としておくべきでしょう。

 4)欠格事由や許可の取消し要件について

 そもそも、過去において重大な事故や交通法規違反で免許停止、取消し処分を受けたことのあるものに許可を与えるのは、会社として非常にリスクを負うことになるでしょう。また、てんかん等の運転に支障があるような持病を持った従業員に許可を与えることもリスクを伴うことです。そういったことで、許可の欠格事由を定めておくことは不可欠ですし、一旦許可した場合であっても、欠格事由に該当した場合は許可を取り消すことができるような規定を入れておくべきでしょう。

 5)事故発生時の対処、対応に関して

 会社として常に交通法規を遵守した上でマイカー通勤を認めることは当然なのですが、それでも不可抗力等で事故が起こってしまうことはありえます。そういった場合にどのように対応すべきなのかの規定も設けておいたほうがいいでしょう。これは規定化するだけではなく、規定を活用し常日頃からに安全運転教育をしておくと、何かあったときの備えとして非常に効果的でしょう。もちろん、教育の際に記録等を残しておくと何かあったときの会社側の抗弁となります。

 業務上使用の際の、車両管理規程のところでも述べましたが、極力、会社にリスクがかからないように、リスクがかかってきそうな範囲を狭める(許可制にして、公共交通機関を使える従業員には原則許可しない)。範囲を狭められない部分(交通の便の悪いところに住居を構えている従業員)に関しては保険でカバーする。考え方は業務使用の車両管理規程と同様ですね。

 当事務所では、マイカー通勤規程や車両管理規程を含んだ、諸規程、内規の作成にもお力添えをさせていただきます。

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交通事故の賠償額の考え方

従業員の自動車事故の際の具体的な損害賠償の想定額はいくらくらいなのか?

  −被害者に重度後遺症が残った場合は2億円を超えることも‥ー

 前述の記事までは、従業員が加害者となった際の、自動車事故(マイカー通勤時も含む)の会社側にかかるリスクの予防や対策のお話をしてきましたが、この記事では、いざ具体的に自動車事故の賠償損害金額の考え方に関して、レクチャーしていきたいと思います。事故には物損事故と人身事故とがありますが、それぞれについて見ていきます。

 物損事故のケース(車対車のケース)

  物損事故の場合に賠償の対象となるものが主に3項目あります。

 ①修理代

  適正な修理が行われた場合の金額で算定されます。ただし、修理代が現時点での修理対象車種の時価の額を上回った場合、その現在の時価の額が上限となります。時価の算定は中古車市場の相場価格が参考にされることが多いです。

 ②代車料金

  修理期間や買い替えが必要ならば、その買い替えの期間までの額で算定することが一般的です。ただし、事故車と同グレードの車が認められるかと言えばその部分は否定されるケースが多いでしょう。

 ③評価損

  評価損とは、例えば、修理が完了したとしても、車の外観や機能が事故前よりも劣化した状態が残り、中古車市場に出されたとしても、価値が下落してしまう場合でその事故前と事故後の市場価値の差のことを言います。

 こういった評価損なども裁判では賠償すべきものと認められるケースもあるようですが、おおむね修理代の10〜30%くらいの間までとなっているようです。

 人身事故のケース

 人身事故では、怪我の深刻さの度合いや、死亡事故かどうか、被害者の後遺症の重さ等を勘案し、賠償の考え方はケースバイケースとなってきますが、損害賠償の対象となるものは以下の項目のものになってくるでしょう。

 ①治療代

   怪我の回復に必要な実費相当額ということになってきます。交通事故でも健康保険等の保険診療も受けることができるので、保険適用後の実費ということになるでしょう。柔道整復師などのマッサージや鍼灸治療も医師の指示があれば認められる可能性もあります。ただし、全ての治療期間に渡って治療代が請求できるのかというとそうではなく、症状固定、つまり、現代の医学ではこれ以上の回復は望めないという段階までで、それ以降の医療に対しては賠償額には加算されないという考え方が一般的です。また、治療期間中の付添看護費に関しても、事故での怪我の程度や被害者の年齢等を考慮し、認められるケースもあるようです。

