潜在的な未払い残業代の残存リスクと賃金制度再構築の必要性について

潜在的な未払い残業代の積み上げ、放置すると大変なことに…!

今こそ、リスクに備えた賃金制度の再構築を!!

社長、御社の賃金台帳に「見えない負債」が静かに積み上がっていると言われたら、どう思われますか?

 

「うちは大丈夫だろう」「今まで何も言われたことがないし…」──そう思われるのが普通だと思います。しかしながら、これからお伝えする数字を見ていただければ、その「大丈夫」が非常に危うい前提の上に成り立っていることがご理解いただけるのではないかと思います。

 

厚生労働省が2025年(令和7年)8月に公表した最新データ(令和6年の監督指導結果)によると、全国の労働基準監督署が取り扱った賃金不払事案は22,354件、対象労働者数は185,197人、金額にして172億1,113万円に上っております。これは前年比で約70億円の増加であり、件数・対象労働者数・金額のすべてが前年を上回っているということになります。

 

そして注目すべきは、これらの事案のうち約96%が監督署の指導により是正・支払いに至っているという点です。つまり、調査が入ればほぼ確実に是正を求められ、多額のキャッシュアウト(現金損失)が発生してしまうということがこのデータから読み取れると思います。労務管理や賃金制度の取り扱いを誤ることによって、経営に関わるほどの多額のキャッシュアウトのリスクがあるということです。

 

度重なる法改正で残業手当を巡る扱いは経営者に対しさらに逆風に…

こういった労働局、労基署の厳格な取り締まりの動きに加え、残業手当がさらに経営に大きな負担となってくる法改正がここ最近連続して施行されております。しかも、そのすべてが経営者にとって厳しい方向への変化です。

 

・中小企業に対する割増賃金率の見直し

 

2008年の労働基準法改正(施行は2010年)で60時間を超える時間外労働については、従来の25%割増から50%割増に引き上げられました。この措置は一定規模以下の中小企業には適用が猶予されていたのですが、2023年(令和5年)4月より中小企業にも既に適用されております。 この変更に対応した賃金制度の見直しがなされていない企業では、知らず知らずのうちに未払い残業代が積み上がっている可能性があります。

 

・賃金請求権の時効の延長

 

2020年(令和2年)4月の労働基準法の一部改正により、賃金請求権の時効が従来の2年間から3年間へ延長されました。条文上は『5年間(ただし当分の間3年間)』となっていますので、将来的には民法同様5年間に延長されることが予想できます。そして現に、日本弁護士連合会や日本労働弁護団が2025年に相次いで「経過措置(当面3年)の速やかな撤廃」を求める声明を発出しております。改正法の附則には「施行後5年経過時点で見直し検討」と規定されており、まさに今がその見直し議論の真っ只中ということになります。5年時効への移行は、もはや「いつか」ではなく「いつ」の問題になってきているのです。

 

・同一労働同一賃金への対応

 

上記のような残業手当に直接インパクトのある法改正ではないのですが、非正規雇用者の均等改善を目的とし2020年(令和2年)4月に施行された『同一労働同一賃金(パートタイム労働法等)』の適用範囲が2021年(令和3年)4月より中小企業にも既に適用されております。こういった部分を加味した賃金の再設計が中小、中堅企業様の必須課題となっています。

 

・約40年ぶりの労働基準法大改正が控えている

 

さらに追い打ちをかけるように、現在、14日超連続勤務の禁止、勤務間インターバルの義務化、法定労働時間週44時間の特例措置の廃止、副業・兼業者の割増賃金算定における労働時間通算ルールの見直し等、約40年ぶりとなる労働基準法の大幅改正が検討されております。2026年通常国会への法案提出は見送りとなりましたが、審議は継続中であり、2027年以降の施行が見込まれます。特に週44時間特例措置の廃止は、これまで週44時間まで所定労働が認められていた小規模事業場にとって、残業代計算に直接影響する非常に大きな変更ですので、対応を後回しにする猶予はないと考えます。

 

監督指導のリスクに加え、訴訟でのリスクも…

昨今、退職した元従業員からの未払い残業代の請求は、もはや珍しい話でなくなってきております。インターネット上には未払い残業代の請求方法に関する情報が溢れており、弁護士事務所による「着手金無料」の残業代請求サービスの広告も頻繁に目にするようになりました。

また、こういった請求行為は労働者一人のみに留まるだけではなく、弁護士、司法書士等の専門家のサポートのもと、集団訴訟等に至るケースも目立ってきております。

今後もこういった潮流は、一過性で終わることなく、しばらくは続くものと思われ、経営者としては気が抜けない状況が続きそうです。

 

そういった背景の中で、ここ昨今の未払い残業代請求に関する訴訟の裁判所の判断は、経営者サイドから見て非常にシビアな状況へと急激に変化してきています。

 

シビアに変化した最近の判例の事例)

判例をいくつか挙げさせていただきます。

まず、タクシー会社において従来、慣行的に行われてきた、歩合給を残業手当(の一部)に組み込むようなドライバーに対する賃金設計手法には違法性がある(労基法37条違反)ということを最高裁が明示し、審理を高裁に差し戻すという判決がありました。(国際自動車事件、令和2年3月30日、最高裁)

