労働施策総合推進法(パワハラ防止法)ー主な改正内容

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)改正ー

  ーその主な改正内容とは

 

 こちらでは令和2年6月に施行されました労働施策総合推進法(いわゆる“パワハラ防止法”)の改正内容の概略について記載しております。

 御社の労務管理の一助となりましたら幸いです。

 

パワハラ防止法改正・施行の背景)

 厚生労働省の令和元年度の統計によると、各都道府県に設置される総合労働相談コーナーに寄せられる相談のうち、“いじめ、嫌がらせ”の相談件数が8年連続でトップとなっておる状況であり、加えて労働局が行う個別紛争救済措置としての『助言・指導』や『あっせん』の件数もそれぞれ6年連続トップ、7年連続トップと『いじめ・嫌がらせ』の相談や救済の申し出が絶えない状況が続いています。

 さらに近年では、職場でのハラスメントが原因での自殺が労災認定させることも増加傾向にあり、こうした『いじめ、嫌がらせ、ハラスメント対策』の法整備が求められる社会環境下にありました。ハラスメント対策でもすでに“セクハラ”“マタハラ”対策については男女雇用機会均等法の中で事業主に対して防止措置を講じるように義務化されていますが、さらに“パワハラ防止対策”を事業主に課したのが今回の法改正となります。

 

 改正内容の概略)

 1.パワーハラスメント防止措置が事業主に対して義務化されます。

 2.事業主に相談等をした労働者を不利益に取り扱うことが禁止されます

  *大企業:令和2年6月より義務化

  *中小企業:令和4年3月31日までは努力義務、令和4年4月1日より完全義務化

 

そもそも職場における『パワーハラスメント』とはどのような行為を指すのか?

 一概に『パワーハラスメント』と呼ばれる行為はこれまでの定義は非常にあいまいなものでした。よって、職務上の適正な指導の範囲内か否かということが、よくこの手の裁判で争われたのですが、今回の法改正により、以下のようなガイドラインが示されました。

 パワーハラスメントの定義

  ①(職場における行為で)優越的な関係を背景とした行為であり

  ②業務上必要かつ相当の範囲を超えたものであり

  ③労働者の就業環境が害されるもの

 

 上記①〜③のすべての要件が満たされる場合に『パワーハラスメントに該当する』と判断されます。よって、通常の業務の必要かつ適切な範囲内で行われる、業務指示、指導、注意等については『パワーハラスメントには該当しない』とされます。

 

 このあたりの線引きは現状では各々の部や課の所属長、管理職社員には個々の感覚で非常に温度差があると思いますが、その温度差のままで放置しておくことは非常に危険と言わざるを得ません。特に法改正以降については管理職社員には、『どこまでが業務上指導で、どの一線を超えるとパワハラになるのか?』ということを共通認識として持ってもらう必要があるでしょう。

 就業規則で全従業員にハラスメント防止の意識を植え付けることはもちろんですが、それに加えて管理職研修、ハラスメント研修を通じて、管理職社員たちにしっかりと認識を浸透させることをお勧め致します。

 

 当事務所では、今回の労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正に伴う就業規則の修正作業、管理職へのハラスメント研修の実施等でお力添えをさせていただきます。

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パワハラに当たるか否かの判断基準

パワハラに該当するか否かのガイドラインの設定

 パワハラ…?必要な業務指導…? その線引きをどう考えるのか?

 

 今回の労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の改正では、ガイドラインとして、具体的な行為・言動によりパワハラと考えられるのか、もしくは業務上指導や就業配慮の一環としての許容範囲とされるのか、一定の判断基準が例示されました。

**ただし、以下はあくまで『例示』に過ぎないので、事案により個別に判断しなければならないことに留意する必要があります。

パワハラの形態 該当すると考えられる行為 業務上指導の範疇、または就業への配慮として許容される行為
身体への直接的な暴力 ・殴る、蹴る・灰皿等物を投げつける 身体的暴力はどんな場合でもNGです。
精神的な追い込み、いびり ・人格を否定するような言動
・業務上の失敗、ミスについて必要以上に長い時間の叱責を繰り返し行う
・同僚や他の従業員が見ている前で大声で怒鳴る等の叱責を繰り返し行う
・その人の能力を否定したり、罵倒したりする内容の電子メールを本人や複数の同僚に送り付ける
 ・社会人としての自覚に欠けるような行動(遅刻等)を繰り返す従業員に対しての一定範囲内の強い注意・業務内容や業務の性質に沿い重大な問題行動をした従業員に対しての一定範囲内の強い注意
意図的な仲間外れ ・意に沿わない従業員に対して仕事を与えず、長期に渡り別室に隔離措置等を行う・特定の従業員一人に対し、集団で無視する。 ・新規採用の従業員育成のために短期集中で別室で教育・研修を受講させる
 過大なノルマや成果達成の追及  ・長期にわたる苦痛を伴う過酷な環境下の中で本来業務とは直接関係のない作業を命じる
・入社間もない経験値の低い従業員に対し、必要な教育を行わないままに、到達不可能な目標やノルマを課し、未達成であることを厳しく叱責する。
・業務に関係のないプライベートの雑用を強制的に行わせる。
 ・従業員育成のために現行レベルよりも少し難易度の高いレベルの仕事を任せる・繁忙時等の業務上の必要性に伴い、業務担当者に通常時と比較して一定以上業務量を任せる。
悪意が伴う窓際、閑職への追いやり  ・管理職の立場の従業員に対し、退職させることを目的として誰でもできる雑用のような仕事しか与えない。・特定の従業員に対し嫌がらせを目的として仕事を与えない。
 
