報酬改定を労務とどうリンクさせる??

2026年度診療報酬改定と「ヒト」の話

報酬が変わったのに就業規則がそのままでは、加算を取っても利益は残りません

2026年度(令和8年度)の診療報酬改定は、かなり大きな変化でした。薬局経営者の方であれば、点数の変動や新しい加算の要件についてはすでに確認されていると思います。

 

しかし、「点数が変わった」「新しい加算が取れるかどうか」という話だけで終わっていないでしょうか。

今回の改定は、結局のところ「どんな薬剤師を、どう配置し、どう評価するか」という人事・労務の話にすべて繋がっています。ここを見落とすと、加算は取れたけれど人件費や労務トラブルで利益が残らない…ということになりかねません。

・かかりつけ薬剤師指導料の廃止と服薬管理指導料への統合

これまで独立した区分として存在していた「かかりつけ薬剤師指導料」(76点)と「かかりつけ薬剤師包括管理料」(291点)が廃止され、服薬管理指導料の中に統合されました。

これは何を意味するかというと、かかりつけ機能は「特別なこと」ではなく「当然備えるべき対人業務能力」として位置づけられたということです。かかりつけ機能を発揮できる薬剤師とそうでない薬剤師との間で、報酬上の差がより明確になります。

 

ということは、薬剤師の能力を可視化して、計画的に育成していく仕組み──つまり人事評価制度やコンピテンシーの定義──がこれまで以上に経営に直結するわけです。

 

・地域支援体制加算が「地域支援・医薬品供給対応体制加算」に再編

旧・後発医薬品調剤体制加算と統合され、加算1を土台に加算2・3・4を積み上げていく構造になりました。在宅対応、24時間連絡体制、医薬品供給の実績など、「薬局としての組織力」が試されます。

 

24時間連絡体制を維持するには、シフトの設計が不可欠です。記事③で触れた週44時間特例の廃止(2027年以降に予定か?)と合わせて考えると、変形労働時間制の導入や応援体制の構築は「いつかやる」話ではなく「すぐにやらないと間に合わない」話になっています。

 

・調剤ベースアップ評価料の新設

40歳未満の勤務薬剤師に対し2年間で+3.2%、事務職員に+5.7%のベースアップを支援するための報酬上の手当てが新設されました。

これは非常にありがたい制度である一方、運用を間違えると社内で不公平感が生じます。40歳未満だけ上がって40歳以上は据え置き…となれば、中堅・ベテランの不満は確実に溜まります。賃金テーブル全体の整合性を取りながら、就業規則の賃金規定に反映させる必要がございます。

報酬改定は外から降ってくる制度ですが、それに対応するための武器は薬局の内部で醸造する必要があります。人事評価制度、コンピテンシー定義、就業規則、賃金テーブル。これらを整えることが、結果的にいちばんコストパフォーマンスの高い「改定対応」になります。

 

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※本記事は2026年4月時点の法令に基づいています。出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」(2026年3月5日)

 

この記事は私が書きました

児島労務・法務事務所 代表 児島登志郎
 社会保険労務士・行政書士
 組織心理士・経営心理士(一般財団法人 日本経営心理士協会 認定)

 元大阪労働局 総合労働相談員
 元労働基準監督署 協定届・就業規則点検指導員

 

 社会保険労務士として開業する傍ら、大阪府下の労働基準監督署にて総合労働相談員、就業規則・協定届点検指導員を計10年間勤める。 その間に受けた労使双方からの相談数は延べ15,000件以上、点検・指導した就業規則、労使協定届の延べ総数は10,000件以上に及ぶ。 圧倒的な数量の相談から培った経験・知識に基づいた労使紛争の予防策の構築や、社員のモチベーションを高める社内制度の構築を得意分野としている。

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