従来の慣行により、長年是認されてきた賃金設計のやり方ですら否定されてきているのです。

さらに、多くの中小企業で採用されている固定残業代(みなし残業代)制度に対する司法の目も年々厳しくなっております。近年の判例では、固定残業代の「対価性要件」(その手当が時間外労働の対価として支払われているか)と「判別要件」(通常の賃金部分と割増賃金部分が明確に区分されているか)を満たさない場合、制度自体が無効とされるリスクが確認されています。無効と判断されるとどうなるかと言うと、固定残業代として支払っていた金額がすべて基本給に算入された上で割増賃金が再計算されることになりますので、想定外の多額の支払い義務が一気に発生してしまうことになります。

 

つまり、

「うちは固定残業代を払っているから大丈夫」という認識は、制度設計が法的要件を満たしていなければ、何の防波堤にもならない

                    ということです。

 

未払い残業代の隠れ債務の顕在化リスク)

当事務所では、こういった賃金設計のコンサルの他、企業の労務管理が法的にしっかりできているかを調査する労務監査サービスや、M&Aの際の売り手企業の労務実態の瑕疵を調査する労務デューデリジェンス等、企業の潜在的な未払い残業代(=隠れ債務)を調査する機会がままにございます。そういった現場では、従業員一人当たりの月間の未払い残業の隠れ債務が5万円〜7万円程度に膨らむことも頻繁に遭遇します。もし従業員一人当たりの未払い残業の隠れ債務が7万円/月であって、100名規模の企業であれば…

 

7万円×100人×12か月=8,400万円

 

これが現行の3年時効で発覚した場合…

 

8,400万円×3年分=2億5,200万円

 

将来、5年時効が適用されることになった場合…

 

8,400万円×5年分=4億2,000万円

 

これだけでも相当なインパクトですが、さらに裁判所が付加金(未払い額と同額の制裁金)の支払いを命じた場合は、実質的にこの2倍の金額を負担することになります。

 

もちろん、これは100名規模の最大級の想定です。しかし、従業員30名の企業であっても3年分で7,560万円、5年分で1億2,600万円という数字になりますので、中小企業の経営にとって決して軽視できる金額ではないと思います。

 

こういった経営者に逆風な局面が続くゆえに、企業様、法人様におかれましては、法令に適合した賃金制度への再構築という観点から、割増賃金、残業手当という課題の切り口での賃金制度改訂をご検討していただく必要性があるのではないでしょうか?

 

いざ、司法の場に引きずり出された場合の金銭的な損失のインパクトに加え、裁判で企業名が報道されることによる企業イメージの毀損リスクも無視できません。よってそういったことの予防策も御社は考えておく必要があるのではないでしょうか?

 

上記に記載の通り、弁護士のサポートを受けて集団訴訟など起こされた場合は、複数人の原告分の金銭的なインパクトに加え、精神的なプレッシャーや時間的な損失等多大な労力を負うことにもなってしまいます。

 

「まだ請求されていないから大丈夫」──社長、その考えが実は一番危ないのです。

未払い残業代の問題は、「請求されてから考えればいい」では手遅れになります。請求された時点で、過去3年分(将来的には5年分)の債務が一気に顕在化するからです。

 

しかも、意図的に残業代を支払っていないわけではなくても、賃金制度の設計段階で法的要件を満たしていなかったり、運用面での不備があったりすることで、意図せず未払い状態が生じているケースが大半なのです。

 

そして、労基署の調査であれ、退職従業員からの請求であれ、「知らなかった」「悪意はなかった」ということは、支払い義務を免除する理由にはなりません。

 

当事務所では、退職従業員からの残業代請求のリスクを改善する、賃金制度再構築のノウハウがございます。

このサービスの最大の特長を申し上げます。労働基準監督署の相談員として10年間の実務経験を持つ社会保険労務士が、直接コンサルティングを担当するという点です。

 

「労基署の相談員を10年やっていた社労士」と聞いて、ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは御社にとって非常に大きな意味があります。

 

労基署の相談員というのは、企業からの相談対応、労働者からの申告対応の窓口、そして監督指導の現場を日常的に接することができるポジションです。10年間その現場にいたということは、「監督署がどういう視点で企業の賃金制度を見ているのか」「どういう賃金設計が是正指導の対象となりやすいのか」「労働者側がどういう切り口で請求してくるのか」──こういったことを、書籍や研修で学んだ机上の知識ではなく、実務感覚として体に染み込んでいるということです。

 

いわば、「取り締まる側の視点」を知り尽くした専門家が、御社の賃金制度を「守る側の視点」で再構築するということです。これが、当事務所の賃金制度再構築サービスが他のサービスと決定的に異なるところだと自負しております。

 
 

 当事務所では、退職従業員からの残業代請求のリスクを改善する、賃金制度再構築のノウハウがございます。

 **当事務所の賃金制度再構築のプロセス(ステップ1から4までの4段階)をご説明しております。よろしければこのままスクロールダウンして読み進めて下さればと思います。

 コンサルティング料金につきましては、御社の業種、従業員数、職種区分、階層、手当の種類等をヒアリングした上でお見積りさせて頂きます。

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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大阪の社労士、行政書士の児島です。私は10期勤めた労基署の相談員時代に、通算件数15,000件以上もの労働相談を受けてきました。また、年間に300件以上の民間企業・法人の就業規則のチェックを行っており、これらの経験で培った、労働トラブルの予防に対する引き出しの数の圧倒的な多さが当事務所の武器です。

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