 ・その従業員の処理能力や業務量に応じて一定の量の仕事を軽減する
プライベートへの介入や侵害 ・従業員を職場外でも監視したり、私物として保有するために撮影したりする・従業員の性志向、病歴、不妊治療等のデリケートな個人情報を本人の了解を得ないまま同僚等に暴露する。 ・就業への配慮を目的として家族の状況についての聞き取りを行う・従業員の了解を得て、左記のデリケートな個人情報を必要な範囲内で人事労務部門に伝え、就業上の配慮を促す

企業側としての、パワハラの防止策としては、こういった一定基準をきちんと管理職社員や若手社員の指導にあたる中堅社員に共有するとともに、改めて部下、後輩に対しての接し方を考える機会を与える必要があると思います。現在の管理職についている方は自分がかつて『叩き上げで鍛えられてきた!』と自負される世代の方も多数いらっしゃると思いますので…。

 なかなか、部下との関係力をアップする管理職研修などを受ける機会がなく管理者になってしまったしまったような方々は自分が鍛えられた若手時代のやり方をそのまま現在の部下に課してしまう傾向があるようです。

 そういった管理職社員、中堅社員を対象に部下との関係力、コミュニケーション力の磨く研修を当事務所では提供しております。

  『部下ノートを活用した関係力アップ研修』のご紹介ページ

 当事務所ではこういった部下との接し方を学ぶ管理職研修に加え、ハラスメント研修、就業規則の改訂による意識の共有等で社内でのパワハラ防止策のご提供でお力添えをさせていただきます。中小企業の施行時期(令和4年4月)も迫ってきています。今のうちに対策を取られておくことをお勧めいたします。

『パワハラ防止措置』ー企業としてどんな対処が求められるのか?

パワハラ防止法措置とは?

 この労働施策推進法(パワハラ防止法)の改正によって、企業や経営者は『パワハラ防止措置を講じなければならない』とされています。

 では、この『パワハラ防止措置を講じる』とは具体的にはどのように対処のことを言うのでしょうか??

 今回の法改正で明示された『事業主が講じるべき職場におけるパワハラ防止措置』についての主な要点を抜粋し記載させていただきます。

 

 1.職場におけるパワハラの内容やそういった行為を行ってはならない旨の方針を明確にし、従業員に周知、啓発を行うこと

 

 2.パワハラの行為者には、厳正に処する旨の方針や処し方を就業規則等に文書に明確に規定し、従業員に周知徹底すること。

 

 3.ハラスメントの相談窓口を予め定めて従業員に周知すること。

 

 4.ハラスメントの相談があった場合は、その内容や状況に応じ適切な処置が取れるように相談担当者の法的、モラル的なスキルを一定水準程度に教育しておくこと。

 

 5.事実関係を迅速かつ正確に確認すること

 

 6.パワハラの事実が確認できた際は、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うと同時に行為者に対する措置も適正に行うこと。

 

 7.(事実確認ができた、できなかったに関わらず)再発防止に向けた措置を講じること。

 

 8.相談者、行為者のプライバシー保護のための必要な措置を講じ、その旨を従業員に周知すること。なお、ここでいうプライバシー保護とは性的指向、性自任、病歴、不妊治療等のデリケートな個人情報の保護も含む。

 

 9.窓口に相談したことや、調査に協力したことを理由として、解雇その他不利益な取り扱いをしないことを、就業規則等に定め、従業員に周知すること。

 

 上記1〜9の事項が、法改正後企業に求められることになります。(中小企業は令和4年4月より)

 

 もう既に法制化されていますところの『セクハラ防止措置』『マタハラ防止措置』とほぼ同様の措置を企業は求められることになります。現状『セクハラ防止』『マタハラ防止』の対策がしっかり講じられているか、相談窓口の担当者の研修等がしっかりできているかも『パワハラ防止措置』が義務化されるこのタイミングにしっかりと確認しておきたいところではないでしょうか?

 

 当事務所では、今回の労働施策総合推進法(パワハラ防止法)改正に際し、就業規則の見直しや、管理職に対するモラル研修や相談窓口担当者に対するハラスメント研修等でお力添えをさせていただいております。

 今回の改正では防止策を就業規則等で労働者周知を求められる対応が多くあり、また、相談窓口担当者のスキルアップを求められるシチュエーションも想定されます。現状の就業規則の記載内容に不安のある企業様や、相談窓口のオペレーションをどのようにすればよいか迷っている企業様は一度当事務所にお声がけ下さい。

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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