 ②通院費

  通院に伴う費用は、基本的に公共交通機関を使用した場合の実費となります。但し、怪我の程度や年齢を考慮し、医師が認めた場合はタクシー代や自家用車でのガソリン代で算定されるケースもあります。

 ③入院の際の雑費

  治療期間中で入院の必要な場合の入院費等の治療に伴うもの以外の雑費です。基準では入院1日で1500円くらいが相場となります。

 ④葬祭費

  死亡事故の場合ですが、相場としては150万円くらいとなります。

 ⑤介護費

  症状固定後、被害者に介護や付添がいるぼどの重度の障害が残ったケースですが、医師の判断や障害の重度により、被害者の平均余命まで認められるケースも考えられます。

 ⑥休業分の補償

  被害者が怪我により労務不能となった場合の補償分です。前年度の収入実績がベースとなり、確定申告や源泉徴収票での金額を元に計算されることが一般的です。

 ⑦逸失利益

  症状固定後、何らかの後遺障害が残ったケースでは、一旦治療費補償に関してはそこで終了となり、それ以降に関しては逸失利益で算定することとなります。これは、障害がなかったとして、労働能力が低下しなかった健常な状態と事故後の後遺障害のために労働能力が低下した状態とを比較し、どれくらい将来に渡り金額的に損出があるかを算定するものです。

 また死亡事故の場合も逸失利益の算定の対象になりますが、この場合は既に死亡していて、生活費という概念が消えますので、生活費の部分は対象とされないこととなります。

 ⑧慰謝料

慰謝料には、ⅰ.死亡事故の際の死亡に対しての慰謝料ⅱ.入院、通院の対しての慰謝料ⅲ.症状固定後後遺症が残った場合に発生する慰謝料の3種類になります。

 死亡事故に関してはⅰ.死亡に対する慰謝料のみになり、怪我をさせてしまった場合はⅱ.及び場合によってはⅲの賠償責任がかかってくるわけです。

 ⅱの入院通院に対する慰謝料は入院及び通院期間や通院頻度が額の算定の根拠となり、ⅲの後遺症に対する慰謝料は障害の重度や被害者の年齢や年収、社会的な立場等が算定の対象となりますが、昨今はなるべく定額化するような措置が採られているようです。

 ⑨弁護士費用

  仮に訴訟などになった場合の、弁護士費用の一般的な相場としては、確定された賠償額の約10%くらいと言われています。

 こういった①から⑨の要件の合算額から、被害者側に落ち度がある場合、その度合い、つまり被害者の過失部分を相殺減額し、最終的な損害賠償額がいくらになるのかということを算出していきます。

 実際に賠償額がいくらになるのか?という部分が最も気になるところでしょう。

 もちろん、損害賠償額は被害者の年齢や、社会的地位、年収等によりケースバイケースです。ただし、昨今の自動車事故の判例などから察するに、被害者が死亡したケースでは、7000万円〜1億円くらい。被害者に重度の障害が後遺症として残ったケースでは、時として2億円を越すケースも散見されます。

 こういったケースで、もしも保険が利かなかったとしたら、会社へのダメージは計り知れません。

 経営者は上記のような状況を勘案し、業務用車の車両保険の賠償額の設定や、マイカー通勤の許可基準などを設定していかなければならないと言えるでしょう。

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この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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大阪の社労士、行政書士の児島です。私は10期勤めた労基署の相談員時代に、通算件数15,000件以上もの労働相談を受けてきました。また、年間に300件以上の民間企業・法人の就業規則のチェックを行っており、これらの経験で培った、労働トラブルの予防に対する引き出しの数の圧倒的な多さが当事務所の武器です。

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