2026年10月から義務化。薬剤師を「守る」就業規則を作っていますか?

薬剤師の離職理由の上位に「人間関係」と「職場のストレス」が必ず入ってきます。そして最近、調剤薬局の現場で急速に深刻化しているのが、患者さんからのカスタマーハラスメント(カスハラ)です。

「待ち時間が長い」「なぜジェネリックなんだ」「前と薬が違うじゃないか」——処方内容の変更や医薬品供給不足への説明義務が薬剤師に集中する中、理不尽な怒声・暴言・威圧的態度にさらされる薬剤師は増え続けています。東京都薬剤師会が2025年1月に公表した調査では、薬局スタッフの多くがカスハラ被害を経験していると報告されています。

「それは昔からあることだし、仕方ない」と思われるかもしれません。しかし、法律が変わりました。

・改正労働施策総合推進法(2025年6月成立、2026年10月施行)

2025年6月4日に成立した改正労働施策総合推進法により、2026年10月からすべての事業主にカスタマーハラスメント対策を講じることが義務化されます。

 

パワハラ防止措置義務(2022年4月から中小企業にも適用済み)と同じ構造で、事業主の方針の明確化と周知、相談窓口の設置、事後対応(事実確認・被害者保護・再発防止)、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止が求められます。

 

調剤薬局に当てはめると、具体的にはこういうことです。

 

・就業規則にカスハラの定義と対応方針を明記する。「どこからがカスハラか」を社内で共有しないと、現場の薬剤師は「我慢するしかない」と思い続けてしまいます。

 

・カスハラ発生時の対応フロー(初期対応→管理者報告→記録→必要に応じた対処)を策定し、全スタッフに研修する。

 

・相談窓口の設置。 相談したことによる不利益取扱いの禁止を就業規則に明記する。

 

・「守り」が「攻め」になる

業界全体でもこの問題への対応は動き始めています。2026年1月には、薬局と患者のトラブル仲介を専門とする一般社団法人が設立され、「薬局メディエーター」の育成が始まっています。こうした第三者による仲介の仕組みが生まれること自体、薬局現場のカスハラ問題がそれだけ深刻化している証拠といえます。

 

中小薬局でここまでの投資は難しいかもしれませんが、「就業規則にカスハラ対策の規定がある」「対応フローが文書化されている」「相談窓口がある」という3点が揃っているだけで、薬剤師から見た安心感はまったく違います。

 

記事②でも触れましたが、2026年卒の薬学生は「教育制度」や「働きやすさ」を就職先選びで重視しています。「スタッフを守る仕組みがある薬局」は、それだけで採用市場における強いメッセージになります。

 

いま在籍してくれている薬剤師さんたちを守ることが定着に繋がり、定着はサービスの質に繋がり、質は患者さんからの信頼と売上に繋がります。守りを固めることが、結果的にいちばん確実な攻めの経営になるのです。

 

施行まであと半年を切りました。就業規則の改定、届出、研修の実施まで含めると、最低でも2〜3か月は準備に必要です。

 

当事務所では、調剤薬局の現場実態を踏まえたカスハラ対策規定の作成、既存のハラスメント防止規定との統合、対応フローの策定、管理者向け研修の企画まで対応いたします。

 

▶ 就業規則作成・改定サービス(カスハラ対策含む)はこちら https://www.kojima-jimusho.com/category/1263796.html  

 

▶ 人事評価制度・コンピテンシー導入支援はこちら  https://jinji.kojima-jimusho.com/843063167

 

※本記事は2026年4月時点の法令に基づいています。出典:改正労働施策総合推進法(2025年6月4日成立、2026年10月施行)、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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